その夜、彼らは――
Need of Your Heart's Blood 2 第九十七話、『彼らの理想』その後からのお話。
……ただし、登場人物的には同じく小説家になろうに投稿している「千の夜の約束」の番外編でもあるので、そちらにもこれと同じ話を投下しております。
「――綺麗、だったわね」
「……うん?」
「あの、彼の竜が降らせた銀の光……。まるで、星屑が降ってくるようだったわ」
あの時は、主従として彼らに対していたが、晩餐の後、最後に残った執務も片付け、湯浴みも済ませば、二人は主従の関係から一時、世間にありふれた――というには少しならず語弊があるけれど……それでも、仲睦まじさで言えば有数の夫婦の関係に戻る。
「でも、あれは……彼、というより彼女の方の力なのかしら?」
「……だろうな。“今現在”はともかく、仮にも魔物である吸血鬼が破魔の力を扱うなどあり得ない。だが、吸血鬼であるなら、力を持つ者の血からその力を移す事が可能だ」
「――彼女は、……彼女もまた、選んだのね。彼の為に生きる未来を。その為に選んだ道は、私とは違ったようだけど」
「……俺は、お前と出会って救われた。きっとあの男もそうだったんだろうな。きっと、あの男が必死になる本当の理由は“世界のため”じゃなく、“あの女のため”なんだろう」
「ふふ、分かっていて、『認める』なんて言ったの?」
「ふん、分かっていたからこそ認めたんだ。……突然、何の理由もなく『世界を救おう』なんて大それた事言い出す奴は、俺はまず信じないぞ。……他に何か、もっと身近なものを守るために、その為に必要だから、ついでに『世界を救う』、これが当たり前の考えだ。人間でも、そうでなくともな」
謁見の間で身につけていた服とは打って変わって、透けるような薄絹を纏うライラの隣に半裸で寝そべるアルフレートはニヤリと微笑んだ。
「そも、俺自身がそうなのだからな。……俺も、あの王子殿下に大言壮語を吐いてはみたが、結局のところ、最終的に喜ばせたいのはお前なんだからな」
彼女の頬に口づけを落としながら、アルフレートはその耳元で囁いた。
「あ、アル……」
「――さて、俺の前で他の男なんか褒めた仕返しを、どうしてやろうか……?」
そう、殊更意地悪く、首筋へ執拗に口づけを落とす。
「ええ? 私、そんなつもりじゃ……っ」
「さて、お前がどういうつもりだったかは関係ない。俺が少々不愉快だったという話だ」
くすくすとからかうように喉の奥で笑い、彼女の頬に手を触れる。
そのまま、貪るように深く口づける。
「それに……そうだな、先ほどの席では随分とあてられたしな。……今夜は、たっぷり俺に付き合ってもらうぞ、ライラ」
――甘い、甘い夜はこうして更けていき。そして……
「ンもう、ねぇアルフぅ、誰かイイ男紹介してよォ」
あちらからもこちらからも当てられたリーから、しつこくそう迫られ彼が困ったことになるのは……また、別のお話……だったり。