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サバイバー  作者: 志に異議アリ


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10/12

知識



訓練所に入って数週間。

体力も限界まで追い込まれる日々だが、もうひとつ、美桜たちを苦しめるものがあった。


——知識の叩き込み。


夜になると、救急法や災害対応のテストが行われる。

「外傷性ショック時の初期対応を答えろ!」

「シアン化水素ガス発生現場での装備は何だ!」

一秒でも遅れれば減点、答えを間違えれば全員が腕立て伏せ。


教官の鋭い声に、美桜の頭は真っ白になりかける。

けれど必死に声を張った。

「……止血、保温、輸液の準備!

呼吸・脈拍の確認を継続!」


正解。教官が小さく頷く。

胸の奥にわずかな自信が灯った。


——だが、知識だけで終わらせないのがレスキュー。


翌日の実技訓練では、学んだことを「身体に叩き込む」時間が待っていた。


止血用の包帯を巻く動作、気道確保の手順、ロープ結索。

何十回も、何百回も。

目をつぶっても、手が勝手に動くまで。


「頭で覚えたことは、現場じゃ使えない。

体が勝手に動くようにしろ!」

教官の言葉が響くたび、美桜は歯を食いしばった。


——午後の搬送訓練。

班の仲間と共に、80キロの人形を担いで障害物を越える。

真琴の声、拓海の掛け声、全員の息が揃った瞬間、重さの一部が不思議と軽く感じられた。


「いち、に! いち、に!」

汗と苦痛の中、それでも誰一人欠けずにゴールまで辿り着いた。


「……今の、美桜の止血法、早かったな」

仲間がふいに声をかけてくる。


「ううん、ただ……必死に体で覚えたから」

美桜はそう答えたが、胸の奥はじんわり温かかった。


——知識も、技術も、体に叩き込む。

仲間と共に、その全てを生きたものに変えていく。

少しずつ、美桜は“救われた少女”から“救う人間”へと形を変えていった。









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