第七話 幽霊講座 其ノ四
遅くなってすいません。
僕は、お盆休み二日目の夜、夜の森林地帯を走り回って
いた。正確に言うと僕を追って来る『何か』から逃げ回っ
ていた。
夜の森林地帯は暗く、ほとんど前も足元も見えない位で
ある。しかし僕は、草木に構わず走り続けていた。
その結果、僕の服は所々破れていた。それに気がついたの
は、朝方の事で、今は全く気がついていない。
「はぁ……はぁ……はぁ…はぁ…はぁはぁ」
いくら逃げても僕の背中に貼り付いているように離れない。
振り向く余裕さえくれない。
逃げ始めてから十分くらいは経っただろうか…ほとんど
全力疾走のため、もう体力がつきそうだ。しかし、いくら
走ってもこの森林地帯からは出られない。これもまた、
『何か』のせいなのか?だが今は、考えることさえ困難ら
しい。
「おい!…博氏!…はぁはぁ」
僕は最終的に守護霊に頼ることにした。もう自分の力で
は解決できないと思ったからだ。いや人間の力では無理だ
と思ったからだ。
「なんじゃ…うるさいのう…儂の睡眠時間はそんなに短く
ないぞ」
「助けてくれ…頼む…お願いします」
「儂がお主にやった電気の力を使えばよいじゃろ?」
博氏は、自分が守るべき対象が危険な目に遭っているの
にも関わらず睡眠をとっているとは…呑気なものだ。
「まだ…はぁ…使いこなせていないんだ…はぁ」
「あんなに必死に修行しておったくせに…成果無しとは…
情けないのう」と言いながら博氏は頭をかく。
「仕方ないのう…今回だけじゃぞ。儂の力を使うのは。」
「力を貸してくれるのか?」
「当たり前じゃ。儂はお主の守護霊じゃからのう。しかし
今回は例外じゃ…有難く思うのじゃぞ」
「わかった…はぁ…ありがとう…はぁ」
博氏はそう言うと、僕の後方に廻った。
「よい機会じゃ。しっかり見ておけのう」
僕は、博氏の言葉どうり足を止め後ろを見た。
すると、そこには女がいた。暗い森林地帯にワンピースを
着ている女が…。髪の毛は上半身を覆い、白いワンピース
にはホルスタイン状に血が点々と付いていた。
両手の包丁からは、誰かを刺した後のように血が垂れている。
「が…ゴ……ロス……」
小声でそう聞こえてきた。
しかし、そんな事を気にせず準備体操をする守護霊がそこに
はいた。そう博氏だった。全く頼もしい限りである。
「では、西ケ野 博氏。久方ぶりに参る。」と言い構えを
とる博氏。
女は博氏の行動と関係なく一歩ずつ近づいて来る。
「おい!博氏!速くしろ!」僕は恐怖からか焦っていた。
「うるさい奴じゃのう…そう慌てるな!」
そう言いながら博氏は、両手を出して女の方に向けた。
「じゃあ、いくぜ!」
しかし、同時に女も右手を頭上に上げていた。
だが、博氏は何の躊躇いもなく電流を、攻撃を女に向けてした。
見事電流は、女に命中した。苦しそうだ。
今回は博氏が電流を流しているせいか、女の感情が僕には
流れてこなかった。
「あああああああああああああああああああああああああ
ぐぁあああああああああああああああああああああああ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
大きな声をあげながら女は徐々に体が透明化している。
右手に持っていた包丁を落とした。
しかし、左手に持っていた包丁を投げてきた。博氏の透明
な体を通り抜けて僕の方に…だが、僕には、当たらず隣の
木に刺さった。
博氏の電流は、暗い森林地帯を照らし続けた。
そして、女は静かに消えていった。
「おい!博氏!」
「なんじゃ?お主のご要望どうりにしてやったぞ…まだ何か
儂にやらすつもりかのう」
「いや、そうじゃなくて…さっきの女は一体…」
「ああ。この森林はーエネルギーの溜まり場らしいぞ…
多分、あの女はーエネルギーを吸い込み過ぎたのじゃろうう
そして、自分自身の事を忘れ、ーエネルギーに支配された
成れの果てじゃろ」
そんなことが有りうるなんて…信じられない。
だが、博氏が、守護霊が言うのだから間違いないのだろう。
「それに、足元をよく見てみい」と博氏。
そこには、黒い霧のようなものが森林地帯一帯に広がっていた。
「うわ!なんだこれは?」
走っていたから全く気がつかなかった。
「これは、ーエネルギーが物や者に吸い込まれなくなったもの
じゃよ。正確には、者や物がーエネルギーを吸い込む量を超え
余ったーエネルギーじゃよ」
「じゃあ、僕も危ないんじゃないのか?」
「大丈夫じゃ。何のために儂がお主に憑いておるのじゃ」
そうだった。
こんな会話を守護霊としていると、また霊が次々と表れ始めた。
「おい!博氏!これはどういうことだ」
「知らん!もう儂はさっきので電気は使えんぞ…早う走らんか」
「無理だ!さっきので体力の限界なんだよ」
そんな言い合いをしている間に霊達に囲まれてしまっていた。
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