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優等銃士な劣等魔法士  作者: 木津津木
第一章 水端
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第一一話 枝葉末節

 今朝、校門を過ぎたところで目の前に昇降口に行こうとする(とおる)の背中が見えた。隣にいた香奈に、先に行く、と告げ明に追いつく。ばれると逃げられる可能性があるので気付かれないように忍び寄る。

 周りの視線が逸れる一瞬を狙い背後から顎を殴り気絶させる。そしてだらーんとなった明を人の目に付かない所(救護科の実習棟裏)に放置する。持っていた鞄ごと。

(これで完全犯罪の完成だ)

 救護科の近くに放置するだけまだ優しいと思う。

 感謝しろよ。

 これで昨日の復讐ができた。よかったよかった。


 結局、明は1・2時限目をフケた。(フケた訳ではなくフケざるを得なかった)

 3時限目前に来た明を誰も不思議がる素振りを見せず挨拶する人や気にせず次の授業の準備をしている人もいる。

 この学校では何らかな理由で遅刻してくる人は少なくはない。そのため明のことも気にしてない。

 ただ単に明に興味が無いだけだろうな。

 教室に入ってきた明は俺と合い近寄ってくる。その様子を見たハルも席を立ち近寄ってくる。

 俺の席の目の前に立った明はニコニコ顔で「ヨッ」と言ってくる。

 いやいや怖いから。わざわざ席の前に立つのもおかしいけど、それよりその顔!どんだけニコニコしてんだよ!

 ドンッ!と明が机に両手を勢いよく付いた。

「去年、約束したよな・・・・・・一緒にやるって!」

 明は少し怒った表情をしている。

 昨日、明から外部特別教育を一緒にやるかという内容の連絡が来たが俺もやることが既に決まっていたので断っといた。

 ちなみに整備科、救護科もそれなりにSPの代わりとしての役割は果たせる。

「は?そんな約束したっけ」

 去年からの約束とか誰が覚えていられるか!それを覚えていたとかどんだけ楽しみなんだよ!

「やっぱり忘れてやがる!あれほど言ったのに!」

「まったく記憶にないんだが・・・・・・」

「はぁ・・・・・・これだから頭のネジが抜けてる奴は」

「いや、抜けてないから。それに先生に直接頼まれたから断るわけには・・・・・・」

「え、先生から直接頼まれた?」

「ああ」

「・・・・・・それなら仕方ねぇな」

 お、許してくれるらしい。安心、安心。今朝のことも気付いてないみたいだし、安心、安心。

 まあ、気付いていても許してくれるだろう。まあ親友だしな、一応。それなりのことは許される間柄なのだ・・・・・・俺と明は。


 許してくれませんでした・・・・・・

 俺は顔のすぐ横にはタイヤ痕がついた道路がある。現状、仰向けで空を見つめている状態だ。

 魔法使っといて良かったぁ・・・使ってなかったら重傷だったな。たぶん。

 まあ、制服に衝撃に強い繊維が織り込まれているからそれなりには防げるがさすがに頭は防げないからな。

 まさか、五時限目と六時限目の間にバイクで轢かれるとは思ってもいなかった。ちょっと油断してた。

 五時限目に魔力の使い過ぎで気持ち悪くなって風に当たりに外に出たらまさか轢かれるとは考えてもなかった。あぶねー。

 これ完全に轢き逃げだよな。うん・・・・・・犯罪ですね。

 だがこの学校でこれが犯罪と言っていたらきりがない。

 明は明で俺を轢いた其の足でどっか行ったし・・・・・・

「あー、空って青いなー・・・・・・遠いし」

 手を伸ばしても届かないし掴むこともできない。これだけ人の心も青くて綺麗なものだったら争いも生まれねぇのに・・・・・・

 明にまた仕返ししたところでいたちごっこだ。それに現時点での仕返しがバイクだから次は自動車、その次はトラックかな・・・・・・いや、それマジで死ねる!それはさすがにやばい!

「よいしょ」

 さすがにこのまま六時限目をサボる訳にはいかないので俺は立ち上がる。

「はぁ、疲れる・・・・・・外に出るんじゃなかった」

 実習棟の入り口の扉を開け来た道を引き返すように入っていく。

 入ってすぐ左右に階段があり前には廊下といくつかの部屋がある。一番奥には引き戸が見える

「すごい音したけど・・・・・・大丈夫?」

 俺とバイクの衝突音を聞きつけてか香奈が居た。

「大丈夫、大丈夫。いつもの事だから」

 俺は手をヒラヒラさせ心配するな、先に行けと伝える。

 それでも香奈は俺のもとによって来て顔を覗きこむ。

 顔近!早く離れてくれませんかね?

「体調は大丈夫?」

 香奈は俺が外に出て行くときの気色を見たのか心配してくる。こっちが俺のあとを追って来た一番の理由か。

「まだ少し気持ち悪いけどさっきよりはだいぶマシだ」

 俺はそう言いながら一、二歩後ずさる。良し、距離は取れた。戦闘でも自分の距離を保てと言われてるしな。

「ほら行くぞ、六時限目も始まるしな」

 俺は香奈より先に廊下を進み右手左手にあるいくつかの引き戸を無視して目の前の一番奥にある引き戸を開ける。

「おらー!」「とりゃー!」「死ねや!」「こっちのセリフだ!」「(おせ)ーぞ!」「ぶっ殺してやる!」

 あー、始まってますね、これ。何で誰も休憩しないの。皆さんほどほどに・・・・・・

 扉を開けた先は体育館みたいになっている。ただの室内訓練施設だ。ここに来る前にあったいくつかの部屋は射撃訓練施設(個室)だ。

 現在進行形で行われているのは『差し向かい』と言われる訓練だ。一対一で守備魔法を使い命の安全を保障した後は・・・・・・自由!相手が倒れるか魔法が切れるまでやりたい放題。

 あ、女子とやることもあるが手を抜かないほうが良い。少しでも抜くと・・・・・・死にます。

「うわー、入りたくねぇー」

 五時限目は何とか死ななかったけど六時限目は死んだな。

「ふぁいと」

 香奈が可愛く両手に握り拳を作って励ましてくる。

「ファイトと言われてもなぁ」

 渋々入ると、ドーン!

 はい、いきなり肩を飛び蹴りされた。

「くっ!」

 床を滑るように転んだせいで背中が圧迫され息が漏れる。

 今日何なの、バイクといい、厄日なの、俺死ぬの。うん、死ぬね。

 もうなんか、言うのも疲れた。

「抜け出した奴には罰をっと」

 誰か知らないけどいきなりすぎませんか。こっちは魔法も使ってねぇのに。

 俺は近づいてきた者の顔を確かめずに足首を蹴る。

 バランスを前に崩したところを体を縮め体育座りのように膝を曲げ腕力だけで跳び上がる跳ね起きと同時に相手の胸に両脚で蹴りを入れる。

 先にやってきたのはそっちだからやられても文句は言えないよな。

「うっ!」

 相手はそのまま後ろに後ずさり俺と距離ができる。どっかで見たことがあるような顔をしているがなかなか思い出せない。普通科の生徒の一部には戦闘狂という三度の飯より戦闘好きがいる。

 たぶんその1人だろう。俺が入るなり突っかかってきた訳だしな。

 相手はまだ少し揺らめいているが胸の中心を勢いよく横蹴りをする。相手はそのまま後ろに倒れて床に背中をつくと同時にマウント(ポジション)をとる。

 とりあえず気絶させるために顎をぶん殴る。

 右肘を引き殴る準備に入る。

「えっ!」

 引いた右腕が一瞬痺れたように小刻みに震える。

 相手はその一瞬の隙を見過ごしたが上級者レベルだと見過ごしてくれるはずがない、さらにマウントを取られていても反撃されるだろう。

 いきなり蹴られたのがいらっときたので遠慮なく行かせてもらいます。

 怯えている相手にも躊躇(ちゅうちょ)しない。

「死ねっ!」

 

 終礼後、俺と香奈は千夜と千夜の同級生と一度顔を合わせるために談話室前に来ている。

「もう来てるのかな?」

「いや、どうかな。さすがにまだ来てないと思うぞ」

「一応、ノックしたほうが」と香奈が言い切る前に俺は扉を開ける。

「もう、居るじゃん」

 室内には千夜と千夜の友達らしき女子生徒が座っていた。

「失礼します」

「あっ、お姉さん!」

 俺よりも香奈か。俺って千夜の実兄だよな。血繋がってるよね、俺と香奈。

 まあ、そうですよね。千夜はそこらへんのイケメンより香奈だもんな。女子に持てる香奈も香奈だが。

 香奈は香奈で手を横に振ってそれに答える。

 俺と香奈は先に居た2人と向かい合うように座る。

「さて、始めるか」

 俺のこの一言で今回の護衛任務が始まった。

是非、評価のほうもよろしくお願いします

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