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第四十五話

 邪馬台国から美濃に戻ってきました。

とはいえ、今回は残務処理がメインとなります。


 ゲームクリアーされてますので、プレイヤーが減る一方の状態で、新たなことを始めることなどできませんし、そもそも期間自体残り少ないですからね。

どうしても、世話になった人への挨拶や、今後はどうすればいいかの指針を伝えると言ったことが中心になってしまいます。


 そうと分かっているなら、初めから割り切って行動するのが得策と言えるでしょう。

中にはこれから新規依頼に挑戦すると言うチャレンジャーの人も居るとは思いますが、私はそこまで冒険的にはなれませんね。


 美濃~越前街道につきましては、今の道の維持方法について、依頼主達と相談します。

もうすぐ私達は天に戻ることを伝え、今後の方策を考えてほしいと依頼します。


「天人の方々は天に戻るのが定めではあると聞きますが、まだ早いのでは? と言ってしまいたくなります。とはいえ、天人様達には天人様達の都合があることも理解しております。今までありがとうございました」


「私達もまだ続けたいとは思いますが、戻らなければならぬ時が迫っております。申し訳ございませんが、今後はこの地の人々によって続けてください。そのための方策として、いろいろ考えております」


 引き継ぎは順調に進んでいます。

元々、私達自身無理にいろいろ手を広げなかったこともありますし、依頼する側も天人はいつか天に戻ると認識していたと言うのも大きいですね。

あ、天に戻る=ログアウトをするということなんですよね。

ちゃんと、世界観の中でログアウトについて表現が用意されていることを知り、雰囲気的にもあっているので多用させてもらっています。


 美濃の国内では、産業の神の神社にも顔を出し、今までのお礼と今後についての激励をしていきます。

私達が関わることは出来なくなりますが、ゲーム世界の人達の営みは今後も続いていくことでしょう。

その営みが滞りなく行けることを願います。

いろいろ困難もあるでしょうし、その時には私達みたいな存在を待望することもあるかもしれません。

でも、そこに生きる人達自身が解決しなければいけないことも多いでしょう。

そのことについて、激励してみたくなるんですよね。


 もっとも、新たなゲームが始まってこの世界に天人と言う名のプレイヤーがまた来ることもあるかもしれません。

その時に、こういうことをされた人達がいたなんて言ってもらえると、嬉しいですね。


 美濃の残務整理を終え、飛騨に出向きます。

飛騨では、黄金の里に行き、言霊魔法について開発した知識を里の方に伝えます。

無論中には既に開発されているものもあるでしょうが、少しでも隙間を埋められれば嬉しいですね。

私達プレイヤーの間ではそれなりに言霊魔法は広がりましたが、プレイヤー以外の人達にはほとんど知られていない魔法です。

黄金の里が今後も管理して行くということなのでしょうが、存在そのものは実際に見たと言う人が多い以上伝説がまた大きくなるのでしょう。

黄金の里は今後も隠れ里として存続していくのだとは思いますが、金脈の存在と言い、いろいろトラブルメーカーになりそうですね。


 それでも、この世界の人達同士の知恵や実力でもって解決していけるのでしょう。

悲劇が起きることもあるでしょうが、少しでも幸せになる人が増えることを祈ります。


 黄金の里を後にして、信濃のはじまりの街にと赴きます。

いろいろ世話になった人も大勢いますし、思い入れも深い場所です。

旧交を温め、別れを惜しみます。


 私が穴を掘って埋める修行をした産業の神の神社に赴き、あの修行の苦しさを思い出しますが……二度とやりたくないと言う思いのほうが大きいのは、ご愛敬でしょうか。


 街の傍の森は、神の奇跡があったこともあり、私達が初めて来たとき以上に深い森になっています。

今なら素材収集依頼で多少荒れても、無尽蔵に素材が得られそうな気はしますね。

もっとも、数の暴力の前にはすぐに屈しそうではありますが、今後はそうならないように冒険者長屋でしっかり説明をしてあげて下さいと依頼しておきます。

今回のことが教訓として活かされる世界となるかはわかりませんが、自己満足ぐらいはしておきたいですし。


 一通り、思い出に浸って現実に戻る覚悟が出来てきました。

ゲーム時間も後数日しか残っていません。


 残りの日付がゲーム内でわかるようにするとはなってましたが、夜空の星で後何日と読めるようになると言うのは、それはそれでどうかと思います。

夜になると見ることが出来るのはわかりやすいと言えばわかりやすいですが、星で文字を書くのは、ちょっと雰囲気ぶち壊しでは? なんて考えてしまいます。

もっとも、残り一カ月を切ってからの措置ですからわかりやすさを優先したと言われればそこまでですけどね。



 思い残すこともなくなった、私達は、システムを起動しました。

そして、ログアウトボタンを押したのです。

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