6話 ノア祭と冬の始まり
たくさんの人に読んで頂き、感想など頂けたら幸いです。
冬が本格的に来る前に来年に向けた祈願として毎年恒例らしく、1ヶ月位前から少しづつノア祭の準備をみんなで始めている。気候は、冬が4ヶ月、秋が8ヶ月で1年になるらしく、冬になれば魔物も活動がなくなるので、狩りも出来なくなり、木の実もあまり採れなくなる。
残り1ヶ月で、畑で収穫したものをすべて備蓄して冬に突入。足りない物などは、ルーンに行って買いだめしておく。冬の間は、なるべく大人しくしているそうだ。そういえば、去年は、ナイフの扱いを冬の間、父親に教わっていたな。それ以外は、だいたい家の中で過ごしていた。寒いし。
祭りまで2週間が近づいた時に、父親のマイクが、リュークおじさんと他何名かで祭りで使う食料や冬の備えをルーンの町に買いに行くことになった。リヤカーを使うらしい。往復で1週間弱の道のり。俺も行きたいと言ったが留守を頼まれてしまった。残念、また今度とのこと。
父親が出発してからも変わらず、シエルと狩りに精を出していた。アイテムボックスには、すでにボアが2体入っている。以前調べた通り、時間経過がないので、永久保存出来る。まじ便利だわ。必要なら祭りの時に提供しよう。
木の実もだいぶたまってきたので、狩りは祭りの前までやって一旦中断して様子を見ようとなった。二人ともまた、レベルアップして現在レベル3、新しいスキルはなし。だか、2人とも身体能力は、以前よりだいぶ向上した気がした。
今日もいつもの様に木の実や薬草を拾いながら、魔の森の少し深い所に行ってみた。しばらく歩いてみたが、普段とあまり変わらない事が分かった。魔物もいないので、戻る時間も考えて、そろそろ家に戻るところだった。
2人でしばらく歩いていると、「がさがさ」と音がして、後ろから急にボアが現れた。2人とも何とか左右に回避して、確認すると普段みるボアより1周りいや2周りは大きかった。まさか、初めて見るが「ビッグボアか?」とシエルに聞いてみた。シエルは、「たぶん、そうだよ。」と言っていた。2人とも見たことがないが、たぶんそうだろう。
俺達2人で倒せるか分からないが、「やるぞ、シエルは後ろに下がって、矢の準備を!」といいナイフを構える。ゆっくりと近づいて、ビッグボアの動き出しを狙って切りつけた。が、ナイフが弾かれた。刺さらなかった。これは、まずい。速さは、普通のボアと同じ位だが、とにかく皮が硬く、ダメージが入らなかった。シエルから矢が放たれたが、硬い体に弾かれた。
狙うなら目かと思ったが、祭りの前に怪我もしたくないので、無理はしない。「シエル、逃げるぞ!」と声をかけて、アイテムボックスから拾い集めた木をたくさん取り出し投げつける。埋もれたのを確認して、横をすり抜け村まで帰還した。
後で父親に聞いたが、ビッグボアは皮が厚く硬いので、普通のナイフや木の矢では厳しいとのことだった。祭りの前日、父親のマイクとリュークおじさんがビッグボアを捕ってきた。
いつもは、魔の森の奥にいるらしいが、冬が近づくと割と浅い所に出てくるらしい。冬眠の為に餌を求めて活動範囲が広がるようだ。俺とシエルも冬が終わるまで2人で、狩りには行かないことにした。だってビックボアが危ないからね。
祭りは、盛況に終わった。みんなで火の周りに集まり、ビッグボアを焼いて食べた。めっちゃ旨かった。脂がしっかりのっていた。大人達は、酒を飲んで羽目を外していた。ノア祭も終わり、これから本格的な冬の到来を迎えることになった。
冬に入りしばらくは、部屋の掃除、両親の手伝い、何冊か家にある薄い本を読んだり、たまにナイフを手入れして大人しくしていた。数が少ないので、服も欲しいなと思う様になった。そうだ、大事な事を忘れていた。風呂を作ろうと思ってたんだ。それからは、少しずつ設計を考え始めた。
母親のフレアは、裁縫や家事、洗濯をしていた。たまに弓の技術が落ちない様に的に当てる練習をしている様だ。この間シエルが来て、二人で弓の練習をして夕食を食べて帰った。父親のマイクは、畑仕事がないので、壊れた家具を整備していた。手先が器用らしく、家の物は、たいてい父親が作っている。壊れた椅子も簡単に直してくれた。
食事は、毎日保存食やパンを食べたり、温かいスープだった。同じ物が多かった。毎日、魔の森に狩りに行っていたのが、不思議と行かなくても平気なくらい今の生活にも満足していた。父親に木の風呂を一緒に作ってもらおうと思った。
一度、暇を持て余して、薬草なら採れるかもと思い、魔の森に行ったこともある。シエルにも声をかけたが、「弓のための木の矢を作るからいいや。」というので、一人寂しく行くことにした。
魔の森の浅い所を散策してわかったが、何もなかった。木の実も見つけられず、何とか1本薬草を見つけた位だった。魔物もどうやら冬眠?みたいだ。帰り際、シエルの家で、狩りの成果報告と矢の進捗具合を聞いてみた。矢は、1日1、2本ペースで丁寧に作っている様だ。先が金属でもない木の矢なので、胴体は丸め、先は鋭くなる様に丁寧にナイフで削っているらしい。
冬に入り1ヶ月過ぎたある夜、父親のマイクがルーンに家具の材料を買いに行きたいと言っていた。何を作るつもりなのか知らないが。村のみんなにも何か欲しい物があるか、売ってきてほしいものがあるか聞いてから行くそうだ。俺も行きたいと言うと、今回は2人で行こうということになった。ノアの村の仕事ではないので、連れて行ってもらえた。
どうやら父親のマイクとシエルの父親のリュークおじさんが村の中心になって動いている事も最近わかってきた。ノアの村には、村長もいるが、かなり高齢らしく、祭りの時に見たような気がした程度である。
あと2ヶ月もしたら今年度の人頭税(15歳未満は半額)を払いに、村人全員分持って、領都リアンプールに納めに行くらしい。帰りは、みんなで羽目を外して酒でも飲んでから帰ってくるらしい。この時期は、盗賊が出るらしく、注意も必要だそうだが。
去年は、マイク、リュークおじさんと腕に自信のある3人を選んで5人で武装して、必要最小限の食料と水を持って向かったらしい。途中、ルーンの町で、しっかり休み、食料の補充も行うそうだ。
万が一盗まれでもしたら、最悪奴隷行きもあるらしい。盗られたので、払えませんでは済まないとのこと。金額は、一人あたり金貨3枚で思ったより高くない。前世でいうと年で3万円である。
こつこつ1年かけてルーンで肉や野菜や木の実、薬草を売ったり、また村の中で売買していれば稼げる金額である。ボア1体で、ルーンで運がよく、状態もよければ金貨1枚で売れると父親が言っていた。売るより食べてしまう方が多いらしいが。というわけで明後日ルーンに行くことが決まり準備をする事になった。
「通貨の目安」
大金貨 1枚 10万円
金貨 1枚 1万円
銀貨 1枚 1000円
銅貨 1枚 100円
活字を見過ぎて頭が痛いので休みます。