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目撃したあの日…

夜中に目が覚めたけど、凛は隣に眠ってなかった。俺は、起き上がってキッチンに向かった。


「どうして、私は赤ちゃんが出来ないの!みんな、こんなに出来て…。死んだら出来るのかな?」


俺は、凛の言葉に心臓が痛んだ。追い詰めてる。俺は、凛を…。


「ドラマも映画もネットも小説も漫画も、簡単に妊娠してるじゃない!何で、私は出来ないのよ。何で、簡単に出来ない人の話しはないのよ」


凛が苦しんでるのがわかってる。でも、俺はまだ赤ちゃんを諦められなかった。


「早く生まれ変わればいいんだよ!そしたら、私、赤ちゃん産めるんだ。こんな人生なんかいらないもん。欲しくないもん。選んでないもん」


凛は、棚から何かを探してる。直感で、俺は凛が死のうとしてるって感じた。


「はぁーぁ!トイレ」


わざと、デカイ声を出してドアを開けた。


「りゅ、龍ちゃん」


凛は、大きなカッターナイフを握りしめてるのがわかった。


「飲んでたの?」


「う、うん」


「そう」


俺は、気づかないフリをしてトイレに行った。

戻ってくると、凛の手にあの大きなカッターナイフは握られていなさそうだった。


「凛、寝よう!いなきゃ、寝れないから」


「うん、待って」


「待ってる」


「部屋で」


「ここで、待ってる」


「わかった」


凛は、ビールを飲み干してシンクに置きに行ってから戻ってきた。


「じゃあ、行こう」


俺は、凛の手を引っ張って寝室に来た。よかった!生きてる。凛が、生きてる。いなくならないように、抱き締めながら眠った。


その日の夜、帰ってきた俺は、凛が誰かに抱かれたのに気づいていた。でも、その誰かのお陰で生きようとした事にも気づいた。


言わないでいいか!凛が、生きる事を選んだ事実だけで充分だったから…。だから、凛が不倫しててもいいと思った。


だから、俺は黙認した。見守ろう。それが、凛にとって幸せなら…。俺は、凛が生きているだけで幸せだから…。それから、何事もないように過ごす。凛は、前よりも明るくなった気がしていた。


「いってきます」


「いってらっしゃい」


仕事に行きながら、考えるのは凛が望んでいた人生をあげられなかったって事だった。


「おはよう」


「おはよう」


「また、深刻な顔してるな!そんな顔してたら、赤ちゃん来ないって怒られるだろ?皆月」


「それは、ないよ」


「ハハハ!俺とは違うよな」


海東繁(かいとうしげる)は、同期だった。俺と同じ、子なしだ。


「そんな事は、ないよ」


「まあ、お互い子なし同士!仲良くしような」


そう言って、海東はいなくなった。子なし同士か…。海東は、選択子なしだった。俺達、夫婦も選択子なしだったら違ったのかな…。

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