第九話
「魔法ですか?」
「ええ、常識の講座でも出てきましたし、関所でも使われてましたよね。
魔法を取得してみたいんです」
「魔法を習うと言っても、系統ごとに様々な方法があります。一番簡単なのは、道具魔法でしょうか。
魔法の発動体となるアイテムを装備すると使えます」
「そんな簡単に使えるんですか?」
朝になりましたので、壱之条さんに魔法の習得方法を聞いてみたところ、意外と簡単なようですね。
「もちろん、欠点はあります。道具魔法は、道具に込められた魔法しか使えませんし、通常一つの道具につき一つの魔法しか使えません。
ごく稀に複数の魔法が込められていることもありますが、そういった道具は非常に高価な値段で取引されますね」
……でもありませんでした。
それでも、戦闘の補助に使う等使い道は多そうです。
「後は代表的なものだと、陰陽術や神術があります。
基本的には、どちらも力を他者から借りることになるのですが、陰陽術が、陰陽五行の力を利用するもの、
神術は神の力を利用すると言う違いがありますね。
陰陽術は、はじまりの街には無いのですが、よその街に行くと陰陽寮がある場所がありそこで学ぶことが出来るかもしれません。
神術は、神社で信者になり修業をすると身につけることが出来ます。
それ以外にも魔法はありますが、有名どころは今あげた三つですね」
陰陽術は、この街から出るのも苦戦しそうなわたしには向かなさそうですね。
神術が狙い目ですか。
でも、ただでさ巫女の恰好をしているのに、神術使った日にはちょっと……狙ってやっていると思われるのでは?と言う気がしてしまいます。
「他の魔法もあるんですよね?」
「ありはしますが、伝説上の存在に近いものになりますからね。
それこそ、文献をあたって読んで調べるレベルになりますよ」
「文献となると、読むのは難しいのですか?」
「比較的簡単に読む方法は、文庫にいって読むという形ですね。
このはじまりの街だと案内しました通り、尾山文庫があります」
ああ、図書館で読むと言うことですね。
では今日は、まずは図書館に行ってみましょう。
依頼を受けて階級を上げることも行った方が良いのでしょうが、まずは魔法で戦う手段を手に入れないとですね。
……文庫って、現地語等、読めない本が多いのですね。
共通語である現代日本語の文献は殆どなく、まずはさまざまな言語を習得してからとなりそうです。
気を取り直して、寺小屋で言語を習得しようと適した講座が無いかを受付の方に質問します。
「ああ、それぞれの言語を覚えるには、まずは、言語学を8Lvにあげないといけないよ。
その為には、知力が8必要……は大丈夫なようだね。
8Lvになると、派生スキルが習得できることは、覚えておいた方が良いね」
天分にはそういう意味があったのですね。
となると、今度天分を上げる時には、7になっている器用や知覚を上げることも考えておいた方が良いかもしれません。
スキルレベルを8まで上げられないと派生スキルが習得できないのであれば、大きく影響をするかもしれませんし。
と言うことで、言語学専門講座を受けることにします。
入門の次にいきなり専門は大丈夫でしょうかとも思いましたが、ユニークスキルである言語習得能力補助の効果もあるのか、しっかり理解できています。
十日かけて受けて行く講座のようですので、あいている時間に素材収集に向かいます。
植物学のスキルが上がったためか、昨日よりも事典を見ないでも目的の素材を見分けることが出来るようになっています。
似ているけれども違うものと言った素材を見分けることも出来るようになっていますし、これは便利ですね。
実際に覚えたこと以外のことも理解できてしまうと言うのは、いかにもゲームと言う感じでしょうか。
目的のものをピンポイントに採取したこともあり、予定のものが集まりました。
意気揚々と帰ろうとしていた所で、エンカウントが発生してしまいました。
それまで発生しなかったのにと思いつつも、出てきた巨大鼠と戦います。
巨大鼠と言っても、ネズミにしては大きいという話で、秋田犬ぐらいの大きさなんですけどね。
昨日の兎とは打って変わって、戦いやすいですね。
敏捷を2倍にした甲斐もあったのでしょうか。
イツミの攻撃。
ゲシ。
巨大鼠は、1のダメージ。
巨大鼠の攻撃。
スカ。
巨大鼠の攻撃は外れてしまった。
巨大鼠の攻撃。
ゲシ。
イツミは、1のダメージ。
イツミの攻撃。
スカ。
巨大鼠は、イツミの攻撃を避けた。
まだ、鼠の方が攻撃回数が多いですけどね。
それでも、戦闘時間は昨日よりも大幅に短く済ませることができ、対して傷つくことなく倒すことが出来ました。
経験値も2と兎よりも少ない所を見ると、鼠の方が兎よりも弱い扱いなのでしょうか。
その後も街に着くまでの間に鼠と3回程遭遇し、無事倒してレベルアップできました。
まだ端数の状態ですので、天分は保留。
スキル上限が増えたことで、言語の派生スキルが楽しみになりました。
植物学も6Lvに成長しましたし。
依頼の勘合札を持って受付に行きますと、ろ階級に上がったと告げられました。
まだ一段階上がっただけですが、上がると嬉しいですね。
周りでは、に階級に上がったなどと聞こえてますから、出遅れているのは否めないんでしょうけど。
私のペースがあるわけですし、少しずつ進んで行くのもありだと言い聞かせます。
……私ももっと依頼を受けて、少しずつでも成長めざしませんと。
もっとも、昨日忠告されたようなことにならないようには気をつけますけど。
千里の道も一歩から。
ちょっとずつ進んで行きましょう。




