001.1 とある小鴉の心中
SS挟みます。
その理由やサブタイトルに関しての疑問は、後ほど活動報告の方に記載させていただきます。
ではでは。
私はピーナツ。
少し物書きの出来るただのカラスだ。
うむ。………自分語りは、苦手だ。情けないが。
自分をそこまで気に掛けたりしないからだろうか。
だが苦手なのは自分を語る事であって、他人に関心がないわけではない。
作業以外の大体の時間も私は他人について考えている。
その9割がエンリィについてだがな。
エンリィ。家名を捨て、森の中でひっそりと暮らすまだ幼き少女。
それに私との最初の出会いまで彼女は1人ぼっちだった。私が増えたところで所詮は1人と1羽。頼れる人はもちろんいない。どう考えても絶望的な状況。
その境遇の中であっても笑顔を絶やさず、懸命に過ごす姿に胸を打たれた。
何とかして支えてあげたい。何かを与えてあげたい。
そう思うのは私にとって当然だった。
私は物書き、それと礼儀作法に幾らか覚えがあった。
エンリィに与えられそうなもの。つまり教養である。
当時は生活を安定させるために必死だったので、そんな暇は無かった。
その間に生活仲間も増えた。
アーモンド、カシュー、スタッチオ、ウォル。
彼らもエンリィの境遇を嘆き、協力するだろうと思っていた。
だが実際にそうしたのは半分だった。
体の構造の問題で出来ることが限られるというのは一応理解してる。
だが協力しようという意思すら見せないのはどうかと感じなくもない。
つい先日生まれたあの黒猫もそうだ。
確かレンゲートと言ったか?
最近はコイツについても考えることがある。
なぜか。
私は奴を警戒している。
今までの魂獣とは何かが違うような、そんな気がしてならない。
ただの直感と言われればそれまで。
だが1つ、根拠として名前が挙げられる。
魂獣は記憶を失くしているはずなのだが、迷いなく自身の名前を口にしたそうだ。
おかげで考えていた名前を使えなかったとエンリィは拗ねていた。
……もっと気にするところはあるだろうに。
篭魂術や魂獣についてはまだ分からないことは確かにある。
今までとは違う魂獣が生まれる場合もあるかもしれない。
だからこそ私が危惧するのは――――
今まで続いていた日常の崩壊。
図らずも奴によってそれが訪れてしまうのではないか。
そんな懸念を常に抱きつつ私は監視する。
有事の際、正しい判断を下す為に。
いずれ来るかもしれない破滅から彼女を守る為に。
その助けになるなら、私は喜んで泥を被ろう。




