~歴史に刻まれた、願い~
金融街として、重要な役割を果たし、数多くの超高層ビルが立ち並ぶ。中国を代表するグローバル都市、香港。ものすごいスピードで進化を遂げていった街だ。きっと、誰もがこの街に憧れ、集まろうとするだろう。
俺もその一人だった。遼寧省という田舎から、ここまでやって来た。この街に来た大きな理由は、警察部隊に憧れていたから。警察部隊というのは、中国の主要都市である北京、上海、そして香港にあった。警察部隊に入ったものは、都市のエリートとして敬われ、金に困ることもなかった。
その名声を博するために、警察部隊に憧れるのだ。みんな。
そして、俺は4年という長い年月でその夢を叶えることができたのだ。ようやく、夢をつかんだ。しかし、それが、俺を狂わすことになるとは全く思ってもいなかった。
「おじいさん。シュンメイですよ。」
「おお、シュンメイ待っていたよ。」
ポタラの宮殿の近くに、わたしたちは暮らしていた。父は早くに死んでしまった。なぜ、死んでしまったのかは、教えられていなかった。母、そして5人の兄弟と姉妹たち。わたしは、その中でも一番年上だった。近くに住むおじいさんの世話をするのも、わたしの役目だった。
「今日は、お前に渡したいものがあるのだ。」
そう言って、おじいさんはエメラルドグリーンの石を箱から取り出した。それには、紐が通されていて、首につけることができるようだ。
「きれいな石ね。」
「ああ。これをお前に渡そう。シュンメイ。」
「これを、わたしに?ありがとう。」
「これは、昔わしが大陸に行ったときに買ったものだよ。お前が大陸に憧れているって言っていたから、それをあげよう。」
大陸とは、中国のことだ。ここは、中国ではない、チベット。そのことを区別するためにそう言っている。
「おじいさん、大陸に行ったことがあるのね?!すごい・・・。どんなところだったの?ねぇ、上海や香港には行ったの?」
「はっはっは、上海には訪れたことはあるよ。もう二十年も前のことだけどな。今は、もっとすごい大きな街になっているだろうな。」
「そうなのね・・・。行ってみたい!!いつか、上海や香港に行ってみたいわ!!」
おじいさんの話しを、目を輝かせて聞いていた。それが、わたしの夢だったから。
そこには、なんだってあるって聞いた。数多くの建物、綺麗な服も、すぐに手に入るって。それに、たくさんの人々がいる。写真や絵でしか見たことのない街を頭の中で思い描く。きらきら、と輝いている。わたしは、いつか自分の夢を叶えたいと、強く思った。
一人の青年と、チベットに暮らす少女。
全く違ったところに住む、二人。
文明と破壊、そして二人の強い思いが、交差していくことを、誰も止めることはできないだろう。




