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優等銃士な劣等魔法士  作者: 木津津木
第一章 水端
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第二三話 後輩II

投稿するのが遅れました。

申し訳ございません。

 吹蓮も紅茶を飲み終わったのでお金を払おうと立ち上がると、

「六東せんぱい、私が払います」

 吹蓮が立ち上がる。

「もともと、俺が入ろうって言い出したんだ。流石に俺が払わないとな」

 まだ何か言いたげな顔をしていたが渋々従ってくれた。お金を払い終わり外に出るとカランと鐘が2回鳴る。

 清々しいほどに気持ちの良い眩しい日差しに目を背ける、この出雲の地で雲ひとつない晴天というのも珍しい。まさに遊び日和―――今日は遊びじゃないけどな。

 これだけ気持ちいいと背伸びがしたくなる。

「う~ん」

 そんな事考えていると後ろにいた吹蓮が背伸びをした。こういう少女らしいしぐさをされるとこちらが困る。まるで妹のようだ。どことなく千夜に似ている気がする。

「あっすいません! これから会場の下見に行くのに、私・・・・・・」

「気にすんな、こんな天気だと背伸びしたくなるのも分かる」

 吹蓮がしなければ俺のやっていただろうからきつくは言えない。

 これから何をしようか、すぐに下見をしようと思えばすぐに終わる。2キロ圏内を少し歩いてから会場へ足を運ぶか。

「少し歩くか」

 2キロ圏内で万が一のことを考えて俺の弾が届く狙撃ポイントも探さないといけない。それなら時間も上手く使える。

 駅周辺には多くのホテルが建っている。その理由はいくつかあるだろうが俺が思うに出雲という地が栄えたことにある。学生が地方から来るので充実した生活をおくってほしいとファッションビルやショッピングセンターが建てられそれ目当てに地方から老若男女が集まるため宿泊施設が必要になった。だから駅周辺にホテルが多くなった。もちろん大社にはたくさんの旅館が残っている。が、老舗と呼べるものはそう多くはない。そうなった原因は旅館が不必要だった時期―――戦争があったからだろう。日本は他国と比べてそれほど被害は出ていなかった。それでもダメージを負ったことには変わらない。それでも根気強く続けていたのが現に老舗旅館として残っている。

 関係のない話は置いといて、これからどこを歩いたらいいんだ。本当に適当に歩いていいものか。千夜だったら勝手に前を歩くのにな・・・・・・、今いない妹のことなんて考えても時間の無駄だ。そんな事考えている暇があったら行動に移せ。

「とりあえず北に歩くか」

 歩きながらでいいから狙撃(監視)にいいビルでも見つけるか。屋上が一番やりやすいかな。この時期なら天候もそうそう変わることもない。

「何かお探しですか?」

 俺がキョロキョロ歩いていたもんだからいつの間にか隣で歩いていた吹蓮も気になったらしい。

「ちょうどいい建物を探してる。今のうちにある程度決めておけば当日楽になるしな」

「狙撃ポイントですか?」

「ああ。正確には監視ポイントかな。面倒な仕事を押し付けられたもんだ」

 ふふと吹蓮が小さく笑う。何か面白いこといったかなぁ? 女は本当にわかんねぇ。

 ちょくちょくメモをして目星をつけていく。吹蓮もあの建てものはどうですか? と探してくれている。最初のころよりは打ち解けた気がする。又は緊張が解けたとも言う。

 話しかけてくれるのは嬉しいが下から覗きこむようにつぶらな瞳で話しかけるのはやめてほしい。その角度は男を死地へと(いざな)うからやめてほしい。偶然だよね、たまたまだよね、わざとじゃないよね。

「六東せんぱい?」

 グッ!! 耐えろ、この世には負けてはいけないものがある。金、酒、薬そして女だ。これらに負けたら人生はどん底へまっしぐらだ。

 今耐え切れば大丈夫だ。深呼吸深呼吸・・・・・・

「六東せんぱい、どうしたんですか?」

「なんでもない」

「あっ、待ってください」


「あらかた、周辺は見終わったな」

「はい」

 あの後は深呼吸が効いたのか何事もなく監視ポイント候補探しは終わった。

「もう昼すぎか」

 喫茶店を出てから約2時間は歩いていたことになるがさすがとしか言えない。まったく疲れが見えない。中学生でもしっかりしている。

「六東せんぱい、あそこに公園があります。私歩きすぎて疲れてしまいました。少し休憩をしてもよろしいでしょうか?」

 嘘だよね、さすがに分かるよ。絶対に嘘。

「それならどこかのビルに入って昼食を食べながらでいいんじゃないか」

「せんぱい」

 そんな白緑の瞳をうるうるさせられても・・・・・・

「分かった、天気もいいし公園で少し休憩するか。昼食はその後でも良いか・・・・・・」

「ありがとうございます!!」

 その公園は休日の公園とは思えないほど物静か、公園内を見渡すとブランコ、滑り台、砂場とよくある3点セットが入り口とは反対側にありその場所以外は芝生で入り口から右手に東屋(休憩用の椅子や机がある建物)がある。

 吹蓮が先に公園に入り東屋に行くのかと思いきや左に足を運んだ。

 何故左に行くのか理解できず呆然としていると、吹蓮はハンドバッグからシートを出し芝生の上に広げた。

「六東せんぱい、どうしたんですか?」

 こっちのセリフだ!

 まったく理解できないがとりあえず行くしかない。

「実は私、ラ、ランチを作ったんです・・・・・・」

 ああ、だからか。せっかくいい天気だから外で食べたかったのか。それならそうと言えばいいのに。

「い、いけなかったですか?」

「ぜんぜん、むしろありがたい」

 金が浮くからな。金には現時点では困っていないがいつ何が起きるか分からん以上無駄使いは避けたい。

 その言葉を聞いた吹蓮は上機嫌になり鼻歌交じりにバッグからさらにバスケットが出てきた。さらに水筒も。本気(マジ)じゃん。

「開けていいのか?」

「どうぞ」

 バスケットの中身を確認すべく開けてみると中身は2口で食べられる長方形型のサンドイッチだった。具は卵、ハム、チーズ、レタスなどが色々な組み合わせでサンドされていた。

 どれから食べるか迷うが最初は卵から食べる。

「おいしい、ですか?」

「・・・・・・うん、おいしい」

 他の具のサンドイッチも食べてみたがどれもおいしい。おいしいサンドイッチを作るためには水分をどうにかしなければならない。吹蓮のサンドイッチは具の水分によりパンがべちゃとなっていないのでおいしい。手が込んでいるのが分かる。

「どうぞ」

 俺の膝前に置かれた水筒の備えつきのコップの中にはお茶(?)が入っていた。

「ありがと」

 中身は麦茶だった。まあ、なんでもいいんだが。

 本当においしいな、日頃から料理とかするのかな。サンドイッチだけでそう思うのは悪いか。

「ごちそうさま」

 食った、食った。満腹にはなっていないが満足だ。もちろん俺が全部食ったわけではない。ちゃんと吹蓮も食っていたぞ。

「少しお手洗いに行って来る」

 トイレの場所は公園に入ったとき確認済みだ。東屋の横にあったはずだ。


 ふー、スッキリ。

 ん、吹蓮はなにしてんだ、俺が使ったコップをまじまじと見て。

「コップに虫でも入ったか?」

 吹蓮はハッとした様子で振り返る。

「な、何でもないです!」

 何かを誤魔化すように慌てた様子で片付けを始めるーーー赤面しつつ。

 なぜか申し訳ない気持ちになったので片付けを手伝おうとしたが、吹蓮か慌てて片付けするもんだからすることがなくなってしまった。

 うーん、少し罪悪感が・・・・・・、まあ、年の差と思えば・・・・・・

「もう少したら行くか」

「はい」

 食後の休憩は大事だからな。食後は内臓がフル活動するから余計なエネルギーを使わないほうがいいからな。涼しくて休憩するにはちょうどいいかな。

 涼しい風が時々吹いてくれるから寒いと感じることも無い。ほんとにピクニック日和だ。

 風が公園の隅に生える木の葉を揺らすたびに吹蓮の白緑の髪をなびかせる。

 公園でランチを食って正解だったかな。

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