一朝一夕
朝焼けの街をランニングするのが日課になった。
汗でシャツが張り付いても、腕が震えても、美桜は足を止めない。
毎日毎日、少しずつ体が変わっていく気がしていた。
試験の日。
今回は自信があった。
机に向かって必死に覚えた学力試験。
1次試験——合格。
その瞬間、美桜の胸に希望の灯がともる。
「今度こそ……」
だが、2次の体力テストはなんとか食らいついたが、不合格ギリギリだ……その後に待ち受けていた集団討論……これが何にも出来なかった。
気持ちは強い。それだけじゃだめだとわかった。
奥歯を噛みすぎて頭が痛い……
「……くっ……!」
審査員の冷たい視線が突き刺さる。
「そこまで」
結果は——不合格。
掲示板に並ぶ合格者の番号に、美桜の番号はなかった。
静かに、でも容赦なく現実が突きつけられる。
「1次は受かったのに……。やっぱり、私なんかじゃ無理なのかな」
帰り道、夕暮れの空の下で、美桜は足を止める。
小さな手を見つめる。
あの日、救助隊員が握ってくれたあの大きな手を思い出す。
涙がにじむ。
でも、その中で小さな声が胸の奥から響いた。
「諦めたら……あの日の私と同じになる。
弱くて、のけ者にされても受け入れてイジけていただけで、誰かの助けを待つだけの私に戻ってしまう……」
悔しさを噛み締めながら、美桜は拳を握りしめた。
「まだ終わりじゃない。何度でも挑戦する」
そう呟いた声は震えていた……




