第39話 ギルド【KUROGAMI】
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感動の親子の再会とはならなかったが、こんな世界で誰一人欠けるこ顔を合わせることができたことは喜ばしい。とりあえずソファーに座って落ち着いて話をしよう。
「まあ、何はともあれこうして合うことができたことは喜ばしいな。色人もいろいろ大変だったろう。」
「そうだね、惑いはあったけど何とかやってるよ。いくつか分かったこともあるし、それに何といっても屋敷のみんなが手伝ってくれたからね。」
今思えばかなりハードな数日間だった。初日から死にそうになり、その後も定期的に命の危険と隣合わせの毎日だった。
「そういう父さんたちも大変だったんじゃない?今見た感じある程度落ち着いている感じはするけど、いきなりこうはならないでしょ?」
俺としては父さんたちの現状のほうが知りたい。正直屋敷にこもっていると周り情報が入ってこないのだ。
「そうだな、まずはその辺から話をしようか。神が世界中を改変してから、こっちの方はかなりの混乱が広がった。
人々は戸惑い、突如として現れた魔物どもから逃げまどい、そして人間の不安は伝染していく。とにかく地獄絵図だったよ。
そこで私はこの本社ビルとその周りにあるいくつかの関連会社のビルなどをひとまとめにし、そこで人々の避難と、従業員の保護をすることにした。もちろん学校などに避難した人達も多くいたがな」
人が多いとそれだけ集団心理でパニックになる人もいるだろう。それをまとめるというのは並大抵の苦労じゃないはずだ。
「そこで一番問題だったのは、通信手段の欠如だ。フレンドチャットなどは存在するが、これは現状そうやすやすと使えるものではないし、改変後に出会っていないと使えない。
電気、水道などのインフラ設備も使用できない今、連絡を取ることができなかったんだ。その結果何が起こったかというと、あらゆる治安維持装置が機能しなくなり、あたりは無法地帯と化すとこだった。
もちろん警察、自衛隊はその中でも人命救助に努めていたが、国家というものが機能していなかったのも事実だ。
そこで我々はギルドを設立し、その中での治安維持も担うという選択に出た。事実上の独立だな。」
なるほど、独立か。まあそうなると俺たちも実質独立しているよなものだし、おんなじか…。いやちょっと待てよ、
「え?独立って、そんなことになってるの!?トップは父さんだよね……、じゃあ王様みたいなこと?」
いきなり規模のでかい話になったので、頭がついていかない。どうなっているんだ?
そういうと父さんは面白そうに笑い、
「いや、そんなたいそうなもんじゃないよ。今だけの暫定的な措置だし、王を名乗っているわけじゃない。ギルドという組織のトップに立ち、治安維持も行っているというだけだ。まあまだ数日しかたってないからこれから行うが正しいがな。」
といってきた。確かにまだまだ日にちもたっていないし、連絡手段がない現状、仕方ないのかもしれない。
「なるほどね、じゃあ国が落ち着いてきたら、それで役目は終わる暫定的な立ち位置ってことか。」
そういうと、父さんは困ったように話をつづけた。
「いや、そういうわけでもないかもしれないんだ。最初はみんなをまとめて今を乗り切ろうというだけだったのだが、情報収集のために各地に人をやったら、どこも地獄絵図で、まとまっていないところは悲惨なものだった。
国を名乗るつもりはないが、今のところは皆を守るためにしっかりと統治するという方向で話が進んでいる。自警団みたいな感じだな。
とりあえず私がトップとしてほかにも私たちのようにギルドを立ち上げたところと協力して魔物と対抗していくことで話が通っている。
まだ先のことはどうなるかわからんが、今後はそういう状態がまずはつづくと考えられるし、数年後に人々の生活が落ち着いてきたとして、誰もがポイントでなんでも帰るような世の中で、以前と同じ仕組みが通じるとは思えん。
その辺も併せて考えていかなけらばならない。」
そういって、疲れた様な表情を浮かべた。段々と落ち着いてきて、現状を整理すると、確かに父さんの言っていることは恐ろしいくらいに合理的であり。
ここまで体制が整えられているのは驚異的だ。ただ屋敷のみんなを守るだけでよかった俺とは違い、皆をまとめて復興させていかなくてはいけない父さんの気苦労は相当なものだろう。
本当に今後のことはわからないが、現状魔界を見たものとしては、あの軍勢が攻めてきただけでここは崩壊すると思うし、とにかく早急にまとまる必要があるのだろうと思う。
「そういう感じになっているのか、となるとここは今父さんのギルドの管理下みたいな位置関係なの?」
「そうだな、このビルを中心に、半径数百メートルを安全地帯として、今バリケードなどを作成しているところだ。今度安全地帯を増やしていき、避難している人たちが普通に生活していけるまでにはどれだけ時間がかかるかわからないが…。」
「じゃあここに叔父さんがいるのも」
そういうと、今まで黙っていたおじさんが話し出した。
「そうだな、俺を含め警察関係者がこのギルドの警備を担っている、同時に治安維持も。一般人の戦闘行為なども今後認めていく予定だが、現状は志願したものの中で適性を見てから警備班に組み込んでいっている状態だ。」
なるほど、ここまで大規模になると、みんなに戦闘訓練をしていたら統治が難しいから仕方ないのだろうが、不満がたまりそうな方法だな。
そんな俺の表情を読み取ったのか、父さんが
「いや、初日から戦っているお前の方が珍しいのだぞ。普通は戦うっという選択肢を選ばなくていいのならそうするもんだ。
まあスキルやステータスの力がわかってきた今となっては、この力を得ることができるのに強制するというのも難しいというのがわかっている。
しかしそういう不満もある程度の平和が確保されて初めて出るものだ。そういう不満の種を見逃さないようにしつつも、そこに関してはこれから考えていくよ。」
と答えてくれた。確かに言われてみれば、命の危険がないならその方がいいだろう。現状そのような甘い考え、よくないということがわかっている身とすれば危ういと感じるが。
まだ数日でそのことに気づけというのも酷なことだろう。志願した人は戦闘に参加できるというだけ、まだましなのだろう。
その後おじさんに聞いた話では、現在は先ほど言っていた統治地域を簡易的なバリケードで囲って、その中の安全の確保と、バリケードの設置、治安維持、周辺の捜索、魔物の退治などを警備班が行っているそうだ。
現状定期的に押し寄せる魔物を討伐するだけで精いっぱいであり、それ以上のことは行えていないようだ。これだけのことをしているがいまだに周辺では何人もの人がなくなっており、現実は厳しいようだ。
今後はほかの避難所に避難している人たちの、受け入れなども積極的に行っていくための準備をしているところだとのこと。
いきなりこれだけのことをこなせる父さんはさすがとしか言いようがない。
「とりあえず、色人。お前もギルドにはいれ、ギルドの受け入れ権限も許可する。」
「わかったよ。」
そういって、俺はギルドに入った。
ここでギルドについて詳しく説明しておこう。以前ギルドはフレンドの拡張版みたいなことを言っていたが、詳しくはこうなっている。
まずギルドマスターをトップに置いており、その下にサブマスター、リーダー、サブリーダー、と役職がある。この役職を持っていないとまずほかのフレンドをそのギルドに加入させるとができない。
そしてギルドにはルールという項目が存在し。このルールを守ることを条件に参加する。このルールを破った場合、ギルドから追放処分というのが取れ、そのギルドを追放される。
父さんたちはこのルールという項目を使い法律の代わりにしようということの様だ。
現状はギルドに入っているのは一部の者のみで、ほとんどの避難民はただ避難しているだけだが、今後皆をギルドに入れることを目標にしている。
またこのギルドのルールはどんどん変更が可能なのだが、仕様としてマスターとサブマスターの全会一致でないとルールの変更はできないことになっている。また役職の人数はマスターが一人なの以外は規定がなく、自分より上位の役職の物に任命されると役職に就けるという仕組みだ。
この仕組みを使い、皆を統治するというのが目的だということだ。
そういっている父さんや、おじさんたちは全くやりたくなさそうなのも面白いところだが。
父さん曰く、
「国や、政治ってものは結局のところ儲からないからな。いろいろな面倒ごとを押し付けられるのがおちだ。それに権力ってものはいつか腐敗する。そんなものをやりたいってやつは馬鹿だけだよ。」
とのことだ、まあ本人たちはそれでもこの方法が最適だと考えているようで、ちょっとでも現状をよくしようと試行錯誤しているところの様だ。
これだけのことをわずか一週間でやっているのだから、本当に頭がおかしい。しかし今の世の中そんなリーダーが必要なのだろう。
ということで、取り敢えずギルドに入り、サブリーダーの称号を得た。ちなみにどうでもいいことだがギルドの名前はKUROGAMIと黒神をただローマ字表記しただけのものだった。
しかしまだまだ話すことはあるので、ギルドの話は一旦飲み込んで、今度は俺の話をすることにする。
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