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第二十四話

「ささ、一杯」

「いえ、流石に飲み過ぎです」

「そう言わずに」


 飛騨国国主様主催の宴に参加しています。

もっとも私は未成年ですから、酒に見せかけたジュースなんですけどね。

オンライン上で飲酒も何もあったものじゃありませんが、その辺は規制が厳しいようです。


 一緒に参加しているヨークさん達は成人しているので飲酒可能とのことで、顔が真っ赤になってます。

飲み過ぎとは言ってますが、気分……というよりも、お手洗いが近くなるので避けたいんですよね。

実際に行為をするわけではありませんが、厠に行かないと行動にペナルティが入る上に、感覚だけは感じる羽目になります。

こんな再現しなくて良い所を再現することに何の意味があるのかはわかりませんが、技術力ありますよね。


「神子様、言霊魔法を習得されたとのこと。どのように使われるおつもりですかな?

「基本的には公開しますが、あまりに危険と思われるような呪文は、どうするか要相談と言うところでしょうか」


 あれからまた少し学んだことで、効果の調整程度はできるようになっています。

その結果、アレンジして、副次的効果を出すと言った工夫をする段階になっているんですよね。

その場所の空気をなくす効果を産みだすことで、かまいたちを発生させる的なことですね。


 でも、その副次的効果が想定外のことをうみださないとも限りませんからね。

言霊魔法は、発音さえしっかりしていれば発動しますが、逆に言えば少しずれるだけでことなる効果になったり、全く効果を発揮しなくなります。

偶然発生した音ずれ呪文でとんでもない効果を発揮しないとも限りませんので、その辺は何とも言えないんですよね。

その辺のことまで管理するのは不可能ですし、する気はありません。

あまりにも問題ならば、運営が何とかするでしょう。


 自発的に開発した際に封印すべきかどうかについては、ヨークさん達にまず相談して、スポンサーになっていただいた飛騨国国主様に相談と言う感じでしょうか。

まあ飛騨国国主様に相談すると言っても、その場合は手紙がメインになりそうですけどね。

基本的に私達プレイヤーは、諸国を旅する形になりますし。

蝮語の勉強も始めたので、美濃にも行きたいですし。

この前のボス戦で、信濃の隣の隣の国に行けるようになりましたので、行動できる範囲が一気に広がりましたし。

西は近江から、東は陸奥出羽まで行けるわけですから。

折角の機会ですから、色々行ってみたいですね。


 あ、そうそう、黄金の里はまた選ばれた人のみが入れる里として復活するようです。

里でとれた黄金を飛騨各地に配ることで、大地震から十五年という歳月が経っていたこともあり、他の飛騨の方も黄金の里を受け入れる方向になったようです。

元々封印していなければ、もっと酷い被害になっていた可能性もあったわけで、黄金の里が避難されることでもないんですけどね。



 まずは今の所行き止まりである越中に行ってみます。

越中が行き止まりと言っても越中の東の越後は一回目のボスの後にはいけるようになっていますので、袋小路と言うほどではないんですけどね。

日本海が見てみたかったと言うのもあります。

リアルでも、太平洋側の住民ですので、余程の用が無ければ日本海なんて見ることありませんし。


 越中の言葉はまだ使えませんが、別に日本語で会話できますしね。

神語という言葉が路語の派生語として表示されていますので、覚えようと思えば覚えられるのですけど、あまりたくさんのことを並行して覚えられるほど器用ではありませんので、

必要になったら覚えると言う方向で。


 路語の時と違って初めから必要と言うほどでもないですし。

越中はちょっと行ってみて、蜃気楼でも見てみようと言う感覚であることが大きいんですけどね。


 そんな感じで物見遊山にやってきました越中。

蜃気楼が目的なので、大道を目指します。

越後に抜ける気はありませんので、そこで折り返すのですが。


「うわ、これはすごい。本物も見たことあるけど、こっちの方がよりすごい感じ。平屋建てが当たり前の時代にこんな高い建物が海の向こうに見えていれば、幻想的と言われるわけだよ」

「凄いですね。見に来た価値がありました。実際の蜃気楼は見たことありませんが、こんな感じとなると、今度実際にも見に行ってみたく思います」

「ここみたいに、いつ来ても見られるわけじゃないから気をつけてね?」

「そうなんですか?」

「基本的には、春から初夏の現象だから。ここみたいに、一年中見えるわけじゃないよ」

「あ、そうなんですね」


 少し賢くなった気がします。

実際に行く時は、春休みやGW辺りに狙って行く方がよさそうですね。

蜃気楼を思う存分味わった後は温泉に行こうと言う話になりましたが、明治に開発された温泉等は流石に出てきません。

地獄谷に温泉はあるようですが、流石にそこまで行くとなると登山の準備が必要ですし、それ以前に源泉があっても入れる状態とも思えません。

戦国時代は、隠し湯的なものはあっても大衆が使う温泉と言うレベルはそこまでないイメージありますしね。

江戸時代も混ざってる筈ですから、この世界はそうでもないかもしれませんが。


 温泉はまたの機会にと言うことにして、越中をのんびり歩きまわります。折角だからと能登の国境に行きどういう風に出られないのか?と見に行きましたが、純粋に透明な壁があって進めない感じです。

恐らく、黄金の里に入れない結界と言うのも、こんな感じなんでしょうね。

世界が天人が入ることを許していないから入ることが出来ないと言った感じなのでしょう。


 越中を満喫し飛騨に戻ります。

国府山で国主様に挨拶をした後で、黄金の里に向かいます。

黄金の里には、追放されていた村人も戻り始めたようです。

流石に犯罪者になった人は、受け入れていないようですけどね。


 あの廃道は冒険者を呼び寄せた時に応急的に改修していましたが、本格的な改修を行っているとのことです。

荷車を通すには道が必要ですし、結界外は里以外の人を人足に雇っているとのことで、公共事業的なことになっているようです。

里から賃金が支払われることで、里以外の人達も経済的利益が得られる存在として歓迎すると言ういい流れになっているようですね。


 良質な金山で富を得られる黄金の里だからこそできることとはいえ、平穏が戻ることを願います。


 さ、次は美濃に向かうとしましょう。

蝮語のレベルも上がっていますし、日常会話ぐらいは蝮語でやって行きたいところですね。

美濃は豊かな国ですし、色々依頼を受けるのも良さそうですね。

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