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第四話

「はじまりの街にようこそ」


 こういうゲームではありがちなはじまりの街に来ました。

ファンタジー世界で、共通語は日本語だと聞いてはいましたよ。

聞いてはいましたが、まさか、時代劇に出てくるような街並みが続いているとは思わないじゃないですか。

長屋が続く街並みに、着物を着た町民たち。


「隣の家に垣根が出来たってね」

「へぇ、かっこいい」


 なんて、リアルに話してます。


 チュートリアルキャラクターの壱之条さんが和服を着ていた時点で想定してしかるべきだったのかもしれませんが、

普通ファンタジー世界と言ったら、西洋風ファンタジーを思うじゃないですか。

想定外にも程があります。

そう言えば、先ほどスキルを学ぶ場所が寺小屋と言われてましたっけ。


 街の真ん中には城が見え、白い煙に覆われて天守閣が雲の上にある城のようです。 

気がつくと私が来ている服も、黄色がメインの浴衣に近い着物になってます。


「ここは、和風の世界なんですか?」

「和風?どう言うことでしょうか。ああ、天人世界の認識では和風になるのですね?」


 チュートリアルキャラクターぐらい、現実世界の常識に見合った言動をしてほしいものです。

ゲームに疎い私ですら、ファンタジーと言われれば西洋ファンタジーと思うものですから、ゲームに慣れている人達は余計混乱するんじゃないでしょうか。

それとも、ゲーム用語でファンタジーは、和風ファンタジーなんでしょうかね。


 衝撃が大きいとはいえ、慣れるしかありません。

郷に入らずんば郷に従えです。


「で、壱之条さん、まずはどこに行くのがお勧めですか?」

「まずは、一通り施設の案内をします。まずここが、はじまりの街のメイン通りとなる、金座大路です。

金の取引から大きくなった通りで、店が色々あります。今はまだありませんが、天人の方も規定のお金を出し、有力者の推薦を受ければ、店を出すことが出来ます」

「有力者の推薦ですか?」

「ええ、言い方を変えますと、有力者の方の保証ですね。天人の方は色々習慣が異なるため、トラブルが起きやすいものです。

そう言ったトラブルが起きた際に保証して下さる有力者の方がいないと、店を出すだけの信頼が足りないという話になります。

もっとも、その保証は交渉の持っていき次第ですから、天人の方であれば、そこまで難しいことではないはずですよ」


 天人である私達が、社会的信用が無いのは当然な設定でしょうね。

その信用の無さを補う有力者は自分で見つけないといけないというのは、そこまで無理とも思えません。

それにある程度そう言った付き合いが無ければ、仕入れや販売でも苦労しそうですから、妥当でしょうか。


「金座大路に面する少し大きめな長屋が、冒険者組合になります。この世界での天人は、冒険者組合で仕事を受けることで生活を稼ぐ方が多いですね。

冒険者には階級がありまして、初めはすべての方が、いからはじまります。経験や貢献を積むに従って、

ろやはになります。最高階級は、んですが、そこまで達している方は史上におられません。

階級が上がれば、依頼を受ける際に依頼人に信用されやすくなり、社会的信用が上がり協力してくれる方が増えます。

報酬等は増えませんが、階級が低いと受けても依頼人から替えるように言われてしまうことがありますので、階級が高い方が良いことが多いでしょうね」


 いろはの順番に階級が上がって行くのですね?

48にも分かれているとなるとそう簡単には、んにまではなれないでしょうね。

でもこう聞くと、階級が上がると知名度も上がると言うことで、階級が低ければ許されることでも、

階級が高くなると許されなくなると言ったことも起きそうです。


「ここが、寺小屋になります。

学問の神の神社でもあり、天人の方はここでスキルを学んだり、天人として優れた思想や技術を人々に教えていただく場でもあります。

また、学問の神に入信することで僧侶となることもできます。

僧侶は、神聖魔法の使い手でもありますので、そう言った方向に進まれるのでしたら、宗派を見極めたうえで入信されることをお勧めします。

宗派に入ったり退会したりするのは自由ですが、あまり繰り返す方は社会的信用が得られにくくなりますし、信者階級がありますので、

退会するとそれが白紙になってしまいますしね」


 寺小屋では、色々学ぶことが多そうですね。

学問の神に入信するかは、まだ保留です。

他の神様がどういうものがいるのかを見極めたいのもありますが、私は僧侶よりも魔法使いをやってみたいと思うんですよね。

勿論、僧侶も魔法は使えるようですけど。


「ここが、尾山文庫。所謂図書館になります。

さまざまな知識の宝庫ですし、天人の方が著作を納めることもできます。新たなる知識の担い手として、多いに役立てていただけたらと思います」


 知識の宝庫ともなると、この世界の知識をさまざまに学べるということですね。

以前読んだ冒険物語で、図書館で知識を学ぶことで特殊なスキルを得ているものがありましたから、侮れないと思います。

何より、司書さんとかやってみたいですよね。


「ここが、秩序の神の神社です。この街の治安維持や火消しと言ったことを担っています。

この街の城主、大弐 義朝様もここの信徒として頑張っておられます」


 和風ファンタジーだけあって、警察や消防も神社が担っているのですね。

歴史的にそういった時代はないとは思いますが、これはファンタジーだからいいのでしょうか。

そういえばと、


「神様の名前はないんですか?」

「神様の名前?不思議なことを言われますね。

秩序の神は秩序の神と言う名前ですし、学問の神は学問の神と言う名前ですよ?」


 役職名がそのまま名前になっているのですね。

神道なら、天照大明神みたいに個別の名前がある筈とも思いましたが、特定の宗教の神様を出すことが、信教の自由に反する等難しい所があるのかもしれませんね。

飽くまで和風ファンタジーとするだけであるならば、固有名詞を出すことはないわけですし。


 それから、愛の神・産業の神・創造の神・戦闘の神の神社を回り、神についてや神社の役割についてを学びました。

神様は、従属神を含めると八百万柱程いるとのことですが、大きな神社がある神様は、今回まわった神社の神様であるとのことです。

なかには、貧乏神や厄病神を祭ってある神社もあるとのことですが、参拝する人いるんでしょうか?

もっとも、崇め奉ることで、その厄が及ばぬようにする信仰とのことですが。

……でも、厄病神の大神官なんて人と会うとなったら、逃げ出す気がします。


 一通りまわった後、領主城に連れて行かれます。

雲に覆われた城と言うことで、すごい高い所にあるのかと思いましたが、白いものは実際は霧でした。


 そのまま領主に謁見となるのかと思いましたが、最初に連れて行かれたのは、アバター登録所でした。

なんでも、今までの姿は仮の姿であり、本来の姿が必要とのことですが、普通はキャラクター設定時にやるものではないんでしょうか。

ただ、和風な世界観を見せつけてからと言うからには、空気を読んでくださいねとも受け取れます。


 容姿に特にコンプレックスなどはありませんので、リアル顔をそのまま登録しようとしましたが、プライバシーエラーではねられました。

面倒ですねとは思いましたが、少し茶色がかった髪の毛を黒くして長髪に変えることで、エラーを回避しました。

服装も、街並みのことを考えて和服と言うところでしょうけれど……


 以前、お正月に巫女のアルバイトをしたことがあると言うことで巫女の恰好にしました。

一応は、巫女の作法も学びましたから、それらしい行動が出来るかな?と言うのもありましたし、

十二単は動きにくそうなんて思えたんですよね。

昔の女官さんは体力あったと思います。


 空気を読むなんて考えるべきではありませんでした。

謁見の間に赴くと、髪の毛やは肌の色は多種多様。

服は洋服や、西洋風鎧、果てはビキニアーマーのオンパレード。

意外に男性が少なく女性が多いようですが、最初の空間で性別を選べたことからすると、男性が女性をやっている例も多いんでしょうね。

それでも、和服を着ている人等ほとんどおらず、黒目黒髪で巫女服を着ているなんて、私だけでした。

空気を読むなんて考えたせいで、見事に浮くことに。

その空気を察したのか城主様まで、


「天人の巫女とは珍しい。お見知りおきを」


 声をかけてくる始末です。

流石に不意打ち過ぎて何の用意もしていなかった私は、


「いえ、巫女と言ってもお正月のアルバイトでやったことがあるだけです。

作法は、多少は知ってますがそれだけです」


 素で発言してしまう。


「アルバイトで巫女をやったことがあるだと?となると、彼女は中身も女性と言うことになる」

「いや、これは孔明の罠だ。そういう設定にすぎないかもしれない」

「それもそうか。それに、女性と言っても、元女性のおばちゃんの可能性もある!」

「なんですって、おばちゃんで悪かったわね!!」

「ぎゃあ、お許しを」


 一気にカオスと化す謁見の間。

しかし、ちょっとしたことでもプライバシーが漏れ出してしまうのだと改めて認識します。

関係ないようなことでも、想像することでしっかり結論を出すことが出来るのですね。

今度から気をつけないといけません。

そう考えると、アバターももう少し変えておいた方が良かったかもしれませんね。


 コホン。


 城主様が咳払いをされました。

確かに、この喧騒状態は城主に対する謁見にふさわしくはないものです。

でも、引き金を引いたのは城主様の気もしますけどね。

ただ、貫録があるだけあって、一気に静まり返る謁見の間。

そして、城主様は語られ始めました。


「某は、はじまりの街の領主、大弐 義朝と申す。お見知りおきいただければ幸い。

此の度は、天人の方々にご降臨いただき、誠に大儀。

であるものの、この人数が一度に降臨されたことは史上例が無いものですので、ご不便をかけることになりましたら、申し訳なく」


 堂々と話されながら、この世界についてや私達天人の立場、当座の生活についての話をされました。

とはいえ、長いこともあり、途中で寝始める方が多数出ていました。

私は、つまらない授業を聞き慣れている学生としての強み、精神力をそれなりに高くしたことで、しっかり聞ききることが出来ましたが、

周りのいびきが凄いことになってます。

自分達の生活についても話されているのに、大丈夫なのでしょうか?


 もっとも、ゲームでありリゾートですから、ちゃんと、システムでご城主のお言葉と言うアイテムが入っておりました。

必要な内容を必要なだけ再生できるとのことで、その場で聞かなくても大丈夫になっているのですね。

それがゲームに慣れている人には当たり前になっている為に、みなさん寝ておられたということでしょうか。


 城から出て、用意された宿舎に向かいますが、あれ?皆様迷子になっておられますような。

不思議に思いながらも宿舎に着き、明日からの生活に備えるべく、夕食を食べてから思いにふけるのでした。



……寝ていた人はペナルティで、中途半端に虫食いの言葉が並ぶアイテムになっているそうです。

他人のアイテムは見られないので何とも言えませんが、ちょっと意地悪なんですね。

それを教えてくれた人には、私のアイテムの内容を教えておきましたけど、メモを取る道具が無い為に、四苦八苦されてました。

そういった文房具も揃えないといけませんね。

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