人という字
二度目の不合格からしばらく、美桜は自分を責める夜を過ごしていた。
けれど毎朝、走る足を止めることはなかった。
悔しさを燃料にして、前より一歩ずつ長く、強く。
ある日、消防署の掲示板で「採用試験対策講習」の案内を見つけた。
不安を抱えながら参加した会場には、同じように夢を追う若者たちが集まっていた。
その中で、ひときわ明るい声が響く。
「よっ、君も二度目?」
振り向くと、短髪で快活な女性が笑っていた。
「私、真琴! 一回目は筆記で落ちて、二回目は適性検査と討論で撃沈。君もそんな感じ?」
美桜は思わず笑ってしまった。
「……私もです。筆記は通ったけど、持久走で……2回目は討論まったく出来なかったの」
「でしょ! あれ本当に地獄だよね!」
二人はすぐに打ち解けた。
講習の後も一緒にトレーニングを重ねるようになり、励まし合いながら体力をつけていった。
ある夜、公園の鉄棒にぶら下がりながら真琴が言った。
「私さ、災害で弟を亡くしてるんだ。だから絶対、この道を諦められないんだ」
美桜は静かに頷いた。
「……私も。救ってくれた人みたいになりたいの。今度こそ、必ず」
お互いの決意が、支え合う力に変わっていった。
——そして三度目の試験。
1次試験、美桜は自信を持ってやり遂げた。
―――1次試験合格―――
2次試験、適性検査も集団討論も自信もって話せた!
きっかけから今までの努力。伝わったと思う……
やり切った瞬間、視界が涙で滲んだ。
試験終了の笛が鳴り、結果発表の時が来る。
―――2次試験―――
掲示板に並ぶ番号の中に、美桜の番号があった。
そして真琴の番号も。
「……やった……!」
美桜と真琴は顔を見合わせ、涙と笑顔で抱き合った。
「私たち、受かったんだ……!」
孤独に震えていた少女は、ついに仲間と共に夢の入口に立った。
本当の戦いは、これからだ。




