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優等銃士な劣等魔法士  作者: 木津津木
第一章 水端
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第一二話 集卓

「まずは自己紹介からするか。じゃあ、最初は香奈からだな。今回の重要人物でもあるしな」

「えーっと、高等部2年普通科枝木澤 香奈(しきざわ かな)です。今回は警護される側の立場になるのでよろしくお願いします」

――パチパチパチパチ

 えーっと、千夜。そういうの今いいから。

「じゃあ、次は俺で・・・・・・香奈と同じで普通科六東 桜(むとう よう)。今回の任務では鷹の目をすることになったのでよろしく。実力は期待しないほうがいいと先に言っとくぞ。言ったからな」

――し~ん

 千夜、拍手しろよ。何か気まずい空気が流れてきたぞ!

「じゃ、じゃあ、次は中等部の子・・・・・・」

 進行も香奈に変わっちゃったし・・・・・・・

「すいちゃん、私からでいい?」

 すいちゃんとは千夜の隣に座る、前からは分かりにくいが三つ編みハーフアップの女子の名前だろう。特徴的なのは髪の色が白緑っぽい事だろう。見てて心が落ち着くのも緑色は心を癒す効果を持つ色らしい。

 その子は(うつむ)いたまま千夜の問いかけに頷いた。

 無口なの?そんなに大人しいとこの学校ではやっていけないと言いたくなる。

「――中等部3年特別科六東 千夜(むとう ちよ)です。まだ中学生ながら高等部の方達と共にできることを心から嬉しく思います。(お姉さんの近くにずっといられるなんて御褒美です)」

 思っていることが顔に出てるから。あと、香奈見過ぎ。絶対香奈しか見えてないでしょ。こっちは実の兄だぞ!血が繋がってんだぞ!

 香奈は千夜から少し目を逸らしてるし、何この空気!俺たち本当に大丈夫か。上手くやっていける気がしないのは俺だけだろうか?

「――ちゅ、中等部3年特別科翡翠 吹蓮(かわせみ すいれん)です。その・・・・・・よ、よろしくお願いします」

 緊張しているのがすぐに分かった。それよりも俺の目と合って顔を紅くしたのは何で?顔になんかついてます?それに目が合ったので気付いたが虹彩が薄い緑色をしている。

 うわ!?香奈、翡翠さんのこと睨んでませんか?にじみ出てきてるオーラも少し黒いような気がする。

――トントン、ブス

 香奈が今にも(理由は不明だが)跳び付きそうな勢いなので肩をトントンと優しく叩き、振り向いたところで人差し指でほっぺを突く。

「よ、桜君。もう・・・・・・」

 女性にやってはいけない事をしたような気がするが香奈も頬を可愛く膨らませて、跳び付くのを止めたみたいなので結果オーライ。

「話を進めてくれ、自己紹介だけでせっかくの時間を潰すのは勿体無い。それと仲良くしようぜ」

「はい」

 翡翠さんと仲良くしろよ、という意味で言ったつもりだが勘違いしてるような気がする。

「えーと、会議を行う場所と日時をとりあえず言ってくれ」

「場所は出雲市役所市庁舎の会議室、日時は来週の火曜日AM10:00から」

 香奈はいつの間にか出した一枚のプリントを読み上げるように言った。

 案外早いな、外部特別教育は手続きがある理由で来週の週末辺りが普通なのに。手続きといっても相手側に名前と写真を送るだけで良い。だが、警護中万が一にも相手に傷の一つでもつくようなことがあれば先生にフルボッコ。

「香奈のすぐ近くは千夜と翡翠さんで良いかな?」

「もちろん!お姉さんには小虫一匹たりとも近寄らせません」

「――コク」

 千夜は相変わらず香奈を凝視している。

 怖いから。香奈も困ってるだろ。もう少し翡翠さんを見習って大人しくしろ。翡翠さんももう少し喋ったら良いのに。さっきの自己紹介で綺麗な声をしてたのになぁ。俺と目を合わせたがらないけど・・・・・・

「俺は先に言った通り鷹の目だから香奈とは離れるから何か異変があってもすぐには駆けつける事はできないぞ。それで良いな」

「はい」「うん」「――コク」

 三者三様の答えが返ってくる。3人ともそれで良いらしい。良いんだな?本当に良いんだな?まあ、俺弱いもんな、しょうがない。

「先に言っとくけど大規模魔術は使わないこと。特に千夜、この前のヤツは緊急事態時にしか使うな」

「・・・・・・うん」

 一瞬「えー」みたいな顔しやがった。あの火柱(まあ、魔術名も『火柱』だった訳だが)を使うと護衛対象、香奈や他のお偉いさんにに重症を負わせる可能性大だ。あの魔術は警護より撃破向けだ。

――この学校の進路先は主にBG(ボディーガード)だがその他に自衛官・警官がある(まあ、大学もあると言ったらある)。それぞれの使える魔術、魔法によって進路先も変わってくる。

 千夜の場合はどこにも行けるだろうがこの前の魔術だけを見ると自衛官だな。さらに戦地に繰り出される特別兵だろう。

 まあ、分かったから良しとするか。

「会場の下見は土曜日で良い?」

「俺は別に良い」

「わ、私も土曜日で大丈夫です」

「待ってお兄ちゃん!全員で行くのはさすがに・・・・・・」

「分かってる、それを今から言おうと思った」

 本当だぞ、妹が言ったから兄として見栄を張っている訳じゃないぞ。

「――もし今回の会議を襲撃しようと狙っている奴がいたら危険だ。だから顔が知られている可能性がある香奈と千夜は行かないほうが良い」

「「わ、私も!?」」

 2人ともなんだかんだでそれなりに有名だ。っていうか自覚なかったの!?それはそれでやばいような。香奈はそんな事に興味なさそうだし、千夜は・・・・・・まさか!!自分のランキング見てないのか!?そういえば、ランキングが書いてある紙がくしゃくしゃに丸められてゴミ箱の中に捨ててあったなぁ。それを俺が気になって読んだから千夜のランキングを俺が知っていた。けど千夜は読まずに捨てていたのかぁ。それとも読んだ上で重要性が分かっていないのか、どっちかだろう。まあ、前者ですね。

「――そりゃそうだ、香奈は大手社長の令嬢で千夜は世界的に有名な魔術士だからな。だから下見は俺と翡翠さんで――」

「えっ!!!」

 うわ!びっくりした。

 翡翠さんも大きな声は出せるんだな。それより、そんなに驚くことですかねぇ。消去法で考えたら俺と翡翠さんの2人が普通だろうに。予想してなかったのか。

「えーと、俺と翡翠さんで良いね?」

 香奈と千夜はめっちゃ嫌そうな顔をしているが了承は得れそうな雰囲気だ。まあ、俺と翡翠さんしか適任がいないしな。

「はっはい。よろしくお願いします」

 そこまで緊張するようなことでもない気がする。パッと見てすぐ帰るわけだし。ずっと居ると怪しいしな。

「よし、それじゃあ下見の結果は月曜日の放課後にするから。それと・・・・・・インカムは学校から出る、として他に必要なものあったか?」

 下見と言っても周辺を見て回るだけだ。

「えーと、特警(とっけい)免許と自分の武器だけで良いはずだよ、だよね千夜ちゃん」

――特警=特別警護者、簡単に言えば護衛・警護などの活動を国から許されている人の事だ。

 香奈が千夜に話しかけた!

「(お姉さんが言う事は全て正しいので)それだけで良いと思います!」

 まあ、そうなるな。聞こえてないと思ってるのか知らないけどガッツリ聞こえてるからな。

「はあ、じゃあ明日と明後日は急な事がない限り集まらない事にするから各々来週の火曜日、当日に向けて準備するように」

 なんか俺、先生みたいになってしまった。一応俺(香奈も)最年長だからな、先輩として仕切らせてもらう。香奈は良いとして千夜に任せるのはさすがに遠慮したいところだ。

「では、解散」

 俺を含め4人とも腰を上げる。

 疲れた疲れた。

 学校ではなるべく千夜とは会いたくないのになぁ。ちょっかいかけてきそうだし。

「あれ、終わっちゃった?」

 そんな事を呟きながら扉を開けた井上(いのうえ)先生が部屋に入ってきた。

「なんか連絡事項でもあるんですか」

「連絡事項というほどでもないんだけどちょっとだけ言いたいことがあるから」

 先生がそう言うと皆して座ろうとする。が、

「用があるのは桜君だけだから、枝木澤さん、千夜さん、翡翠さんは退室してもらって結構ですよ」

 出ても出らなくても良いと言っているが実際のところ、「さっさと出て行け」という気迫が物凄い。

 残ると言えば強制退室だろう。それが分かっているので香奈たちは退室する。俺は香奈に鞄を預け座る。

「それで用件は何ですか。それとも忠告ですか」

 先生は俺の向かい側に腰かける。

「どちらかと言うと後者です・・・・・・率直に言うと今回の会議は一筋縄では行かないと思います。今回の会議の内容はたぶん武器・兵器の輸出・輸入の制限と緩和についてです。今の日本の状態に不満を持つ者が襲撃してくる可能性はゼロとは言えません。」

 先生が思いがけない事を口にする。口調から一切の迷いが無い。先生はほぼ100%の確立でそうなると断言できるのだろう。

「香奈・・・・・・枝木澤、さんに最初に言った方が良いと思います」

「ううん、枝木澤さんには会議に集中してもらうために言わない方が良いです。妹さんと翡翠さんに言うと緊張して、それを枝木澤さんに感付かれるかもしれないので2人にも言わない方が良いです」

「何で俺なんですかッ!!」

 俺よりも優秀な3人には言わないで俺に言うのは何でだッ!

「君が枝木澤さんを守りたいと誰よりも強く思っているからです」

「な―――――――ッッ!?」

「それとVRCTFの訓練データを拝見しました。その2つから信用するに値すると思ったからです」

 言いたい事があるのに言葉が出ない。

「それと()()()()に慣れるように狙撃の時のような極限集中状態ではなくて良いので日頃から練習してください。先生の話は終わりです。それでは頑張ってください」

 先生は最後の方は立ち上がり扉の方に向かいながら言ってきた。そして、俺の言葉を一言も聞かずに退室した。

 俺はそれをただ呆然と見ていた。

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