一万回の愛してる
「愛してる……」
彼女が愛の言葉を僕に投げ掛ける。僕の顔は彼女の言葉で微笑みに変わった。
「愛してる愛してる愛してる……」
彼女は僕に愛の言葉を惜しげもなく投げ掛け続ける。愛してるは何回言われても嬉しいものだ。
「愛してる愛してる愛してる……」
彼女の愛してるはまだまだ終わらない。世界一可愛い女性に愛してると何度も言われるなんて僕は幸せすぎる。
「愛してる愛してる愛してる……」
一時間を越えたあたりから彼女の顔に疲れの色が見え始めた。彼女はお願いを嫌な顔をせず何でも聞いてくれる優しい女性で、一度も怒ったところを見たことがない。
「愛してる愛してる愛してる愛してる。はい」
彼女が一万回の愛してるを言い終わったところで僕は口を開く。
「じゃあ僕のことは?」
僕は彼女に10回クイズの回数を増やしてアレンジした一万回クイズの問題を出した。
「大嫌いです」
初対面の僕にナンパで連れてこられたカフェでいきなり一万回も愛してると言わされたのだから誰でも大嫌いになる。
彼女のことは好きだが付き合いたいという気持ちは全然なくて、ただ愛してると沢山言われたかっただけなのだ。
嘘でも大好きと一万回言われたのだから僕が満足しない訳がない。