第58話 急激なレベルアップ
誤字脱字の報告いつもありがとうございます。
今後ともございましたら、教えていただけるとありがたいです。
何とか七分間逃げ切り、生き延びることに成功した俺は、その場でしばしの休憩をとっていた。
ビルの下では、いまだにぎちぎちとスカルセンチピートが動こうとしている音が聞こえているが、のぞき込むと全く移動していないので、取り敢えずほうっておいても大丈夫だろう。
しかし、本当に今回は紙一重だった。紐なしバンジーもそうだが、それまでも何度も奴の攻撃を間一髪で躱しており、生きた心地がしなかった。
結果としては、逃げ切ることに成功し、魔界の外に出たことで活動限界を迎えたであろうスカルセンチピートを撃退することに成功した。
まだとどめは刺していないが、全く動けなくなっている奴を倒すことは訳ないだろう。奴の耐久力の高さから、全くダメージを与えられないことも考えられるが、その場合はほかの方法を考えるとしよう。
そうして、少し休憩したのち、ゆっくりとビルを下り、スカルセンチピートのところまでやってきた。
今こうして見ると、やはりとんでもない大きさだな。こんな奴に襲われていたと思うとぞっとする。
しかし奴は俺がどんなに近づいても体を少し動かすだけで、全く身動きが取れなくなっている。そんな奴の頭の中心に、赤い石が見える。これが奴らスケルトンたちのコア的存在の石だろう。
健全なときは狙う隙も無い化け物だったが、こうなってしまえばこっちのものだ。全く動けない奴のコアに向かって大鎌を振りかざす。そうすると一撃では破壊できず、少しかけらが生まれるくらいで、奴の断末魔のような声が響き渡る。
奴が苦しんでいることとかけらが生まれることから、破壊できるとわかった俺は、その後も何度もコアを攻撃し、何とか破壊することに成功した。
そうしたところ、もちろんこれだけの大物だ。得られる経験値はいつもの比ではなく。大幅なレベルアップを果たした。急激に上がりすぎて、体が少し火照ったように感じる。
今のステータスがこれだ。
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名前:黒神 色人
種族:人族
所属ギルド:【KUROGAMI】/役職:サブリーダー
職業:死神
ジョブレベル:12
必要経験値:811/1300
【ステータス】
|M P:10+(10×0.9×12)+(10×0.1×15)|=40/133
|攻撃力:8+(8×1.2×12)+(8×0.4×15) |=171
|耐久力:8+(8×0.5×12)+(8×0×15) |=56
|速 度:13+(13×1.2×12)+(13×0.4×15)|=272
|知 力:10+(10×0.8×12)+(10×0.1×15)|=121
【所持スキル】
暗殺術 レベル 4 【属性付与(毒)1MP】【切れ味強化 1MP】【無詠唱 1MP/m】【無音 1MP/30s】
鑑定 レベル 3 【物品鑑定 1MP】【魔物鑑定 1MP】【人物鑑定 1MP】
鎌術 レベル 2 【スラッシュ 4MP】【切れ味強化 1MP】
【所持SP】
886,620P
【装備品】
死神の短剣 レベル 15 【形態変化 (短剣・鎌)】【隠形 1MP/m】
【その他】
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一気にレベルが12まで上がり、死神の短剣のレベルも15まで上がった。そして今回のレベルアップでまたしても死神の短剣にアビリティが追加された。
なのでもう一度死神の短剣を鑑定してみたところ、次のような結果になった。
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【死神の短剣】:
職業【死神】専用武器。世にも珍しい成長する武器であり、また生き物を傷つけることによって自己修復する。
レアリティは最高ランクの神級だが、今の段階では中級レベルの力しか持たない。今後所有者とともに成長することで真価を発揮する。
成長し【形態変化 】が可能になった。現在可能な形態は短剣、鎌。
成長し【隠形】が可能になった。効果は一分間、闇に紛れてほかの者から視認しづらくなる。
レベル15
攻撃力 68
【ステータス加算】
M P:+(基礎ステータス×0.1×武器レベル)
攻撃力:+(基礎ステータス×0.4×武器レベル)
耐久力:+(基礎ステータス×0×武器レベル)
速 度:+(基礎ステータス×0.4×武器レベル)
知 力:+(基礎ステータス×0.1×武器レベル)
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武器そのものの攻撃力もそうだが、この新しいアビリティを覚えるというのもかなりこの武器の強いところだと思う。
これに加えてステータス加算もあり、どんどん強力になっている。
今回は魔界に足を踏み入れてしまったがために、スカルセンチピートのような、現時点では太刀打ちできないような化け物から逃げまどう羽目になった。しかし何とか生き延びたことにより一気に12までレベルを上げることができた。
おそらく、こういうレベルアップはケビンの戦鬼や叔父さんの刀神では不可能だろう。生き物の命を奪うときのみ経験値を取得でき、その経験値は生き物の強さによって決まっているという、死神という職業ならではの経験値の稼ぎ方だ。
こんなことはそう簡単には行えないが、もらえるものはもらっておく精神で、活用していこう。
さて、いきなり始まったスカルセンチピートとの鬼ごっこもこれで終わりだ。今目の前にはとても大きな骨の残骸がある。
現状、まだまだ魔物の素材を活用して、何かを作るという技術は確立しておらず、これを持ち帰ることも出来ないので、今ここで換金するのが一番だ。しかしここまで大きい魔物もはいなかったし、みんなに見せたい気持ちもある。
ただ口頭で説明するよりもいいだろ思い、一部持ち帰ることにする。レベルも上がった影響か、力も強くなっているので、少し無茶はできそうだ。
そう思い、俺はスカルセンチピートの頭部を切断し、胴体部分のみを換金して、頭部は持ち帰ることにした。
頭だけでも軽自動車ほどの大きさを誇るこの死体は、中が空洞であることもあって、何とか引きずることが可能だったので、引きずって本部に戻る。
本部に帰る道中、何度か通れないところは持ちあげて通り、近くを通ったことで音に反応して襲ってきた魔物は、強化されたステータスで瞬殺する。
今の俺では、ゾンビやグール、スケルトンたちなど、ここらへんで出る魔物たちは基本的に簡単に倒せる相手ばかりになってしまった。
しかしどんなに戦闘自体が簡単になっても、得られる経験値は同じなので、戦闘が簡単なうちに経験値をどんどん稼いでいきたい。こうして強くなれるという点においては、俺の職業【死神】というものに感謝しかないな。
そうして半ば戦闘は作業と化しながらも、本部に帰還した。仲間で持っていくと一般の避難民の方たちを脅かしてしまうので、警備班が鍛錬を行っている建物の近くまでもってきて、そのわきに置いた。
「なんですか、これは!?」
ちょうど、頭部を置いた瞬間に後ろから声がして、振り返るとそこにいたのは青山さんだった。
とても驚いた様子であわあわしているのが面白くて、少し笑いながら、
「今日倒した魔物だよ、ちょっと説明するのに実物があった方がいいと思って、頭だけ持ち帰ったんだ」
とにこやかに言うと、
「こんな大きな魔物を一人で!?さすがに驚きましたね……どんな手を使ったらこんなことができるんですか……」
と今にもあごが外れそうなほど大きな口をあけながら驚いているので、青山さんには今ここで今日あったことをかいつまんで説明したところ、何とか納得してくれた。
そして納得してくれたが、怒られてしまった。
「魔界に活動限界ですか。まだ推測の域は出ませんが納得はできます。それにしても何を考えているんですか? いくらあなたが強くても下手をすれば命を落としてもおかしくない行動ですよ!」
戦闘に勝利したことと、この魔物の死体によって忘れかけていたが、この反応が普通だろう。
「確かにそうだね……これって怒られると思う?」
そう聞くと、
「うーん、どうですかね……正直黒神家の皆様はどこか浮世離れしていますから、意外と納得されるかもとも思います。しかし、一般的な感覚から言わせてもらうと、まだ高校生の色人さんがここまで危険な行為をすることは、注意してしかるべきかと」
さすがは警察官だ、なんだかしっかり叱られたのは久しぶりで、少しうれしくすらあった。
俺はこのことを報告したときにどんな反応なのか気になり、それもあり早く報告したくなってきた。
その後は落ち着いた青山さんが、この存在を警備部隊の人たちに教えてくれて、そこから話を聞きつけた叔父さんがやってくることになった。
叔父さんはどんな反応なのだろうか。いろいろあってテンションがおかしくなっていたのだろう。ただそれだけのことなのに、なぜかすごいワクワクしながら、叔父さんの到着を待つこととする。
色人がこれかどんなに強くなるのか、書いていてとても楽しいです。
今まで地味な戦いが多かったですが、これからは段々と敵も強くなり、戦いが派手になっていく予定です。
この作品の良さを残しつつ、派手な戦闘シーンも描けたらと思っています。
これからもゆっくりとですが成長していく主人公をよろしくお願いします。




