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優等銃士な劣等魔法士  作者: 木津津木
第一章 水端
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第五話 武特高Ⅰ

――綺麗――

 そんな言葉がふと口に出るような後姿。髪は一切の濁りも無くストンと色が抜け落ちたかのような白髪。だがその色は髪先に行くほど水色に変わる。元から兼ね備えている美しさをより一層美しく見栄えさせるそれはショートラインと呼ばれているドレス(に似ている)。

彼女は俺より少し高く離れたところに立っていた。俺と彼女の周りにはここから出さすまいと木々が覆っていた。

 木々の間から差し込む光がなびく髪とドレスを輝かせる。彼女の周りの全てが彼女の美しさを強める物に過ぎない。

「――――」

あれ、俺は今なんて言った。

意図せず口から出た言葉、それは何か重要な事ではないのか。それともただの褒め言葉なのか。

彼女の顔が動き目で俺を捉える。だが俺には彼女の顔が見えない。分からない。

そこに顔はある。だが見えない。だがその顔は見た事あるような気がする。とても優しそうなーー

彼女は俺を見て微笑んだ、ような気がした。そして彼女は

 ――――走り去ってしまった。


 そこで俺の意識もだんだん薄れていった。


「お兄ちゃん、起きないと・・・・・・撃っちゃうぞ」

 こんな起こし方はこの世で1人だけだ。

「起きてます起きてます」

 ここは自宅付近の公園のベンチで、俺はうっかり寝てしまったらしい。

 現時刻は19:30頃、1時間半近く寝ていた。良い夢だったなあ。

「よっこらせ。香奈から逃げてきたのか」

「違うもん。お姉さんが呼んできてって」

 お、お、お、おおおおおお・・・・・・お姉さん!!なんじゃそりゃ。あの流れからそうなるのか、ありえねえ。

 どんだけ仲良しになってんだよ。

「そろそろ、夕飯時か。お腹も減ったし帰るか」

「お兄ちゃん、憶えてる」

「何を」

「小さい頃この公園で遊んでくれたこと」

「お前よく覚えてるな」

 俺なんか思い出にはあったけど記憶には無かった。

「私が幸せだと思ったことはできるだけ忘れないようにしてるから」

 千夜は性格に難有りだと思っていたが俺の勘違いかも知れないな。

「さあ、帰るぞ」


 二度目の「ただいま」「お姉さん、今帰りました」

 ん、とても良い匂いがする。これは昨夜の残りのホワイトシチューをグラタンにしたんだろう。

 香奈が奥から歩いてきた。

「おかえり、もうご飯できてるから冷めない内に食べよ」

「なあ、ちょっと待ってくれ。・・・・・・(千夜に何言ったら『ああ』なるんだ)」

「ん~、慰めただけ」

 その中身を知りたいんだけどなあ。それとこの家に馴染み過ぎ。

 まあ少しでも早く慣れてくれるとストレスとか感じさせなくて済む、こちらとしても余計なことを考えなくて済む。余計なこととは下ではない、断じて違う。神に誓って違うよ。

 さ、さあ早く食べよう。食べ物にはおいしさの持続力があるらしいからな。

 おいしそうな、いや、おいしい匂いが立ち込める廊下を進む。

 まあ、その後は入浴したりテレビでニュースを見たり3人で世間話をしたりして睡眠をとった。

 もちろん入浴時は1人1人お湯を変えた。

 もちろん香奈は千夜の部屋で寝ている。

 千夜が香奈を俺の部屋で寝かすことを許さなかった。

 

 太陽に照らされ舗装された地面がぬくもり始める頃。

 二人は出掛けて家にはいない。二人が家を出るのを確認して俺は二度寝の体勢に入る。

 俺だって疲れてるんだよ。一昨日は模擬戦、昨日は買い物に付き合わされた。だから二度寝しても誰にも文句は言わせない。


だが、人間空腹には勝てない。

時計の短針が12時をほんの少しすぎた頃俺は目が覚めた。

リビングに向かい冷蔵庫の扉開ける。

肉と野菜を取り出し一口サイズに切ったらフライパンで炒める。塩胡椒で味を整えたら完成。

それを食べた後は拳銃の整備をし、ソファで横になる。

気づいた時にはカーテン越しに差し込む光が橙色になっていた。

 ソファに普通に座り直すと視覚だけではなく聴覚も目覚めてきたーー背後から音が聞こえてくる。

その音が気になり振り返るとリビングに香奈と千夜がいた。二人は夕食を作っていた。

俺が目を覚ます頃には料理は終盤に差し掛かっていて寝ボケが飛んだ頃にはできていた。それを三人で食べ一人ずつ入浴し俺は自分の部屋で二人は千夜の部屋で寝た。こうして昨日と変わらない一日を過ごした。


 今日は月曜日。昨日とは違い二度寝などしていられない。学校に行かないといけないからだ。

 俺たちが住んでいるのは島根県出雲市。ここには変わった中高一貫校がある。

 それが『出雲武力育成特別学園中学校・高等学校(中等部・高等部)』俺が通っている高校だ。出雲武特高(出雲武特中)と言われている。

 この学校には科があり、

 『普通科』、拳銃を使う

 『特別科』、魔銃を使う

 『救護科』、そのままの意味

 『整備科』、武器の調達、整備。

 この4つに分けられる。

 学級のメンバーは学科関係無しで分けられている。やる依頼によっては他の学科の手を借りることもあるので、その前から交流を深めていくことによって依頼の進みが速くなる可能性があるからと言われた。

 午前の4時間は一般教科、午後の2時間は科ごとに分かれ実習棟に移動してそれぞれの授業を行う。

 ちなみに俺と香奈は(残念なことに)同じBクラスである。女性はどうしても苦手だ。

 救護科は一番近づきたくない。女子率が一番高いからだ。ああ、やだやだ。

 そして、普通の学校ではないので生徒も普通ではない。性格なども十人十色だ。

 

 朝食を食べ、身支度をする。

 玄関の扉を開けると同時に地獄とも言えるような1日がまた始まる。

投稿するのが遅くなり申し訳ありません。


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