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いたん、いたんだ ミカン

作者: 尾生 礼人

《かつて異端審問で異端と認定され、破門された御年70歳のイッタン上人(しょうにん)

今、その異端 認定 取り消しについて話し合いが持たれています!》


『面白くなってきましたねぇ……』


『何がですか?

解説のブッチャー・ケインさん?』


『ああ、簡単なことですよ。

どこの組織でもあるんですが、派閥というやつです』


『えっと……話が見えませんが……?』


『外部の方から見ると、教団vsイッタン上人 支持者、という構図ですよね?』


『そうですね……?』


『実際には、7代前の法主(ほうしゅ)の頃から教団を牛耳ってきた主流派vs教団内 良識派なんです』


『……と、言いますと?』


『主流派としては、先輩がたの判じた異端 認定を誤りと認めると、内外における自派の権威……影響力が失墜しますからね。

異端 認定 取り消しに抵抗してるのは、その主流派なんです』


『……』


(こころざし) 持つ若者たちが それぞれの得意分野で のしあがり、やがて手を組み、組織 全体を改革する……そういったストーリーの逆ですよ。

血筋やらコネやら学歴やらで重要なポストを独占、自分たちだけ美味しい思いをしてたのが、台無しになる、と言うことです』


『つまり……教団 全体のメンツではなく、自分たちの利益のために あえて ‘異端認定は正当だった’ と主張していると?』


『そういうことです。

不祥事は、起こした本人だけではなく、上司など関係者 全員の出世に影響しますからね。

民間だけでなく、お役人にも多いですよ。

ことに民間組織なら つぶれるところが、お役所は つぶれませんからね』


『……しかし、昔ならいざ知らず、貴族制の廃された近現代は実力主義のはずでは?』


『建前は そうですが、実態は変わりません。

誰しも安定した地位が欲しいですからね。三人寄れば派閥が出来ると言うように、貴族でなくとも結託するものです。

あと、可愛い子供に苦労させたく ありませんし、自らの老後も心配ですから……。

仲良く語らって、かばいあい、組織を(わたくし)するものです』


『……』


『かつて貴族が、‘私らの先祖は偉かった’ だの、‘重要なポストは、お血筋にこそ ふさわしい’ だの言って、重要な地位を独占していたのが、

‘私らの親は幹部だった’ ‘重要なポストは、我々 にこそ ふさわしい’ と なっただけです』



今日もどこかで、生存本能から歪み、人間として当たり前なことが出来なくなった人たちの悪あがきが続く……。

罪なきを

だ れが呼んだか、

異端者と……。

() まか る前に

は れて日の(もと)

 坂田 夜見

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