飛びこむ
大学最終学期、キャンパスの空気は就職活動の熱気に包まれていた。
友達の多くは事務職や販売職、研究職などに進路を決めていく。
美桜は心の中で迷いながらも、ある決意を固めていた。
「私も……あの人みたいになりたい。誰かを助けられる人に」そう心の芯の近くでこだまする囁きがどんどん大きくなる。
掲示板で見つけた消防・レスキュー隊の採用試験の募集。
体力・知識・心理適性——未知の世界に挑む勇気を、美桜は胸に抱きながら応募した。
試験当日。
広大な体育館で並ぶ受験者たちの目には、迷いはなく、みな自信に満ちているように見えた。
美桜は胸の奥で小さな震えを感じる。
「私、ここで何をしているんだろう……」
最初の体力試験、反復横跳びでかなり出遅れる……持久走は周回遅れ。
腕が震え、足がもつれる。
周囲の受験者が次々とクリアしていくのを見て、焦りと劣等感が胸を締め付ける。
そして筆記試験。
知識問題に頭を抱える美桜。
体力も、頭も、まだまだ及ばない。
結果発表——
「不合格」
目の前の紙に書かれた文字を見た瞬間、心がざわつき、涙が溢れそうになる。
でも、瓦礫の下で震えていたあの日の恐怖と、救助隊員に救われた手の温かさを思い出す。
「今の私じゃ仕方ない……
でも……」
帰り道、夕暮れに染まる街を歩きながら、美桜はそっとつぶやく。
「……もう一度、挑戦しよう。必ず、あの人みたいになる」
瓦礫の下で芽生えた小さな火は、今日も胸の奥で揺れていた。
恐怖に打ち勝ち、手を伸ばす勇気を持つ日を夢見て——。




