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1年F組学級日誌  作者: 名雲しぐれ
授業開始前
1/2

朝礼

4月10日:AM8時30分 校庭 朝礼台前



どこの学校に行ってもそうだとは思うが、朝礼ほど無駄な時間はないのではないだろうか。


入学したての1年生にとってはまだ名前も覚えていない教師、校長が長々と演説しているようにしか見えなかった。


かれこれ5分間は立っているような気がするが、校舎の時計を見るとまだ始まって2分しかたっていない。


この時間差は生徒にとっては苦痛だ。いつまで立たせる気だよ、と。


しかし、


「~ということで、新入生の皆さん、これからの学校生活を楽しんで下さい。以上」


と締めの言葉を聞いたときの喜びといえば、無言なりともガッツポーズが出るくらいだ。


全校生徒が集まる校庭に解散の声がかけられ、まずは1年生から教室へと戻るように言われた。


戻っている間は整列しているとは言えどおしゃべりが絶えない。


梔子七枝くちなしななえもその一人だった。


「くちなし」という名前はそういるものじゃないので、名前がかぶっているからと言ってからかわれることは七枝の人生の中で一度もなかった。


下級生に比べて少しばかり長い春休みが終わり、その間七枝は勉強も何もせず、ただ気ままに1日1日を過ごしていた。友達から遊びの誘いもあったが、何も用事がないのに外に出て歩くのはあまり好きではない。適当な理由で全部断った。


七枝の性格は、「必ず動かないといけない状況じゃないと動きたくない」というものだった。まず、自分に使命感がないとそれ以外のことは全部他人事のように見えてしまう。


だから中学校に入学して、2週間半くらい合わなかった友達とも会えた。そこまで嬉しくもなかったが。


この中学校は七枝のいた小学校とは別に、2校の生徒も一緒に在学している。


3校しかいないのだから、友達くらい一人は一緒のクラスに――なんて当たり前のことを考えていたら、3校の生徒しかいないのに七枝は見事に友達とは別のクラスになってしまったのだ。


原因は人数が少しばかり多いことだ、と七枝は自負している。


もちろん、そのクラスに七枝がいた小学校出身の人がクラスに一人もいないわけではなかった。


いるのはいるのだが、あまり話したことのない人たちばかりだ。しかも、七枝含めて全部で3人。どう考えてもおかしい人数配分だ。


七枝は友達と話しながら、脳の奥では色々なことを考えている。


風のうわさで聞いたことあるのは、成績順にクラスが分けられる……らしいのだが、それは私立校の話だろう。


そういえば卒業前に「実力テスト」なるものがあったことを思い出した。面倒くさかったがが、これもきちんと受けた。……これは関係ないか。


その他にもいろいろな可能性を探ってみたがどうにも全部該当しなさそうだ。


うーん……と七枝が声を漏らしたのと同時に、一緒に話していた友達が、「じゃ、私このクラスだから。またね」と言ってすぐそばの教室に入って行った。


七枝は1年F組。一番奥の校舎にある教室まで歩いて行かなければならない。


朝礼なんてなければ、こんな足が疲れることなんてないのに……。けだるそうな目で七枝は思うのだった。




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