体力育成大会 2
ーーーただいまより、体力育成大会を開催致します。
喧騒に紛れてアナウンスが聞こえる。そう、ついに今日は体力育成大会の当日。最初は転生前の体育祭と同じようなものかと思っていたが、実際には全然違った。個人競争にするだけあって、クラス内の雰囲気が殺伐としていたのに加え、あらかじめ種目の練習ができないよう事前にどんな種目があるのか知らされなかったのだ。つまり、本当に今日がぶっつけ本番の体力を育成する日らしい。練習は出来ないと言ったが、勿論何も対策を取らずにこの日を迎えた生徒は少ない。少しでも当日自分の魔力を応用できるよう、放課後に残って鍛錬を重ねる生徒ばかりだった。そして自分もその内の1人だったが、如何せん魔力自体が少ないため、残念ながらまともな練習にはならなかったのだった…。
(あいかわらずここ最近、周りからの目が冷たかったなぁ。まぁ、お前がなんで残ってるんだって感じだったよね。)
とにかく、始まってしまったものは仕方がない。成績がかかっている今日の大会、自分にできるなりの力を振り絞ってやり遂げるしかないのである。
「第一種目は、精霊とのバトルです。」
アナウンスで本日1つ目の種目が発表された。
(精…霊!?バトル!?え、精霊ってたしか、この世界じゃ神聖なものだったはずなんだけど…バトルなんてしていいの!?)
驚いたのは私だけじゃなかったようで、周りの生徒たちもザワザワとしだす。
「精霊と闘うなんて聞いた事ないよ〜、適う気がしない…」
隣でエマもびっくりしていた。それもそのはず、精霊は普段滅多に人の前には現れず、馴れ親しむこともせず、森の奥深くや洞窟など辺鄙なところに存在しており、何か大災害が起こる時などにしか姿を表さない。そうして人間ではどうしようもない時にのみ精霊が集まり守ってくれるため、この国では精霊は神聖なものとして見ているのだ。しかも、精霊は魔力は使わず精霊力というものを使う。つまり、根本的に魔力とは違う性質の力を扱い、さらに、この精霊力は魔力の数倍も強力なのだそうだ。
(そりゃそうだよね、精霊力は大災害に対抗できるだけの力なんだから、私たち生徒が扱う魔力なんかじゃ到底敵わない…。学校側は何を考えているの…?)
なにか考えがあるのだろうか。常識的に考えれば普通の人間が適うはずはないバトルなのに、わざわざ成績が関わる大会の種目として提示されるなんて。
ーーガガガガガ
突然目の前の広場の地面が割れ、バトルステージが現れる。
(こ、こんな演出いたのか?一体いくらお金をつぎ込んだんだ…)
ナズナは若干引いてしまったが、すぐにそんなことを考えてる暇ではないことに気づく。
(やばい、私1種目目から脱落するかもしれない!)
「エマ…私が精霊にボコボコにされたらステージから運んでね…お願いします…」
「ええぇ、ナズナちゃんそんなこと言わないでー!」
既に涙目状態のエマと、ボードに掲示された対戦相手と順番を確認する。そして、私は驚愕することになる。
「…え。」
一方、教員達が集まる採点席では、今日もあいかわらず濃い隈に無精髭がトレードマークになってしまっているナズナの先生が真剣な面持ちで生徒たちを見ていた。
「さて、今年こそは見つかるのかねー…。」