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僕は異世界で罪を償う  作者: 桑澤薫
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僕は異世界に転生される

初投稿で緊張していますが、これからも、不定期で頑張ります。

「もう……沢山だ。」

1人、勝手に出入りしている空き家の2階、草むらから拾ってきて敷いた藁の上で僕は絶望に打ちひしがれていた。

「どうして、僕だけこんな目に……」

今夜は天の川が見られる程に空が綺麗だった。

あの星の一つに今からなるんだ、そう思った。

不思議と恐怖はなかった。

むしろ、もうすぐ自由になれると思えば嬉しいくらいだった。

ゆっくりと手を伸ばした先にあったのは、大量の睡眠薬が入ったビンだ。僕はその中から掴めるだけの薬を掴み、口に放り込んだ。

医者に無茶言って買った1番効き目が強いものだ。

本来は一回一錠なのだが、何錠飲んだのかわからないくらい飲んだ。

さらにそれを、あらかじめ睡眠薬を溶かし入れていた水で、一気に胃袋へ流し込んだ。

数秒後、強烈な眠気が僕を襲った。

いや、眠気とは言えない。意識が身体から抜き取られたかのような強烈な浮遊感が脳内を支配していた。

「やっと……これで……楽………に…………」

何故か僕の目から涙がこぼれた。

手に持っていたコップが床に落ち、破片が飛び散る。

頭に映像が流れてきた。

────これがきっと走馬灯ってやつだ。



両親は事故で死に、姉は複数人の男に強姦された後殺され、家族は僕だけを残してみんないなくなった。

世間の人々は、僕のことを、

「かわいそうに……」

とか、

「不幸だねぇ」

と同情するだけで、何もしてくれはしなかった。

手を伸ばしてはくれなかった。

まあ、そりゃそうだ。僕だって、逆の立場だったらそうしている。

まったく、世間は、人間は非情だ。

親戚は、「一応身内だから」と言って、僕に生活費をくれた。だが、それはとても少ない額で、自分で稼がないといけなかった。

僕はまだ中学3年だったので、どこも雇ってくれず、仕方なく思った親戚が、自分が経営しているスーパーで働いてもいいと言ってくれた。

だが、その親戚の性格は最悪だった。

僕の給料だけ、ほかの人と比べると異様に少なかったのだ。

同じ時間働いた他の人と比べて、僕の給料は2000円も安かった。親戚に聞くと、

「働かせてやってんだ。贅沢言うんじゃねぇ!お前より働くヤツはいくらでもいるんだ。お前の価値なんてそんなもんだよ!」

と言った。

僕はこの世界の誰からも必要とされていないのだと思い知った。

それでも、僕には他に働ける当ても無く、親戚の冷たい視線に耐えながら頑張って働いた。

しかし、そんな努力は無駄だった。

親戚に呼び出され、奥にある店長専用の部屋に行くと、いきなり「退職願」と書かれた紙を投げ渡された。

「えっ?これは…どうゆう…」

「辞めてくれ」

「へ?」

「これを自分が書いたことにして、今すぐに辞めてくれっていたんだ」

意味がわからなかった。

「なんでなんですか。僕なりに頑張って来たのに…」

すると、親戚は下卑た笑みを浮かべて言った。

「いやー、新しく可愛い娘が入るんだよ。だからお前はもう必要ないんだよ。わかる?」

親戚はそう言うと、今まで溜めていた僕への不満をネチネチといい並べた。

そもそも、遺産がある癖にまるで金がないみたいなふうに見せているのが腹が立つ。最初の方、失敗ばかりして俺に迷惑かけたのを忘れたのか。親戚だからって調子に乗るな。などなど、よくそんなに思いつくと感心してしまった。

僕の親は遺産を残していたが、ほとんどを親戚に無理やり奪われた。最初は残ったお金で生活していたが、大半を取られたので、もう底をついている。

きちんと知らせていたはずなのに、この人は全然信じていなかった。自分も遺産を奪っていった癖に。

大人って糞だな…。そう思った。

僕は仕事を辞めて、完全にグレた。

まともな仕事で生活費を稼ぐことが出来なくなってしまったので、ひったくりや万引きをするようになった。

時には、同じような境遇の仲間と組んで恐喝なんかもした。

はっきり言って、親戚のスーパーでのバイトより稼げたし、そいつの店から商品を盗んだ時は、心がスカッとした。

そんなある日、僕はミスを犯して警察に突き出された。

僕は心に余裕があった。仲間が助けてくれると思っていたからだ。

幸い、僕の罪は未遂で終わっているし、捕まったのは初めてだ。誰かが、僕を引き取りに来るだろう。そう考えていた。

だが、誰も来なかった。仲間だけでなく、連絡が入ったであろう親戚までも。

僕が留置場から出る時、

「まさか、ここまで誰にも相手にされないとはな。こんな思いをしたくないなら、もうこんなことすんじゃねえぞ」

そう言った警官の声がいつまでも耳に残っていた。

しばらくして、

「よう、いつぶりだっけ?」

声をかけながら、いつもの仲間のところに行くと全員が、俺の周りに円になるように集まってきた。

「いやいや、そこまで歓迎しなくても…」

僕がそう言うと、後ろにいたヤツが、僕の右足に蹴りを入れてきた。

「いてっ!なにすんだよ!」

「………のせいで」

「え?」

「お前のせいで、もうあそこでは盗みができなくなっちまったじゃねえか!どうしてくれんだよ!あぁ!?」

開いた口が塞がらなかった。

「あれは悪かった。だからほかの場所を……」

「他の場所だあ!?もうあんなカメラの死角の多い店なんてねぇよ!もしあったとして、見つけるのにいつまでかかると思ってんだよ!お前があんなミスしなかったら、まだまだ盗む事が出来たんだ。落とし前つけてもらうからな。よし、オメェらやっちまえ!」

「「「おう!」」」

その合図と同時に、四方八方から僕に向かって攻撃が飛んできた。

「ぐえ!……ぐふっ!………がはっ!………」

仲間からの制裁は何十分も続いた。

何発蹴りを食らっただろうか。顔は赤く腫れ上がり、全身には打撲の跡が大量に出来ていた。

「よし、もうそいつはほっとけ。使えないやつはいらねぇ」

彼のその言葉が、また耳から離れなかった。

自分の家……と言っても勝手に住んでいる空き家に帰って来て、ベット代わりの藁を敷いたスペースに寝っ転がる。

「久々の我が家だ。落ち着くなー。アハハ」

無理して笑ったが、そのせいで塞がりかけていた口の中の傷が開いた。

────ここまで誰にも相手にされていないとは

やめろ。

────使えないやつはいらねぇ

やめろ

────お前の価値なんてそんなもんだよ!

やめろ……やめろ…やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

もう限界だった。身体的にも、精神的にも。

いくつもの物を人から盗み、何人もの人を傷つけ、そうやってこの何年間か生きてきた。

だが罪を重ねるごとに胸が痛み、罪悪感が襲ってきたのだ。頑張って楽しい気持ちになろうと笑うけれど、全然そんな気になれない。

元の自分はこんな人間ではなかったはずだ。

もっと優しかったはずだ。

もっと楽しそうだったはずだ。

もっと笑ってたはずだ。

こんな…悲しい顔はしなかったはずだ。

どうしてこうなった……。

自分の不甲斐なさに涙が溢れた。世界の理不尽さに絶望した。

ああ、はじめからやり直したい。でも、もう戻れない。

………ならせめて、こんな世界から逃げ出したい。

────そうだ。死のう。



思い出したくもないものが終わると、目の前が光に包まれた。

今見ても、ひどい人生だった。そう思う。

誰も、救ってはくれなかった。

誰も、支えてはくれなかった。

誰も、必要とはしてくれなかった。

「うぅっ……………」

悲しみにくれていたその時、

「貴方は、人にやさしくできますか?」

声が聞こえた。心に染み渡るような、透き通った声だった。

「………ああ、できるとも」

なんだろうとは思ったが、深くは考えなかった。

どうせ、これは夢なんだから。… 今なら何でもできそうな気分だ。

「では、貴方は、見返りを求めず、人の為に尽くせますか?」

「………できるとも」

そう答えるとさっきまで暗かった目の前が明るくなった。

眩しくて目を細める。さっきまであった夢見心地な気分や浮遊感はない。

きちんと身体がある。

地面にしっかりと立っている感覚がする。

「よろしい。では、貴方は、私と一緒に罪を償うことができますか?」

「………え?」

目の前に広がった風景は、なんとも不思議な光景だった。

歩道には、鎧を着た騎士や、獣人、普通の人間が歩き回っており、道路では馬車、自動車、恐竜のような生き物が走っている。

そして、一際目を引くのは正面に立っている女性だ。

茶色のローブを着ているが、その上からでもわかる膨らみからしてプロポーションが抜群なのはすぐにわかる。

髪は銀髪のショートボブで、左目が前髪で隠れている。

顔は、少し幼く見えるが、とても可愛い。

「 ……あのー、聞こえてますか?」

状況は理解出来ないが、とりあえず、さっきの質問に答える。

「ああ、できるとも」

答えを聞いて安心したのか、ほっ、と息を吐き

「よろしい。では、始めましょうか。あなたの第2の人生を!」

これは、僕が自分の罪を償い、世界を救う物語。


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