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勇者(仮)  作者: 物書男
勇者の伝説
4/9

その日part2

 当日の作戦の諸々の確認が終わり、後は帰るも残るも自由ということになったが誰一人としてその場から動こうとはしなかった。

 アンリの提言により、盛り上がっていた場の雰囲気は重苦しいものに変わり、異様な緊張感に包まれていた。いくら勇者たちが超人的な力を持っているとしても人間であることには変わらない。自身に課せられた責任の重大性にその場にいる誰しもが押しつぶされかけていた。

 そんな彼らを見て本作戦の責任者であるリザが何か声をかけようとしていたが、言葉が見つからないようで彼女もまた黙り込んでしまっていた。すると、突然アンリがガタリと音を立てて立ち上がった。


「なぁ、みんな!この戦いが終わったら何したい?」

「はぁ?」


 アンリの突然の言葉にロカは反応しきれていないような声を上げた。それに反しアンリは明るい声で続けた。


「だってよ、サイプレスを倒したら魔獣もいなくなるわけだろ?魔獣が生まれる原因はこいつらな訳だし。そしたらさ俺らかなり暇になるじゃん?そうなったらみんなは何かしたいことがあるのかなって思ってさ」

「つまり、私たちの将来の夢が聞きたいってことか?」

「そうそう!」


 自分の言葉を要約してくれたロカにアンリは明るい声を上げた。そしてチラリとカーデルに視線を落とした。


「カーデルは?何かしたいことあるか?将来」

「俺か?そうだなぁ…」


 突然のことにすぐさま答えを出せず、カーデルは少し考えてから自分の将来を口にした。


「まぁ、俺は王族だからな。この戦いが終わったら兄弟たちとの王位継承権争いに戻ることになるだろうな。今回の戦いに勝てば他の兄弟たちより王に一歩先に行けるだろうからな」

「へー。もし王様になったらどんな国にしたいんだ?」

「そこも話さないとダメか?」

「いや話したくないならいいけど。王様になるのはまだ先のことだから明確な政策はまだ思いついてないだろうし」

「…一応ある」

「マジ?どんな?」

「ウチの国はアレスのとこやガルシアに比べてインフラが進んでない…とくに地方なんて酷いもんだ。人が通るような道をしていない。だから街道を整備して街同士の行き来をしやすくして産業発展の基盤を整えたいな」

「お、おう」


 カーデルの話を聞いたアンリの顔をは驚きに染まっていた。


「なんだよ、その反応。自分で聞いといて」

「いや、カーデルにしては考えがしっかりしてて、ちょっとびっくりした」

「ああ!?殴るぞ!!」

「まぁまぁ、アンリくんも君に感心したってことだよ。だから落ち着いて」


 いきり立つカーデルをリザが宥めると大きく鼻を鳴らしてドカリと椅子に座った。

 アンリはカーデルに小さく誤るとアレスに目を向けた。


「んじゃあ次は…アレス!お前は将来どうしたい?」


 当てられたアレスは顎に手を当て「ふむ」と 一つ間を開けると語り始めた。


「ワシはこのまま勇者を続けつつ、本職の鍛治の仕事を再開するつもりだ。工房も弟子たちに任せっきりだからな。余裕ができる以上、戻らなければアイツらに示しがつかん」


 ドワーフは武器や防具に始まり、服やアクセサリーなどの制作を得意とする種族である。その中でもアレスは武器作りに長け、国内でもトップクラスの技術力を誇る。そんな彼の腕に惚れてか彼の元には数十人の弟子がついている。

 

「そもそもアレスはなんで勇者になったんだ?」

「そりゃあお前、魔獣の素材が欲しかったからよ」

「魔獣の素材?」

「そう。魔獣は一般の動物とは違って魔力を纏っておるから彼奴らの素材からできた武具は魔力を通しやすく、頑丈なんだ」

「へー」


 アンリが頷いているとミリーから付け加えの説明が入った。


「でも魔獣そのものが危険だったり倒す時にその体が傷だらけになって素材そのものが取れなかったりするから凄く貴重なんだよ」

「その通り!じゃからワシは思った!全部わしがやれば無料じゃね?とな!!」


 ミリーの付け加えに熱が入ったのか、アレスの声量が上がった。そのままのテンションでアレスが話を続ける。


「そうして魔獣を狩りまくった結果!!勇者と呼ばれるようになったわけじゃな!!ぶわっはっは!!」

「お前んとこって割と適当だよな…そういうとこ」


 豪快な笑い声を上げるアレスに呆れつつアンリは次にロカに視線を向けた。


「ロカはどうすんだ?」

「私は勇者を引退しようと思っている」

「え?そうなのか?」


 ロカの声にアンリは驚きの声を上げた。


「もう100年近く勇者をしているからな。そろそろ潮時だろう」

「でもアテはあるのか?次の勇者の」


 エルフは基本的に戦いを好まない。その国民性からか魔導士になろうとするものは少ない。ロカがここまで長く勇者をし続けたのもそれが原因の一つでもある。しかし、ロカは自身ありげに『ある』と答えた。


「最近、私の元に弟子入りしたエルフが『私の後を継ぎたい』と言い出しているんだ。実力はまだまだ足りないがそのうち奴は立派な勇者になるだろうな」

「そっか。じゃあ勇者やめたら何するんだ?」

「特に考えてはないが…そうだな…田舎にでも隠居してゆっくりと余生過ごすとするか…」

「余生って…あとお前何年生きるんだよ」

「…400年ぐらいか?」

「その長さ余生っていう?」


 ロカ達、エルフは不老長寿の一族であるためアンリ達と比べて時間に対する考え方にかなり相違があるようだ。

 

「それじゃあ次は私…かな?」


 アンリが声をかける前にミリーが声を上げた。珍しく自ら発言をしたミリーにアンリが頷いた。


「おう!ナイスなやつ頼むぜ」

「うん…えっと私もとりあえず勇者は続けるかな」


 一つ咳払いをした後にミリーは細々と話し始めた。


「でもそれと同時に国中をまわって公演とかしてみたい。私みたいに臆病で弱くても勇者になれるって。誰かを助けられるって広めたい」

「めちゃくちゃ立派じゃねぇか。ロカなんてじいちゃんくさいこと言ってんのに」

「人の夢に優劣をつけるな」


 ロカの突っ込みを華麗にかわしてアンリはリザにバトンを渡した。


「それじゃ次は…」

「私か…」


 アンリに当てられたリザは悩ましげな顔をした。


「うーん。すまないけどすぐには思い浮かばないね。これまで自分の将来なんて考える暇なかったし…」

「そうか…じゃあやりたいことを見つけることを目標したら?」

「そうだねぇ…しばらくはそうして生きてみるよ」

「因みに私はリザ様と共になんでもどこへでもついていくつもりです」

「ふふ、ありがとう。イヴ。頼りにしているよ」

「えっへん」


 リザに頼りにされイヴが胸を張った。

 みんなの将来について聞いたアンリは満足気だ。


「これで全員言い終わったな」

「何言ってんだ。まだ1人言ってないやつがいるだろ」

「え、だれ?」

「お前だよアンリ」


 カーデルに指摘されてアンリは目を見開いた。


「え、俺?」 

「そうだよ。他の奴らは言ったのに自分だけ言わないのはずるいだろ」

「そうだぞ。早いとこ吐け」

「私も聞きたい」

「うんうん」


 各々がアンリに話すよう催促を行っているとアンリは首を振った。


「待ってくれよ。みんなも知ってるだろ?俺はこの戦いが終わったら…」

「知ってるよ」

「!」


 アンリの発言を最後まで聞かず、遮るようにリザが声を上げた。

 

「でも良いじゃないか。犯罪者でも夢ぐらい持ってもさ。人は生きていればやりたいことを見つけてしまう生き物だ。それは誰かに否定される物でも責められるものでもないさ」

「…」

「だからさ。話してよ。アンリくん。君のしたいこと」

「分かったよ。俺はな…」


 リザの言葉を受け、これまでの人生で描いてきた夢をアンリは語り始めた。

 自分のやりたいこと。これからのことを。


「俺は学校を作りたい!」

「は?」


 予想外の答えにアンリ以外の者たちの表情が固まり、呆気に取られていた。しかし、アンリはお構いなしに話を続けた。


「それもただの学校じゃないぞ。階級、性別、種族、頭のいいやつ悪いやつ…全員が通える、世界一懐の深い学校だ!」

「どうして、急に学校を?」


 ようやく自我を取り戻せたのかミリーがアンリに質問を投げかけた。

 アンリはそれを待ってましたと言わんばかりに受け取ると答えを投げ返した。


「俺たちはさ、種族間で差別してきただろ?イビレンターに限らずさ。でもなんでそれが起きるのかなって考えたらさ、知らねぇからじゃないかって思ったんだよ。お互いのことを」

「…」


 心当たりがあるのか或いはアンリの話を聞こうとしているのかわからないが黙ってアンリの言葉に耳を傾けていた。


「だって俺たちがそうだっただろ?初めて会ったばかりの頃は互いに罵り合って自分の中の相手のイメージを押し付けあってさ。でもこうしてお互いに話し合って互いに理解していったらそれも無くなった。だからさ同じ学校、教室で肩並べて勉強すればさ失くせると思うんだよ。差別とかを。だから俺はそんな学校を作りたい」


 アンリが話し終えると部屋は静まり返っていた。何の反応も示さない面々を見てアンリは困惑の表情を浮かべた。


「お、おいなんか言ってくれよ。話せって言ったのはそっちだろ」


 困惑しているアンリの耳に笑い声が飛び込んできた。声のした方を見ると珍しくリザが腹を抱えて笑っていた。


「アッハッハッハ!君が学校をつくる?意外!ハッハッハ!」

「なんだよお前!さっき自分で人の夢は誰にも否定できないって言ってたじゃねぇか!」

「ごめん…ごめん…否定したいんじゃなくてあまりに私の予想と離れてたから面白くて…つい」


 笑いながら謝るリザにロカが頷いた。


「私もだ。アンリのことだから最強の魔導士になるために修行したいと言い出すのかと思っていた。フフ、だがまさかそんな夢を持っていたとはな」

「らしくねぇな」

「私も驚いちゃった…すごい夢だよ」


 各々が反応を示す中、アンリは照れて拗ねそうになっていた。そんな彼にミリーが質問した。


「アンリくんが学校を建てた場合、先生もアンリくんがするの?」

「あー、そうなるな。建ててすぐだったら教師の数も少ないしな俺が教壇に立つ機会もあるだろうな」

「ああー…」


 全員の顔が一気に暗いものになった。それを感じてかアンリの怒号が響く。


「なんだよその顔!なんか文句あるのかよ!」

「いやだって君はさ…ね?」

「ね?ってなんだよ!はっきり言わずにはぐらかす方が人は傷つくんだぞ!」

「わかった。じゃあ君はバカだ」

「オイ!!だからって言っていいわけじゃねぇよ!」

「で、でもアンリくんは割と先生とか向いてると思うよ。ほら、アンリくん子供に懐かれやすいし」


 リザにキレるアンリを宥めるようにミリーがフォローを入れた。

 アンリ・アンブローズという男は血に飢えた獣のような目をした強面であるにも関わらず、どういうわけか子供に非常に懐かれやすいのだ。休日の度にリザの家の近所の子供達と遊んでいるほどには。


「そういえばそうであったな。一体何故こんなにも人気なんだ?ワシの国の子供たちも『アンリは次いつ来るんだ?』と聞いてくるしな…」


 立派な髭を蓄えた顎をさすりながらアレスが呟いた。その疑問に他の面々がその疑問に同意するように頷いた。

 その疑問にアンリのチョーカーが独自の論を唱えた。


「精神年齢が近いからかと!」

「「「ああ〜」」」


 あまりに腑に落ちる意見にアンリをフォローしたミリーですら納得してしまった。


「おっし!決めた!お前ら全員ここでぶっ飛ばす!!サイプレスとか知ったことかァァ!!」

「お、落ち着いてください。アンリさん」

 

 暴れ出すアンリをイヴがなんとか抑えようとしていると、リザがアンリに質問を投げかけた。


「ところでアンリくんはどうして私たちに将来の夢とか聞いてきたんだい?」

「あ?あー、なんていうか…みんなと話せるのもこれで最後かもしれないし最後くらい腹割って話したいと思ってな」

「なるほど」


 アンリの答えにリザは頷いた。

 アンリは5年前に起こした勇者殺しの一件でこの戦いが終わると処刑される運びとなっている。すぐには処刑されることはないだろうが、みんなと話すのは今後、難しくなるだろう。

 アンリがみんなの将来の話を聞きたがったのは未来を生きるリザ達を応援したいという意味もあったのだろう。


「ぶわっはっは!!安心せい、アンリ!主が牢屋にぶち込まれようと会いに行ってやるわい」

「は?なんでだよ」


 アレスの発言にアンリは首を傾げた。そんなアンリを見てアレスは答えた。


「なんでって学校の設計について話し合わんといかんだろう?」

「え?」

「私もアンリくんの学校で公演するかもしれないし詳しく話聞きたい」

「おい?」

「ふん。ウチの国の子供達を任せられるのか…王族たるこの俺が見定めねぇとな」

「あの?」

「勇者を引退して教師をするのも悪くないか…」

「あれ?なんでこんな話進んでんだ?俺を無視してよぉ…」


 自分を置いて学校建設の話が進んでいることにアンリが困惑しているとリザは一際大きな声を上げた。


「よし!それじゃあみんな!明日は勝つよ!みんなの未来を守るために!!」

「「「おう!」」」

 

 そうして本日は解散となり、アンリ以外の勇者たちもリザの家に泊まる事となった。

 そして皆が寝静まった夜。

 ここに決戦の前夜であるにもかかわらず目を覚ましている男がいた。


「ね、眠れねぇ…」


 アンリ・アンブローズである。


(な、なんでこんなに眠れねぇんだ?昼寝しちまったからか?おっかしいな。いつもはすぐに寝れるのに…)


 何度も目を閉じて意識が遠のくのを待っているがどうしても意識が手元に残ってしまう。

 そんな状況に埒が開かなくなったのかアンリはベッドから降りた。


「しゃあない。ちょっとそこら辺散歩してくるか」


 散歩の一つでもすれば眠気も起こるだろうとアンリは部屋を出た。

 あまり足音を立てないように廊下を歩いているとテラスに置いてある椅子に誰かが座っているのが見えた。アンリが近づいて確認するとそこに座っているのはリザだった。

 リザはアンリに気づいたのか彼の方を振り返った。


「おや、アンリくんじゃないか。どうしたんだい?」

「ちょっと眠れなくてな。そこら辺を歩いてたんだ」

「あんなに昼寝をするからだよ」

「うっせうっせ」


 そんな軽口を叩いているとリザが隣に置いてある椅子を指差した。どうやら座るように促しているようだ。

 アンリはその行為甘え、リザの隣に座った。


「ありがとうね。アンリくん」

「急になんだよ?」


 突然感謝の言葉を述べられたアンリは驚きつつリザに聞き返した。


「昼間の会議のことだよ。アンリくんのおかげで彼らも勇気付けられたみたいだ」

「別にそんなつもりはなかったよ。勇気づけるってことだったらリザの方が上手くやったろ?」

「ううん。当日は見守るだけの私の言葉じゃ、ああはならなかった。君だからこそできたことだ」

「それは…いや。そこまで言うなら素直に受け取っておこう。感謝しろよ」

「調子に乗るな」


 そう言ってリザはアンリの肩を小突いた。

 そして訪れる沈黙。

 墨を垂らしたように真っ黒に染まった夜空に三日月でも満月でもない、中途半端な形の月が2人を照らしていた。

 2人はそんな沈黙を楽しんでいた。ただ何かをするわけでもなく単に同じ時間を共有するだけ。

 しばらくしてアンリが何かを思い出したように声を上げた。


「あ、そういえばさぁ」

「なに?」

「リザはやりたいことがないって言ってたけど、1つ俺から提案があるだけど聞いてかないか?」

「いいよ。聞かせて?」


 彼のことだどうせくだらない提案だろうとリザは耳を傾けた。

 リザに促されるとアンリはニヤリと笑った。


「俺と一緒に学校つくってくれよ」

「君と?」

「うん。学校をつくりたいとは言ったけどつくり方は知らん。仮につくったとしても学のない俺じゃ教えられることもあんまない。ただ俺にあるのはやる気だけだ」

「最後のはともかく、絶望的だね」

「でも、リザとならなんとかなると思うんだ。それでもし学校ができたら、そこで先生もして欲しい」

「待って待って。全然1つじゃないじゃん」

「あ、ほんとだ。すまん」

「それに私は教師は向いてないよ」


 自虐気味に否定するリザにアンリは大きく首を振った。


「いや。絶対向いてる。5年間リザの下で教育を受けてきた俺が言うんだ。間違いねぇよ。だからさ…」


 そこでアンリは言葉を切るとリザの前に立って彼女に向けてを伸ばした。

 リザは目を見開いてアンリを見上げた。


「一緒に来てくれ」


 アンリはそう言って笑って見せた。リザはそんなアンリに微笑み返して1つ息を吐き、彼の手を取った。


「仕方ないなぁ。その話、受けてあげるよ」

「やった。それじゃあ約束だ。ほら、小指出して」

「はいはい。いつものやつね」


 2人はそう言って小指同士を絡めた。


「それじゃいくぞ。せーの…」

「「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった!」」


 歌が終わると2人は同時に指を離した。

 おまじないが終わった後、リザはおもむろに自身ポケットの中を弄った。

 

「そういえば渡しておくものがあったんだった」

「お?なんだ?」

「えーとね…あ!あったあったこれこれ」


 リザがポケットの中から取り出したのはクローバーを模り輪の部分にチェーンを通された2つの指輪だった。それらはアンリにとって馴染み深い物だった。


「おい、これって…」


 この2つの指輪はアンリの妹のマユとその婚約者でアンリの親友であるモビーの婚約指輪だった。ヒイロを殺した直後に魔導士に持ち物を押収された際にこの指輪も持って行かれてしまい、その後の行き先はわからずじまいだったものだ。


「本当は少し前に回収していたんだけど渡すタイミングがなくてね。本当にすまない」

「いや、それはいいんだけど…何でこれを俺に?」


 アンリの疑問にリザは当然のことのように答えた。


「だってそれは君の大事な物なんだろう?だったら君が持っておくべきだ。ほら」


 リザは押し付けるようにアンリに指輪を手渡した。アンリがチェーンのところを持ち上げるとチャリンと音を立てて指輪が揺れた。


「ネックレスに改造してみたんだ。といってもチェーンを通しただけだけどね」


 アンリは指輪をギュッと握りしめるとリザにお礼を言った。


「…お前にはホント感謝しっぱなしだ。ありがとうリザ」

「お礼は別にいいさ。ただ持ち物が持ち主の元に帰っただけだしね」

「いやそれでもだ。何かお礼を…」


 何か礼をしなければとアンリが頭を悩ませているとリザが『じゃあ…』と言葉を紡いだ。


「私からも約束して欲しい。ちゃんと帰ってくるって…」


 そう言ってリザはアンリの目を見つめた。

 アンリはその約束に笑って答えた。


「ああ!もちろんだ!」


 そして、ついにアンリ達は決戦の日を迎える。

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