深く考えんなや
「アホ」
まこは、竹串で俺の手を軽く叩いてくる。
「危ないなー」
「危なくないわ」
そう言って、別の串を口に入れる。
「あのな、龍と今はすんの嫌やねん!わかるやろ?龍かて、なった事あるやろ?」
「わかってる」
「いつか、気が変わったら、向こうからしてくれるから……。そんな悲しい顔すんなよ」
テーブルの下で、靴をトントンと当てられている。
「大丈夫」
俺は、まこを心配させないようにニッコリと笑って見せる。
「龍も同じやったりした時あったんやなー。その顔は!」
「まあな!まこだってわかるだろ?」
「わかる、わかる。俺もせやったわ。そこ乗り越えんの大変やったわ」
「出来るなら、乗り越えてあげたいよ」
俺は、そう言ってビールをいっきに飲み干した。
「おかわりやな!」
まこは、そう言って店員さんを呼ぶ。
「串カツとビール2つおかわりな」
「かしこまりました」
店員さんは、お辞儀をしていなくなる。
「龍、難しいな…。命やから、出来ますなんて簡単にはよう言えんわ」
「そうだな」
店員さんがビールと串カツ盛りを持ってきた。
「龍は、凛ちゃんと二人でも生きて行くつもりなんやろ?」
「当たり前だ!だって、俺にとって凛は必要な人間だから」
「そやったら、ちゃんと伝えなアカンねんで!わかるか?」
まこは、そう言って串カツを食べている。
「ちゃんとが難しいな」
「せやなーー。やけど、伝え方、まちごうてもうたらいななってまうで!」
「まこ……そんな言い方……」
俺は、ビールをゴクリと飲んでまこを見つめていた。
「ホンマの事やろ?だって、現に凛ちゃんには傷を癒してくれる相手が存在してんねやから」
「確かにそうだな」
俺は、串カツを取ってから食べる。
凛には、もう相手がいるんだよな……。
ちゃんと伝えなくちゃいなくなっちゃうんだよな……。
「龍、顔怖いで」
「あっ、ごめん」
「龍はな!真面目やからなーー。そこがええとこやけどな」
「難しく考えすぎだよな」
俺は、まこにそう言って笑った。
「せやなーー。龍は、小難しいかもな。でも、ホンマ!昔から、観音菩薩的なとこあるやん?」
「何だよ!それ」
俺は、笑ってビールを飲んだ。
「龍の強みは、そこやで!」
「観音菩薩?」
俺は、まこの言葉に首を傾げる。
「せや!観音菩薩!」
「それって何したらいいんだ?」
「何したらって」
俺の言葉に、まこはハハハハハと大笑いした後で、「何もゆわんと、龍は黙って優しいしとったらええんや」とまこは言った。
「そんな事でいいのか?」
「そんな事が普通の人には出来んのやで!目くじら立てて怒ったり、問い詰めたり!した方がええやろ?スッキリするし」
「そうかな」
俺は、まこの言葉に首を傾げる。
「それそれ!それが龍のいっちゃんええとこや」
まこは、また笑い出した。
俺は、もう凛を追い詰めたくはなかった。