~ミッションとして~
警察部隊の仕事は、街を守ることは、勿論だが、例えば国同士の戦争が起きたときに選抜され、自分たちで軍隊を持ち、それを指揮することが許されている。前線になることは、まず、なかった。能力試験、実技、この二つから適性検査を行い、自分たちの職務が言い渡される。街の安全を守るもの、政府直属の軍を指揮するもの、そして、現地調査員として地方に派遣されるもの。様々なミッションがあった。
研修から適性検査、すべてが終わったあとに,俺は香港支部のトップに呼び出された。トップの名前は、チョウ・リョウメイ。彼は、俺とは全く違った人物だった。生まれは裕福で、両親は香港に一軒家をもつ大物だった。香港では、一軒家を持つことが金持ちの証であった。トップスターや有名な政治家などは、一軒家を持つのが当たり前だ。何不自由なく、エスカレーター式に香港の警察部隊育成大学校に行き、首席で卒業をした後に、彼は政府直属の軍隊の指揮を経てから、今は支部のトップとして働いている。完璧なエリートだ。俺とは違う。絶望から這い上がる苦労も、彼は知らないのだ。彼は、俺みたいなやつをどのように見ているのだろうか。
支部にどのようなミッションを言い渡されるのか、不安だったが、期待も少なからず、あった。
「よく来たなヤーウェン。」
「はい、よろしくお願いします。」
高層ビルの最上階にある支部の中の、リョウメイの部屋に通された。一礼して、彼と向き合った。彼と会うのは、はじめてではない。一度、大学校の試験管の一人として、会っていた。髭を生やし、がっちりとした身体。年は、俺と十くらいしか変わらないだろう。
「今日は、君に適性と判断された職務を言い渡す。」
リョウメイは、一つの紙を見つめた。俺の全てのデータが記録されている書類だろう。
「君は、本当におもしろいな。」
彼はつぶやくように、言った。
「なんのことでしょうか?」
「君は、遼寧省からわざわざ、ここに来て、異例な優秀な成績で、記録を残してくれた。こんな学生は、本当に稀だよ。なんで、ヤーウェン、わざわざ、ここに来たんだ?」
遼寧省から来たことを、明らかに見下しているのがわかった。おもしろい、経歴か。俺は淡々と話す。
「わたくしは、過去の己を変えたいと強く思い、警察部隊への所属を決意致しました。名声に博され、人々から喜ばれる仕事をしたいと強く思っております。その初心は、いまでも変わること、ありません。」
「・・・なるほどな。過去に良い思い出がないみたい、だな。君はここに来て、正解だった。・・・早速だが、職務を言い渡す。チベットの現地調査員に派遣されることとなった。」
「え・・・?」
俺は、驚いた。この街で働けるとばかり、思っていたが、そういう訳にはいかなかったようだ。俺は、納得することができなかった。
「わたくしは、ここで働くことを強く希望していました。」
「仕方ない、この結果が全てだからな。この命令は絶対だ。」
何も言い返すことができなかった。仕方がない。それに従うしか、ないのだ。
「しかし、なぜ、チベットに?」
「チベットには、国が欲しがる豊富な資源がたくさんあるからな。そこで、最終的には、彼らと交渉を行ってもらうことが目的だ。」
チベットは同じ大陸にありながら、大陸とは呼ばれることのない、不思議なところだった。そのことを考えると香港と似ている。この街は、中国という大きな枠をとても嫌っているから。
「一人でチベットに向かうのでしょうか?」
今日のこの部屋の中には、俺しかいなかった。それは、俺一人で行くことを意味しているのだろうか?
「そうだ。君は、優秀な人材だからな。現地に行けば、警察部隊の駐屯地がある。そこまでは、一人だ。」
「・・・わたくしにできるのでしょうか?」
「それは、君次第だな。でも、わたしたちは君にとても大きなミッションを託した。わたしたちは、とても、期待している。」
「・・・わかりました。期待にこたえることができるよう、尽くしたいと思います。」
リョウメイは頷き、口元だけ、笑って見せた。
こうして、俺は一週間後にチベットへと向かうことになった。
このことが、運命を狂わすこととも、知らないまま。




