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第七話

「壱之条さん、植物採取において気をつけることはありますか?」

「まずは、街の外ではいつ化け物や動物・人に襲われるかわからないということです。

植物採取だからと、植物の対策だけすればいいものではありません。

はじまりの街近郊では、大した化け物は出ませんが、動物も襲いかかってくれば脅威になりますし、植物も化け物になることがあります。

何より危険なのは人ですね。

天人の方でも、他人を襲って生活すると言う方も残念ながらおられるようですから」

「PKが出来るんですか?」

「PK? ああ、他人を襲う行為は可能ですよ。襲った後で敵討許可対象になることになりますが、逆にいえばペナルティはそれだけです。

他人よりも強くあり続ければ、襲っても反撃されないということになりますね」

「それは、問題にならないんですか?」

「一般人を襲うのであれば、秩序の神社が動き出すでしょうが、天人内部のことにまでは手を出しません」


 要は、お客さん同士のトラブルは自分で解決してねと言うことなのですね。

でも、敵討許可扱いとなるからには、ペナルティが無いわけではないと。


 私は戦闘能力の鍛錬が10日分座学に費やしている分劣っているのも確かです。

襲われないようにしたいところですね。


「町を出るものは、手形を発行するので順番に並ぶように」


 関所を通るのには手形が必要になるんだそうです。

それは一度街から外に出て中に戻る時も同様で、往来手形の発行を受け、予定内に戻って来なければいけないとか。

城主に発行された朱印状と往来手形を交換します。

朱印状は、台帳とセットにすると一致するように印が押されていて、往来手形を発行されるにふさわしいかどうかを判断してもらえるようになっています。

流石に魔法がある世界だけあって、朱印状を領主さまの元にある台帳と照合するのは一瞬で終わるそうですが。

朱印状は、組合の階級や神社の信者レベル等も書かれるようになって言えるという意味では、身分証明書に近いものかもしれません。


 日帰りで素材収集を目的に街の外に出る旨を街の入り口の関所に提出し、往来手形を発行してもらいます。

昔、林間学校で行った箱根の関所を思い出しますね。

入り鉄砲出女でしたか、色々厳しいんですね、と子供心に思った記憶があります。

そういった厳しさはこのゲームにはなさそうですけど。

……歴史講座・常識講座で習った限り、鉄砲はまだ無いようですし、大名の家族を人質にとってと言うレベルの勢力自体がいないという意味で。


 往来手形の文面は、古典のような文章ですね。

正直文章も読み切れませんが、おおよそのことはわかります。

言語的なことを学んでいけば、読めるようになるんでしょうか。

是非読んでみたいですね。


 街を出て林に向かいます。

この林は、初心者向けらしく、他にも人が結構いました。

一気に大量に手当たり次第抜いては籠に入れる人達が大勢いますね。

少し声をかけてみることにします。


「必要なものだけを持っていくわけではないんですか?」

「なんでそんな面倒なことをするの? 必要かどうかはギルドが判断してくれるんだから、俺達はこの場の植物を一気に採取するだけだよ」


 ……ううん、これやりすぎると草も生えなくなりませんか?

やりすぎると街の人達に悪印象もたれるのではないか?と心配になります。


「はあ、そうなんですか。ただ、あまりやりすぎると、自然破壊になりませんか?」

「何言ってるの。ここは電子世界なんだから、自然じゃないんだよ?効率よく済ませるのがゲームというもの。

ああ、ロールプレイングを大切にしたいのかな?でも、初心者のうちはそんなこと気にするだけ損だよ?」

「そういうものなのですか」


 ちょっと納得いかないものもありますが、他の人のやることをとやかく言う程の知識があるわけでもありません。

ただ、私の感情は納得できませんので、事前にメモしておいた情報を元に事典と比較しながら採取して行きます。


システム情報:兎とエンカウントしました。


 暫く経って兎とエンカウントしたとのメッセージが出て、兎が襲ってきました。

兎程度なら動物園でも触ったことがあると思っていたのですが、倒すとなると意外に難しいです。

戦闘知識を活かして、兎の機動力を殺すべく、足を狙って攻撃しますが、そもそも部位狙いとなると当たりにくいようですね。

まずは攻撃を当てることに専念しましょう。


イツミの攻撃。

 スカ。

兎は、イツミの攻撃を避けた。


兎の攻撃。

 スカ。

兎の攻撃は外れてしまった。


兎の攻撃。

 スカ。

兎の攻撃は外れてしまった。


兎の攻撃。

 スカ。

兎の攻撃は外れてしまった。


イツミの攻撃。

 スカ。

兎は、イツミの攻撃を避けた。


敏捷を低くした弊害が出たようで、私が一回動くタイミングで兎は何度も攻撃してきますし、

私の攻撃を兎が避けてしまいます。


 延々と続くかに思われましたが、何とか兎を一匹倒しました。

これだけで、体力を使いきるかと思いました。

実際時間だけでも一時間近く戦闘に費やしていた扱いになってますし。


 結構怪我もしたので、今日の所はこの素材を持って街に戻るとします。

街に戻る途中、壱之条さんから、


「システムメッセージを確認してください」


 催促され覗くと、レベルアップのお知らせが来ていました。

経験値が入ったことで、初めてのレベルアップとなったようです。


 レベルアップしたことで、スキル上限が一つ増え、天分がどれか一つ0.5上げられるようになりました。

また生命力や魔法力がレベルボーナスで少し上がりました。

天分上げるポイントは今使うこともためて使うこともできるようですが、どうしましょうかね。

今回のことに懲りて敏捷力を高くすることが必要そうですが、装備を持てる量を考えると、体力も上げたい。

次のレベルアップまでためると言う方向でとりあえず行きましょうか。


 スキル上限が上がったことで、一つ余裕が出来ましたが、今の所覚えたいスキルと言うのもないですし、今あるスキルを成長させる方向で行きましょう。

そこで気付きました。

既存のスキルのレベルも上がっています。


植物学3Lv→5Lv

動物学3Lv→4Lv

戦闘(初心者)→4Lv


 動物と戦ったことでそれぞれレベルが上がったのはわかりますが、採取で一気に5Lvになるとなりますと、

講座を受けるよりも実地訓練の方がレベルが上がりやすいんですかね。

折角10日間頑張ったのにとも思いますが、壱之条さんから、


「一度取得したスキルは成長させやすいです。ですが、取得することが大変なスキルが多いです。

それを講座と言う形で取得できることが、寺小屋のメリットですね」


 スキル取得にはいくつかの手段があるもののその条件が結構厳しいということなのでしょう。

組合で商取引のスキルについて羨ましがっていた方のことを考えれば、取得の条件が厳しいもしくはわかっていないスキルを

講座を受けることで取得できるメリットと言うのが大きいのかもしれません。


 関所で往来手形を渡して朱印状を返していただきます。

関所で聞いた話では、街から街へ移動する場合は、そこまで朱印状が魔法で転送される為、往来手形を提出すれば元の朱印状が受け取れるんだそうです。

往来手形と朱印状が必ずセットになるとのことですから、結構しっかりしたシステムですね。


 冒険者組合に行き、素材に見合った勘合札を持って行き、受付に提出します。


「おや?鑑定を受けてないのに、全部依頼の素材で揃えておられますね」

「ちゃんと調べて行きましたから。そう言われるとなると、鑑定を受けずにと言うのはそんなに珍しいんですか?」

「ええ、天人ではない冒険者であれば決してそんなことはないのですが、天人の方は根こそぎ採取してその中で必要なものを提出すると言う方が多くて、組合で問題視されています」

「問題視ですか?」

「ええ、天人の方々のなされることなので、我らの常識と多少外れることがあるのは覚悟しておりました。

ですが、限度を超えているのではないか?と言う話が出ているのですよ」

「やはりですか」

「やはりとは、巫女様も思う所があるのですか?」

「巫女様はやめてください。えっと、私は、事前に素材の植物について調べて行ったのですが、

現地では鑑定してもらえばいいのだからと言われている方々がお会いしまして。

それが当然と言う言われ方をされて納得のいかないものを感じつつも、事前に決めた通り、必要なもののみを採取をしてきました」

「やはり現場ではそんな感じなのですね?今はまだ、そこまで問題になってはいませんが、今後を考えるとトラブルになるかもしれませんね。

巫女様はくれぐれもご注意を」


 あまりに巫女と言うイメージが強いのでしょうか。

でも、現地の人とプレイヤー達がぶつかるのは避けたいですけど、難しいんでしょうね。

ゲームとして考えるなら、あのプレイヤー達の言い分にも理があるようには思いますから。

ただ、私自身は、AIをAIだからと切り捨てずに交流をしていきたいかなとは思います。


 ゲームでもあるんでしょうが、リゾートでもあるんです。

人々ととの交流も楽しまなきゃ損だと思いますし。

素材も結構な値段で引き取ってもらえましたし、街に出て店に行く等してみましょう。

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