凛との出会い
「ねぇ、一回会ってみない?」
「おばちゃん、いいよ」
俺は、おばさんの言葉に手を左右を振りながら断っていた。
「何も結婚しなさい何て言ってないじゃない!それに、珍しいでしょ?彼女の名字にも月が入ってるのよ」
「そんな事で会わないよ」
片平聖子さんは、母親の妹だった。恋愛のれの字もない甥っ子を心配して、時々こうやって会ってみないかと話してくる。凛の時も同じだった。正直恋愛には、うんざりだった。10代最後の冬。俺は、付き合っていた彼女にこう言われた。
「龍次郎は、面白味がないのよ!セックスも単調で、デートだってセンス悪い。特に、セックスなんて自分勝手だから下手くそなのよ」
沢山の人がいるファミレスで彼女は、叫んだ。俺は、顔から火が出る程、恥ずかしくて泣きそうだった。わかったって言おうとしたけど、声が出ない俺に彼女はドドメをさすように叫ぶ。
「セックスは、ただ、いれればいいってもんじゃないんだから!私がやって欲しい事なんか何もしてくれないじゃない。下手くそ!そんなんだから、龍次郎といるの楽しくないのよ!若いのよ!年寄りみたいな単調なセックスなんかつまらないわよ!」
セックス、セックスと恥ずかしげもなく叫ぶ彼女…。何も言い返す事が出来ない俺。
「龍次郎との三年は、無駄だったわ!さよなら」
そう言って、彼女は立ち去って行った。恥ずかしさと悲しさで、消えてしまいたくなった。俺は、逃げるようにファミレスを出て行った。周囲の視線が、刃物みたいに刺さるのを感じたし…。女子高生達が、クスクス笑いながら俺を見ていた。真っ昼間のファミレスで、セックスが下手くそな面白味のない男だと叫ばれた男がこの世の中にどれだけいるだろうか?
俺は、彼女と、そのまま長く付き合って結婚するのかな?って思っていた。初めての彼女だったから…。
「龍君、聞いてる?」
おばちゃんの声に俺は現実に引き戻される。
「だから、会わなくて大丈夫」
「何か、彼女と同じような目をしてるのねー。龍君も…」
「その子も同じ目をしてるの?」
「そう!だから、龍君にピッタリだって思ったのよ」
「会ってみようかな」
同じ目と言われて、何だか会ってみたくなった。
「名前はね、大月凛さん!おばちゃんが、場所と日にちと時間は手配しとくからね!決まったら、連絡するから」
「わかった」
そして、それから8日後。おばちゃんからの連絡で俺は、凛に一週間後に会う事になった。
初めて、凛を見た印象は今でもハッキリ覚えてる。
【綺麗だけど、ない】




