第8話 魔物襲来
誤字脱字や物語の矛盾点など、ありましたらご指摘いただけるとありがたいです。
この時のことを後になって思い返してみると、まだ魔物に対しての現実味がなく。資金力と環境によってある程度の安全が確保されていたことによって、どこか気が緩んでいたのだと思う。
そもそもただの高校生が、このような誰も経験したことのない未曾有の事態に、完璧に対応することができるはずがなかったのだ、しかしこの時の俺はできる限りのことはしていたし、皆がそれで十分だと思ってしまっていたのだ。
「ウゥーーーーーーーーーーーーーーー」
屋敷内に警報が鳴り響いたのは時刻にして午後の9時を過ぎたころだった。正月のこの時間は外はもうすでに暗闇で、屋敷の外は何も見えなかった。俺は自室で今日や明日以降のことを考えながら、1日中神経を張っていたのもあってそろそろ電気を消して寝ようかと思っていたころだった。そう屋敷中が今までと同じように、普通に電気を使用していたのだ…。
突然の警報にうとうとしていた頭はすっかり目が覚め、即座に飛び起きて屋敷の警備室に向かった。
警備室にはすでにケビンはじめ警備員が何名かと、爺や屋敷の住人が集まってきていた。
「何があった、説明してくれ!」
そう俺が尋ねると、モニターを見ていたケビンが。
「屋敷の周りに何か人影が写っている。でもなんだこれ?見てくれ。」
といってきた。そこでモニターを見てみると、何やら人影がモニターで確認する限り10数名、門やフェンスに何かをぶつけて騒いでいる。助けを求めているわけではなさそうだ。一瞬思考が停止しかけたが、現状を打破するために頭をフル回転させると「はっ」っとした。
まだ実物は見ていないが、神とやらが言うには今の世の中、人類とそれの敵である魔物、魔王が存在するという。その魔物が襲ってきているのではないかと…。
そう考えるとつじつまが合う、この屋敷は山の中腹に存在し、魔物たちがどこにいるのかわからないが、現状電話回線なんかが使えないことから、電気、水道といったライフラインが世界中で止まっていてもおかしくない。
となると真っ暗な夜に煌々と明かりを焚いていては、自ら見つけてくださいと言わんばかりではないか!!
「みんな、もしかするとあいつらが魔物というやつらなのかもしれない。こんな真っ暗闇に普通に明かりを焚いていたからよってきてしまったんだ。
今すぐみんなを大広間に集めて、すべての明かりを消してくれ。大広間ではとりあえず窓のカーテンを締め切って、蝋燭の明かりだけで。爺、みんなの先導よろしく!、そしてケビン達は武器を所持して、屋敷の周りの塀などが破られていないかの確認。決して戦闘はせず確認だけでとどめて、まずはみんなで合流しよう!」
そういうと皆一斉に自分の仕事に取り掛かりだした。警報をとめて監視モニターを見ると、とりあえず中に入っているものはいなそうだが。俺も大広間に向かう途中にみんなに呼びかけながら、外に目をやると。屋敷の明かりが消えたことによって月明かりに照らされ外のやつらが見えた。
身長は皆同様に170㎝程度、筋肉質でスポーツ選手のような体系をしていて、服装は腰布のみ、手には木を削ったような棍棒を持ち、それをガンガンと塀や門にたたきつけている。
見るのは初めてだか本能で分かる、あれは敵だ。おそらく魔物だろう。
屋敷内の点検をしながら大広間までやってくると、みな蝋燭の明かりだけを頼りに肩身を寄せ合っておびえている、そうしていると外を確認しに行っていたケビンたちが戻ってきた。これで一応皆の無事が確認できた。
「坊ちゃん言う通りあいつらは人間じゃなかったですぜ、あんな気味悪い連中初めて見ました。屋敷の周りを確認したところ正門前に4体、塀の北側、西側、東側に3体ずつ中に入ろうと棍棒をたたきつけていました。」
この屋敷の構造を簡単に説明すると、山の中腹に位置していて、形は横長の長方形をしてる。外周をぐるっと塀がかこっており、南に正門、北に裏門、そして塀の内側に庭があり、その中に屋敷の本館がある。そして大広間は正門から入ってきて一番最初に通る、一階の正面玄関からそのまま、まっすぐに進んだところだ。
「おそらくあいつらは明かりにつられてやってきていて、中にいる俺たちが狙いなのだろう、殺して食べることが目的なのか、はたまた殺すことが目的なのか、どちらにしろ友好的にはいかないだろうね。」
俺がそういうと皆少なからず恐怖に顔をこわばらせる。この状態で大丈夫なのは、へらへら笑いながらも目つきは恐ろしく鋭くなっているケビンと、全く表情が変わらなかった爺と、鈴木さんくらいだろう。
「みんな聞いてくれ、このまま騒がれると音によってきてほかのやつらが集まってしまうかもしれないし、この調子だといつ門が破られるかもわからない。だから戦闘班で外に出て奴らを退治する必要がある。その間中ではドアを閉めて万が一奴らが侵入するのを防いでほしい、屋敷内の指揮は爺任せてもいいかな?」
そういうと爺は初めて慌てた表情になって、
「まさか坊ちゃまも戦闘班に入り討伐に向われるのですか!?」
と聞いてきたので
「もちろん、俺のジョブは【死神】だ。この職業のレベルを上げるためにも生き物を殺す必要がある。そしてその相手とは勿論あいつらは魔物たちだ」
と答えた。まだ戦闘経験もなく危険かもしれないが、無知故の蛮勇なのかなぜか大丈夫な自信があった。それにいつかは戦闘を経験しなくてはいけないし、600,000pも使って戦闘力を強化した俺が戦闘に不参加なわけにはいかないだろう。
「それはそうなのですが、坊ちゃまは戦った経験はないですよね?さすがに無謀ではないかと心配ですぞ…」
そうなおも食い下がる爺に対して、ケビンが。
「まあ、五十嵐さん。俺がついているし坊ちゃんの言っていることもあながち間違いじゃない。いつかはやらなきゃいけないことだ、俺がしっかり守るから安心してくれよ。」
と助け舟を出してくれた、そのケビンの発言で爺には渋々納得してもらい、俺を含めて戦闘班6人で屋敷の外に出る、。心配そうなみんなに向かって俺は大丈夫だよって意味の笑みを向けてから扉を閉めた。
戦闘班の内訳は俺と警備員5名だ。もともと警備員は6名いるが、うち一人は戦闘職に適性がなく鍛冶師になっているので今回は万が一に備えて屋敷内の警備部隊として残ってもらっている。
戦闘系ジョブは家政婦の小田さんと柳生さんもそれぞれ戦士と剣士についているが、まだ戦闘経験がないことと、女性ということもあり今回は屋敷内で待っててもらうことにした。
屋敷の扉を閉めるとケビンが俺に向かって。
「さっきはああ言いましたけど、危険なことは事実です。絶対に安全とは言い切れません、今ならまだ引き返せますぜ。」
といってきたが。
「いや大丈夫だ、【死神】というジョブのせいか何とかなる気がするんだ、いい武器にスキルまで購入しといて怖くて戦えませんってわけにもいかないしね。もちろん俺が足手まといになるのが一番迷惑だってことは理解しているから、命を大事にみんなの足は引っ張らないように気を付けるよ、ここではケビンにすべて従う。」
と返すと、満足そうにうなずいて。
「わかっているなら、大丈夫ですぜ。俺も傭兵稼業の時に何度か死線はくぐったが、こういう時は恐怖に足がすくむものから命を落としていくもんだ。坊ちゃん以外もビビんじゃねえぞ!」
と俺も含めてみんなに発破をかけた。ケビンの発破に皆一様に目つきが変わり、これから戦いに向かうのだと肌がチリチリするような感覚になった。
みんなの意識が一つになったところで、ケビンが作戦を話し出した。
「まずやつらを門の中までおびき出す。一ノ瀬、内海、二人は両側から門を開けてくれ、俺が門の外にいるやつらを仲間でおびき出す。
二人は外の4体が中に入ったのを確認したら門を閉めてくれ。二人が門を開けてから閉めるまでの間、七瀬と加藤の二人でそれぞれ守ってやれ。
四人は門が完全に閉め終わったら奴らの殲滅に移行。坊ちゃんは奴らを俺がおびき出している時俺のサポートをしてくれ、細かい指示はその都度言う。あくまでもサポートで無理はしないこと。」
ケビンの指示に皆「「了解!」」と返事をして、すぐさま行動に移していく。ちなみに七瀬が剣士、加藤が槍士のジョブを選択しており、一ノ瀬と内海は同じく戦士だ。皆警棒を腰に差してはいるが、それに加えて七瀬と加藤が簡易アイテムボックスから剣と槍を取り出して、門に向かって歩き出す。
簡易アイテムボックスは体積の制限なので、細長くても体積がそこまででないものはしっかりと収納できるのだ。
屋敷の門は真ん中から内側に開くようになっていて、開けるためには左右の管制塔でそれぞれの門を制御しないといけない、電動で開くのだがスイッチは押さないといけないからだ。
二人ずつ左右の管制塔に行き、準備が完了したところでケビンが二つの門をつないでいたチェーンを外した、そしてそのケビンの5メートルほど後ろに俺は立ち、手には死神の短剣を持っている。
これから戦闘が始まるという状況に、心臓はバクバクと聞いたことないほど大きくなり、自分が興奮状態にあることがわかる。落ち着くために深呼吸をして、短剣を構え、そのタイミングを待つ。
ケビンがチェーンを投げ捨てたことを合図に「ジーー」と門の開く音が響き、少しずつ門が開いていく。月明かりの中、緑色の肌をした化け物たちが、門の隙間から姿を現す。
戦闘開始だ!
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