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サバイバー  作者: 志に異議アリ


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模擬訓練



訓練所に「模擬災害訓練」の日がやってきた。

煙で満たされた建物の中に入り、要救助者役の人形を探し、搬送して脱出する。

時間内にクリアできなければ「全員不合格」。


班ごとに挑むその訓練で、美桜たちの緊張は極限に達していた。


——開始の合図。

全員がヘルメットと空気呼吸器を装着し、暗闇と煙の中へ突入した。


「右壁に沿って進め!」

拓海の指示に従い、四つん這いで進む。

息苦しいマスクの中、心臓の鼓動だけが大きく響く。


やがて、真琴が「要救助者発見!」と声を上げた。

80キロの人形を抱え、全員で搬送に移ろうとしたその瞬間——。


「美桜! ロープ結べ!」

拓海が叫ぶ。

緊張で手が震え、結索が上手くいかない。

焦れば焦るほど、指がもつれ、結び目はぐちゃぐちゃになっていく。


「まだか! 時間がねぇぞ!」

苛立つ声が飛ぶ。

ようやく結び終えた時には、大幅にタイムロスしていた。


ゴールに戻った時、教官の声が冷たく響いた。

「残念だな。時間オーバーだ」


——訓練後。

休憩室に戻った班の空気は重かった。


「……お前のせいで失格だ」

仲間の一人が吐き捨てるように言った。

美桜は言葉を失い、俯いた。

「ごめんなさい……」としか出てこない。


「謝って済むかよ! 現場なら人が死んでるんだぞ!」

その言葉は、刃のように突き刺さった。


静まり返る中、真琴だけが美桜の隣に座った。

「……でも、誰だって最初は失敗するよ。

私だって、初めてロープ結んだ時は同じだった」


だが他の仲間は納得しない様子で顔を背ける。

班はバラバラのまま、訓練を終えた。


——夜。

宿舎の片隅で、美桜は一人ロープを握りしめていた。

「……次は絶対に失敗しない」

手が切れて赤くなっても、何度も何度も結び直す。

目を閉じても、体が自然に動くまで。


その時、ふいに背後から声がした。

「……なぁ、俺もやるわ」

振り返ると、昼間厳しく責めた仲間が立っていた。

「お前だけに任せられねぇだろ。次は絶対クリアするんだ」


そこに真琴と拓海も加わり、班全員が輪になってロープを結び始める。

失敗を責めるのではなく、成功を目指すために共に練習する。


——仲間の息づかいが重なり合う夜。

「救助は一人じゃできない。だから班なんだ」

その当たり前の言葉が、美桜の胸に深く刻まれていった。








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