どん兵衛鬼かき揚げうどんを夢に見る☆(490文字)
夢を見た。
日清どん兵衛『鬼かき揚げうどん』をどんぶり一杯に食べている夢だった。
起きると僕の日常の景色は何も変わっていない。
岩の床に敷いた藁の布団、蝋燭に火を点けなければ何も見えない部屋──
昨日採ってきておいたイタドリの茎を朝飯に齧ると、僕は洞窟の外へ出た。
今日は何か獣を狩りたい。
草ばかり食べている毎日には飽き飽きだ。
猫でも何でもいい。イタチでもいい。
しかし荒野を歩いている獣は今日も見当たりそうになかった。
時間が来て、会社に行った。
会社では僕と同様に痩せ細った人間たちがコンピューターにこき使われている。
いつものように、どん兵衛鬼かき揚げうどんを僕はセールスする。インターネットを通じて、それを1個48,230円で販売しようとする。売れるわけがない。月給の平均が360円のこの時代に。
僕はおやつに持って来ていた土筆を齧りながら、隣の女子社員の太ももを見た。土筆のように細く、それには胞子のようなものがいっぱいついている。
食欲は湧かなかった。
僕はそんなものよりどん兵衛鬼かき揚げうどんの夢を見る。それを売りながら、それの夢を見る。
どこにも存在しないから、夢を見るしかできないのだ。




