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犬の助手さん(1000文字)

 猫は運転席に乗せないと大人しくしていない。フェレットはどこに乗せても車を内中を探検して必ずブレーキペダルの下でお座りする。


 助手席に乗せるには犬しかない。


 たぬきは怖がって窓に激突を繰り返す。ハムスターなんか放したらどこに行ったかわからなくなる。


 助手席に乗せるなら、やっぱり犬しかないのだ。


 とは言え助手としての信頼などもちろんしてはならない。見通しの悪い交差点で「左から車が来るかどうか見てくれ」なんて言っても「はっ?」と返されるだけだ。


 窓を大きく開けておいてやらないと助手席をよだれまみれにされる。だからといってあまり開けすぎていると腰まで外に身を乗り出す始末だ。


 それでも私は犬を信頼している。


 スコットランドはシェットランド諸島原産の牧羊犬が頭がいいと聞いて、助手席に乗せた。コイツがやたらと無駄吠えをする。


「左から車が来るかどうか見てくれ」

 私がそう命令すると「ワンッ!」と大きな声で吠える。

「来てるか?」

「アンッ!」

「来てないのか?」

「オンッ!」

「どっちなんだ?」

「アゥオーッ! オッ! オッ!」

 何もわからない。


 私は膝の上に立つ猫と一緒にハンドルを握りながら、結局は自分の目で左側の確認をし、車が途切れたところで交差点を右折した。


 猫は運転席に乗せているぶんにはまったく危なくない。上手に私に合わせて一緒にハンドルを切ってくれるのでとても楽だ。今のように私が身を伸ばして安全確認する時にはシンクロした動きで確認を手伝ってもくれる。もちろんこれはうちの猫だけかもしれないので決して真似はしないように。


 さて助手席の犬だが、この通り役に立たないように見えるだろう。しかしそうではない。彼はそこにいてくれるだけでいいのだ。それだけで私は心が落ち着く。平常心で運転するためには、彼が必要なのだ。


 猫はむしろ逆に心をハイにさせるからだめだ。猫が膝の上にいると、どうにもすばしっこいニンジャのような運転をしたくなってしまう。


 後部座席のバスケットの中からフェレットが「まだ着かんか?」みたいにこっちを見ている。フェレットはかすからだめだ。たぬきは車に乗せるとパニックを起こすので家に置いて来た。ハムスターはエサ皿の中で熟睡していることだろう。


 海が見えて来た。猫が私の顎の高さまで身を乗り出してキラキラ光る海を夢中で眺める。一緒になってハイになりそうだ。しかし助手席に犬がいてくれる。


 お陰で今日も安全なドライブが出来るのだ。


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