第一話 夜の町 其ノ壱
2話目です。
しんどい。
午後十時三十四分。
僕とその守護霊は夜の町を歩いていた。
「こっちじゃ。こっちにおるぞ。」博氏が子供みたいに興奮しながら言う。
「なぁ、力って一体どういうものなんだ?」未だに知らない。て言うか
教えてくれない。
「秘密じゃ。いずれわかる心配するな。それより着いたぞ。」
そこは普通の一般的な家だった。しかし人のいる気配はない。
「何があるんだ?ここに。」
「悪霊に決まっておるじゃろ。」
僕には霊感が無いようだ。まだ何も感じない。
「誰か住んでるんじゃないの?」
「大丈夫じゃ。何があっても儂が守ってやるから安心せい。」
全く安心できないし、信用できない。
「鍵がしまってるぞ。」と僕は言う。もう既に不審者だ。
「裏口から入るに決まっておるじゃろ。」
子孫に誰もいない家に入るように言っているご先祖様は本当に僕の
ご先祖様とは思いたくない。
「よし、入れたぞ。次はどこに迎えばいい?」
「水のある所じゃ。霊は水場に集まる習性があるからのう。」
それは習性なのか。ていうかそれぐらい霊に詳しくなくてもわかるわ!
「近いのう…。」
「あまり怖いことを言うなよ。」
「お主怖いのか? 儂はわくわくしとるよ。」
はっはっはっはっはと笑っていた。
緊張感のない奴だ。
「少し寒くないか?」と僕は腕をこすりながら言う。
「くるぞ。」
いよいよ悪霊さんとご対面か生まれて初めての経験だ。
僕は構えた。
だが、その構えが無意味だったようにそいつは僕の前に現れた。
白いワンピース。
上半身を覆う長く黒い髪。
悪霊だ。
「あ…た…助…て……。」
そう言いながら女はこちらに近づいてくる。
「よしやるか。」博氏は冷静にいった。
「お主! あの霊に向かってどちらでもよい手の平を向けよ。」
「くそ…どうにでもなれ。」
僕は守護霊の言う通り左手の手の平を霊に向けた。
「手から電気が流れるイメージをするのじゃ。」
僕は知っていた。あのシャーペンから流れたのがただの静電気じゃない
事が。今わかった。この時のためだったことが。
僕はイメージした。あの時の静電気を。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。」
すると、僕の手から霊にむかって青白い光がながれた。
そして、彼女からも流れてきた。想い、思い出、記憶、すべて流れてきた。
繋がりが消えた後、彼女は「ありがとう。」と言って消えて言った。
「お見事。」博氏は嬉しそうに言う。
「どうじゃ凄いじゃろ、これが儂の力じゃ。」
僕はあまり嬉しくない。なぜならあの子が幽霊になった事実を知って
しまったからである。そうある男に殺されたのだ。
その男はまだ捕まっていない。
男の名は赤井 将司だそうだ。
推理小説になりそう。
ヤバイ。