2話:初めての接触、未知の温もり
地面の冷たさに体温を奪われ、意識が遠のきかけていたその時。
カサリ、という音がした。
宇宙の星が弾ける音とも、風が唸る音とも違う。規則正しく、柔らかく地面を叩く、命の鼓動のようなリズム。
(なにか……くる……)
それは私のすぐそばで止まった。
吸い、吐き出される、湿り気を帯びた空気の音。
次の瞬間、私の、泥に汚れた頬に「なにか」が触れた。
「……っ!」
びくりと体が跳ねる。
けれど、それは私を傷つける衝撃ではなかった。
羽毛のように軽く、日だまりのように温かい。
その「温もり」が触れた場所から、氷のように冷え切っていた私の内側に、じわりと熱が溶け出していく。
(……やわらかい……)
それは、私の頭をそっと撫でた。
何度も、何度も。
宇宙の孤独にはなかった、自分以外の存在が私を肯定してくれるような、優しい摩擦。
その時、私の耳に届いたのは、高く、低く、波のように揺れる不思議な音色だった。
「……ぁ……ぅ……?」
それが「言葉」だとは、まだ知らない。
けれど、その音が自分を慈しみ、案じていることだけは、震える鼓動を通じて伝わってきた。
抱き上げられた瞬間、ふわりと鼻をくすぐる匂いがあった。
乾いた草のような、お日様をいっぱい浴びた土のような、なぜか懐かしい匂い。
運ばれた先で、私は「ふかふか」とした何かに横たえられた。
重力に抗う必要のない、すべてを預けられる柔らかい場所。
唇に触れたのは、温かな雫。
口に含むと、喉の奥までとろけるような甘い香りが広がり、空っぽだった内側が、幸福な重みで満たされていく。
目を開けることはできない。
けれど、今、私の世界は「暗闇」ではなくなっていた。
頭を撫でる手の温かさと、自分を呼ぶ穏やかな音色。
それだけで、私はこの「重たい体」を持って、この星に落ちてきた意味を知ったような気がした。




