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第三十七話

 再び美濃に戻ってきました。

領域は広がりましたが、伊予で活躍した元ニートプレイヤーが活躍したことを知って、もう一度頑張ろうとするプレイヤーが増えたこともあって、美濃も一時の数少ないプレイヤーで依頼を無理やり回していた時が嘘のように活況を呈してきました。


 伊予のボス戦で活躍したプレイヤーは業が下がったこともあり、私達が元請けにならなくても直接依頼を受けられることが増えています。

正直これは嬉しいですね。

直接依頼を受けてくれることで、彼ら本人の名前での活躍が功績になるわけですから。

結果、階位の再上昇を始めた方もいます。

残り期間を考えれば、階位はそこまで高くならないかもしれませんが最低階位を脱出したバケンさんが出たのは、他の方にとっても大きな希望になる筈です。

思わず、依頼参加で抜けられないプレイヤー以外は総出で階位が上昇したプレイヤーを祝う会を開きました。


「敵対して戦闘をしたこともある俺のために、こんな場を用意してくれるなんて……みんなありがとう」

「いや、こんなめでたいことを祝えるのは、私達のほうが嬉しいんだって。この前のボス戦の報酬は運営グッジョブだったね。こうして階位が再上昇する人が増えてくれれば、私達自身も自分の追っている依頼に専念できるし。そう考えたら、祝わずにはいられないよ」

「そうか。でもありがとう。戦力として見てもらえることが嬉しい。自分でもう活躍が出来ないと思ってしまっていたけどちゃんと頑張れば出来ることがあるんだな。俺が間違っていたよ。本当にありがとう」

「祝いの場なんです。難しいこと考えずに盛り上がりましょう」


 やっぱり、ゲームに参加しているからにはみんなが楽しく遊べたほうが良いですよね。

そしてそれが私達自身の利益に直接つながるわけです。

祝わない理由はないですからね。

もちろん、一連の事件に巻き込まれて死亡したNPCの遺族達からすれば許容できない思いはあるでしょう。


 ただ、知らない他人よりも自分達の利益のほうが大きいですからね。

酷いことをした相手だと言うのはわかっていますが、今回のバケンさんが直接は手を下していなかったというのも大きいかもしれませんね。


 バケンさんは、はじまりの街から逃走後、目的もなく惰性で盗賊と化したプレイヤー達と一緒にいたので捕まって、諏訪の牢獄で捕らわれていたところを死に戻すために放火されて焼死したという同情の余地がかなりある人です。

勿論、盗賊の一味ではあったわけで、犯罪者だったとは言えると思います。

 それでも呪詛や逃げられない状況で身体を燃やされる恐怖の後の死に戻りのことを考えれば、止めなかった罪や人数要員であった罪の刑が執行されたと認識しても良いかもしれません。


 ま、私達の勝手な感想でそれを遺族たちに押し付けるものでもないのは確かです。

でも、その経緯を知った依頼主が、そういう人ならと直接の依頼を出したという面もありますからね。

バケンさんはある意味例外と言っていい面がないわけではありません。


 それでも、バケンさんに続く人が現れれば、より頑張るプレイヤーが増えるかと思います。

もっとも、実際の行為をしていた人、特に諏訪の牢獄をNPCもろとも焼いたプレイヤーはそう簡単には許されないでしょうね。

と言うより、流石にそこまでやった人達は同情の余地皆無ですので、私達も基本相手にはしていません。

下請けに出すにしても、いつ変なことをやるかわかったものじゃないですから怖くてできません。


 その意味じゃ、運営もデータを保存しておいて、警察に要注意志向を持つ人物だと情報提供しても良いかもしれませんよ。

いくら仮想世界の人物とはいえ、巻き込んで殺すことをためらわないなんて人格の持主は、余り社会に大っぴらに出てほしくありませんし。


 まあ、考えるだけじゃ罪じゃないんでしょうけどね。

実行と言っても、所詮は仮想現実での話です。

でもちょっとは対策とってほしいと思います。


 勿論現実では踏みとどまる理性の持ち主だからこそ、仮想現実でははっちゃけているって可能性もあり得ますけど。



 美濃越前街道の交通量がより増えてきました。

美濃が一時信濃方面との交通が遮断されたこともあり、信濃方面に隊商を出していた商人が代替市場として越前に進出したことも拍車をかけています。

信濃方面の街道が再度通れるようになった今も、新規に市場を開拓した越前を捨てる理由にはなりません。

越前のほうが利益になる産物を美濃に持って帰れることも大きいらしく、活況を呈しています。

もっとも、信濃も復興需要があるので両方で儲けて、商人たちの笑いが止まらないようですが。


 交通量が増えたため、本格的な改良計画が現実化します。

言霊魔法で一時的に足場を組み立てて、その足場を元に本格的な工事をしてもらうということを始めました。

この程度の魔法は、ヨークさんやカオリーヌさんも使えるようになっていますから、分担して足場を一気に組みあげます。

石で道の下の土台を固めて重い荷物を積んだ荷車でも安全に通れるようにしていきます。


 勿論、自然の風化作用に対してはこの程度のものでは時間が経てばまた壊れ始めるかもしれません。

でも、一から作るよりは、維持管理が楽なはずです。

長期的には再度作り直す必要もあるでしょうし、落石を防ぐ術はありませんから、整備依頼は出続けるでしょうけどね。


 コンクリート吹きつけが使えればいいでしょうけれども、この世界ではオーバーテクノロジーです。

せめて、定置網漁で使う網を落石防止ネット代わりに出来ないかとも思いますが、気休めでしょうね。

やらないよりはましだろうと、提案はしますけど、実効性はそこまで高くないと事前に伝えておきます。


 ただ、越前側は資材提供に積極的でしたね。

自分達が便利になるうえに、網の需要が出来るわけです。

沿岸部の網作りを生業にする人達にとっては仕事が増えるわけで、越前にとっても市場拡大のチャンスなわけです。

話は一気に進みました。


 そこにボス戦の集合依頼が豊後からかかりました。

みんな、次のボスは九州初めて開いた豊後だろうと集中的に探したこともあって、その見込みが当たり割と早く見つかったようです。

私達も、豊後に移動するとしましょう。

豊前と豊後を間違えていることに気付き、訂正しました。

普段豊前のほうが良く使いますが、大分は豊後でしたね。

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