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優等銃士な劣等魔法士  作者: 木津津木
第一章 水端
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第二話 幼馴染Ⅰ

「――イッテー、倒れて後頭部をぶつけたか」

 ここは、リビングのソファーの上だな。家の中に入れてもらえたんだな。そのまま外に置きっぱなしかと思ったが。

「おうおう、生きてたか生きてたかー。胸のキズは大丈夫」

 良い匂いがすると思ったらキッチンから声が聞こえる。シチューでも作ってるのかな

「血は出てないが」

 気絶したのは魔術による衝撃で心臓付近の血と気管が一瞬詰まったからだろうな。

「お前、俺を殺す気で撃っただろう」

「それはお兄ちゃんの魔法を信用してだよ」

 これは褒められているのかな。うん、きっとそうだ。

「それで、ちょっと言いにくいけど・・・・・・」

「いや、ちょっと待て。先にお前の魔術について教えて欲しい。・・・・・・最後のあれは何だ」

「あ―――、あれは・・・・・・う~~~ん。名付けるなら『グングニル』かな」

「あれほど高い魔術濃度の術だと銃が耐えれなくて壊れるはずだ。・・・・・・どうやった」

「それは教えなれないかな」

 まあ、そうだろうな。あんなものを使える奴がたくさん出てきたら、どうしようもないからな。

「分かった、無理には聞かない。そのほうが両方にとって良いだろう。で、お前の話は何だ」

「う~~~ん・・・・・・」

「・・・・・・」

 沈黙が長すぎて嫌な予感しかしない。

「壊れた」

 申し訳なさそうな口調でそう言ってきた。

「・・・・・・何が」

 キッチンから足音がしたのでソファーから立ち上がり、食事用のテーブルに向かい、椅子に座る。

 箸、スプーン、小皿のセットが俺と千夜が座る場所に置かれていた。テーブルの中央には大皿に盛られたサラダが置かれていた。

 千代が持ってきたのはやはりシチューだった。

「ブローニング」

 シチューをテーブルに置くと同時に告げた。

 嫌な予感は的中したわけだ。長年使って愛着があったのだが、これは攻める気がしない。

俺の手の大きさに合わなくなってきていた。元々、この銃は日本人女性でも使いやすい銃だしな。

 まあ、そう考えたらナイスタイミングと言える。

「心配するな。そろそろ銃を考えようと相談していた。だからすぐに俺専用の銃ができる。それより夕飯だ。」

 これ以上この話を延々とすると千夜が傷つきかねないのでこの辺で終わらせる。

 なんて妹思いの優しいお兄さん。


―――― 翌日 9:00 ―――


 で、自宅からさほど遠くない所にある事務所の入り口に今居る。

 この企業から見たら俺はお得意様なんだろうな。事あることにここの社長代理に頼っているからなあ。

 しかもよく分からない理由で値引きしてくれるし。会社からしたら商品を盗っていく客だ。

 入るのが怖いぜ。受付のお姉さんたちに『商売にならない客がまた来たよ』みたいな顔されるし。

 ええい、ままよ。

 まず自動ドアを越える。次に待ち構えるのは厚い鉄ドア。来客用のインターホンを鳴らすと中から開けられる仕様だ。

 ピ

「えーと。先に連絡しておいた六東だ」

『・・・・・・はい。確認しました。只今、開けます』

 相変わらず厳重だな。いろいろ盗まれたら困る物ばかりだしな。

 ゆっくり開いていくドア。

 イタイイタイ、視線が痛い。顔を上げて入れやしない。足音が聞こえる。足元しか見えないから良く分からないが誰かが近づいて来ている。と、思ったが途中で足音が止まった。

 不思議に思ったので顔を上げて確認すると、背筋が伸びるほどの美少女がいた。

 千夜ほど長くはない金髪に栗色の瞳と年相応の胸、その姿は天使のようだ。

 この天使のような美少女は枝木澤 香奈(しきざわ かな)。俺との関係は切っても切れないと言うより幼馴染みたいな感じだ。幼馴染の定義が良く分からないから何とも言えないが。ちなみにクォーターだ。

 そしてさらに凄い事は調達・整備・製造を行う天才であり社長だ。神に選ばれた様な少女だが魔術には選ばれなかった。まあ、だからこそこうやって成功している。

 って、考えないようにしていたがもう限界だ。

(何だその服装は、確かに肌寒さはまだあるがニットはダメだろ。大き過ぎではないが高校生なりの胸が色っぽく見えちゃうし。しかも、下はミニスカートだ。おかしいだろ。)

「なあ、今日は仕事か。それともオフか」

「オフです」

 いやそんなニコニコ顔で言われても、反応しづらい。俺が固まっていると、身軽な動きで俺の横に来て腕を引っ張る。

「さあ、奥へどうぞ。お客様」ニコ

 声を聞くだけで頭がボーとする。相変わらず可愛い声をしている。

 腕から手を離し、

「頼まれた物はまだ完成してないから、替えの物を用意しといたから」

「ああ、分かった。ありがとう、助かる・・・・・・その服(刺激が強すぎて、もう着て欲しくないが)似合ってるぞ」

「・・・・・・あ、ありがと」

 後ろから見て分かるほど真っ赤になってる。湯、湯気出てる。

「お、おい。熱でもあるのか」

「だ、大丈夫だから。心配しないで、熱なんてないから」

 凄い必死に訴えてくるから本人の意思通りにしようと思うが戸惑いが隠せない。

「わ、分かった」

「着いたよ。ここが来客室」

 ドアを開けると、会社の大きさから見ると広くない、よくある来客室だった。あるのは三人用ソファーが

向かい合うように二つあるのと、その間にシンプルな長机が置いてあり机の上にはアルミケースが一つあるだけだ。

「さあ、座って」

  

「ふーん。そんな事があって壊れたんだ」

 先日の事を話しても驚きはしなかったところを見るに、だいたいの予想はしていたわけだ。

「あいつは強すぎる」

「うん。皆知ってる。だから自分を責めないでね」

「・・・・・・」

 さすがとしか言いようがない。人の心の奥を見透かすことが出来るなんて。

「お前みたいなタイプがそばにいてくれると心が落ち着く。そんな気がする」

「・・・・・・こ、これ・・・・・・ーズなのかな」ゴニャゴニャ

 声が小さ過ぎて聞き取れなかった。

 俺の顔を見ないように明らかに下を見てるし、よく分からん。

 パン

 香奈が話しを換えるように手を合わせた。

「じゃあ、これ使ってみて」

 部屋に入った時から置いてあったアルミケースを開けて中身を見せてくる。

「ジェリコ941・・・・・・か」

 昔から軍用・警察用として使われているほど信頼性がある。

「構えてみていいか」

「うん。どうぞどうぞ」

 うん。前のより少し重たいな。しかも3点バースト、セミオート、フルオートができるようになっている。

「やっぱり、黒い銃と黒い制服は似合うね、(よう)君は。やっぱ根暗っぽい所が良いのかな」

「根暗っぽい・・・・・・か」

「あ」

「いや、別に良い。気にするな、いつも言われている」

 そうは言うけど、少し傷つくな。まあ、いつもの事だしな。

「うん」

「今回の値段は」

無料(タダ)で良いよ」

「さすがに今回のは・・・・・・」

「でも・・・・・・頼まれた物はまだできてないから」

 こういう所はプライドが高い。さすが社長だ。

「お前がそう言うなら」

「あ」

 ショルダーホルスターに収めるのを止める。気でも変わったかな。

「お金は要らないから、換わりに買い物に付き合ってくれたら、いいかなあ。・・・・・・なんて」

 頼んでいるのか独り言なのか分からない様な言い方だなあ。それに目元のところが少し朱色がかっている。どういうことだ。まあ、面倒なことは考えないことだ。

「ああ、付き合ってやるよ。買い物ぐらい」

「あ、ありがとう」

 今が幸せの最高潮みたいな笑顔で喜んでらっしゃる。そんな嬉しいか知り合いと買い物行くことが。

 まあ、喜んでるから良いか。

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