プロローグ
幾重もの悲鳴と雄たけびが、あたりを飛び交っていた。
ここは王都イグニス。何千万もの人間族を統べる王の地である。
イグニスは厳重な警備により、ここ何百年もの間平和を維持してきた。
しかし、イグニスは今、どこからともなく現れた魔族達の急襲により、戦場と化している。
そんな戦乱の中、一人の女騎士が命を落としかけていた。
そのものは、イグニスでもトップレベルの実力を持つ強者であったが、不覚にも、仲間達を人質に取られてしまい、魔族達に、自らの降伏を条件に仲間達を解放するという交渉を持ち掛けられ、その交渉に乗ったのだ。
だが、そんな交渉を魔族達が本気でするわけもなく、女騎士の仲間達は、目の前で殺されてしまった。
「なぜ仲間達を殺した!!」
女騎士は魔族達のリーダーと思しき男に向かって叫んだ。
「ふははははっ! 利用できるものは何でも利用する、それが戦というものだよ!」
「っく! この外道め!」
「外道? 私は、そこらにいた、無能で何の価値もない愚か者どもを、私の計画に利用してやったのだぞ? むしろ、感謝されるべきだと思うのだがね?」
(この男……狂ってる!)
「さて、そろそろお前を弄ぶの飽きてきた……そうだ、家族達に何か言い残したいことはないか? …最も、その家族達も今頃、私の部下たちに殺されているかもしれんがな」
男は、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
「お前たちは必ず、我がフェイム騎士団がうち滅ぼす!!」
「そうか……では、さらばだ、『人間族の姫』よ」
男は完全に息の根を止めようと、勢いよく剣を振り上げた。
――ママ……約束を守れなくて……ごめんなさい