表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

2日目

三人目が寺院から戻ってきた。女戦士の彼女だ。血の気の失せた頬に冷や汗がにじみ、ひどく疲れているように見えた。蘇生の影響だろう。彼女は目を開いたものの、しばらくは虚ろに天井を見つめ、やがて小さく「頭が痛む」と言った。声はかすれていて、かろうじて聞き取れる程度だった。それでも、戻ってきてくれた。まだこちらの世界に留まってくれた。それだけで、私は安堵の息をついた。


寺院では、今日もお布施を払った。ひとりにつき五七八〇ゴールド。冷たい銀貨の重みが手の中から消えていくとき、心臓の奥に小さな痛みが走る。だが、その痛みなど、仲間の命に比べれば取るに足らない。私は支払った。命を買い戻すような感覚で。


もっとも、すでに二万ゴールドをギルドに借りている。この上さらに三人分――あと一万七千あまりを借りなければならない。数字を思い浮かべるたび、胃の奥が重く沈む。借金という鎖が、日ごとに強く足を絡め取っていくのを感じる。それでも、仲間を取り戻すためならば仕方がない。金はまた稼げばいい。だが命は、一度失えば戻らない。蘇生の奇跡が必ずしも叶うわけではないことを思えば、なおさらだ。


迎えに行ったとき、呼ばれるまで三刻を待った。石造りの壁の間に並ぶ木の椅子は固く、長く座っていると腰に鈍い痛みが走る。だが苦痛とは思わなかった。待つことは、彼らの苦しみに比べれば些細だ。あの冷たい石の床で横たわり、祈りの声に身を晒し、魂が揺れ動く仲間の痛みを思えば、私の待つ時間など塵に等しい。むしろ、待つことで彼らを迎える準備ができるのなら、喜んで椅子に座り続ける。


だが、彼女の虚ろな目を見ていると、どうしても不安がよぎる。あれほど強靭だった女戦士が、まるで骨から力を抜かれたように項垂れている。戻ってきた彼女は、果たして以前の彼女と同じなのか。それとも、何かを失ったままの姿なのか。蘇生とは本当に「生を取り戻す」ことなのか、あるいは「死を先延ばしにする」ことに過ぎないのか――。そんな問いが胸をかすめる。


仮面の下で私は苦笑した。疑問を抱いても、選択肢は他にない。私は祈るしかないのだ。次の仲間も、無事に帰ってくるように。借金に押し潰されようと、信頼を失おうと、仲間を揃えなければ、私には進む道がない。


今日もまた、薄暗い部屋で灯りを落とし、紙にこの言葉を刻む。明日も、迎えに行く。仮面の内側に刻まれた罪の影は消えずとも、私は待ち続けるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ