まことと再会する
「じゃあ、今日はこれで終わりだな」
「すみませんでした。皆月先輩に迷惑かけて」
「いいって!じゃあ、俺は、晩御飯食べに行くから」
「はい!俺も失礼します」
「じゃあ、また明日」
「はい」
後輩がいなくなって、俺は、まこが送ってきた住所に向かって歩く。
凛を一人にしたくなかったな…。
「よう!色男!悩み事か?」
「まこ!お疲れ」
「お疲れさん」
今日は、昨日と違って串カツ屋さんに連れて来てくれていた。
「昨日も何やしけたつらしてたけど!今日も同じやな」
「うん」
「凛ちゃんとまた何かあったんか?」
「何か落ち込んでたんだよ」
「今朝もやなかったか?」
「うん」
まこは、席につくと串カツの盛り合わせとビールを二つ頼んでくれる。
「情緒不安定なんやなー」
「お待たせしました」
「おおきに」
つきだしとビールが渡される。
「乾杯」
「乾杯」
ゴクゴクとビールを飲んだ。
「凛ちゃんも色々考えとるんよなー。浮気バレたらどうしようとかな」
「バレても、別れるつもりないけどな」
「相手がめちゃめちゃ悪い奴やったら、憎めるけどなー。そんな落ち込んどる嫁を支えてくれとるって事は、ええ奴やろうしなー」
「串カツ盛り合わせです」
「おおきに」
まこは、俺に串カツを差し出してきた。
「一回ドボンで食うんやで!わかっとるか?」
「わかってる」
俺は、串カツを手に取って、ソースにドボンとつけてから食べる。
「あっついけど、うまい」
「やろー!うす衣やしな!絶品やで」
まこは、そう言って食べてる。
凛が、今、一緒にいる相手は、いい奴なんだよな。さっきのまこの言葉を考えていた。
「子供出来へんって、何か人間として終わってるみたいな扱いされるやろ?男でも惨めやねんから…。女は、相当やろうな」
「そうだよな…」
「頭、真っ白にしてやれへんやろ?」
そう言って、まこは頭をトントンって叩いた。
「最中って事?」
「せや!してる時に、頭中から赤ちゃんが欲しい気持ち追い出してやれんやろ?」
「そうかもな。考えた事なかったけど…。言われてみたら、そうだよな」
「やろ?やけど、浮気相手は、真っ白に出来るねん。頭から、赤ちゃんを取り出せんねん」
「どうやって?」
俺は、まこが言った言葉の意味を知りたくて尋ねる。
「簡単や!」
「簡単?」
「避妊しとるからや」
まこは、小声でそう言ってウィンクした。そっか、妊娠しない前提でセックスをしてるから…。だから、頭が真っ白になるのか…。
凛は、浮気相手に抱かれて、どんな顔をしてるのかな…。俺とするより、幸せな顔をしてるのかな…。