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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恐竜が恐竜を殺すだけ

作者: アポロンT

練習程度で軽く書いてみました。

白亜ノ紀を連載中なのでそちらもよかったらどうぞ。

これは、ある日全ての液晶に映された映像を、文字として起こしたものである。


 やあ、ぼくは君達の世界でいうアルバートサウルス・サルコファグスだ。

僕らアルバートサウルスは、有名な恐竜でいうとほぼティラノサウルスみたいな見た目をしているんだ。

今からぼくが話すのは、僕が戦った記録だ。

君達には何の利益もないように感じるかもしれないけど、まあ”最後のエンターテインメント”としてみてって。ふふふ。

神は僕に、「人間への”最後のエンターテインメント”としてみせてやれ」といった。

そして、僕は君達人間の概念 —つまり数は10進法で数えるし、言語は日本語だし、恐竜の名前も君達の分類で話す— 能力をくれた。

そうそう、ぼくはアルバートサウルスだから、アルって呼んでくれて構わないよ。

 前置きが長くなったけど、本編の始まりだ。


 雨がざあざあと降る午後のことだった。

ぼくは餌を求め草原を歩いていた。

すると、100mほど先にトリケラトプスが草を食んでいるのが見えた。

トリケラトプスは群れでいて、おそらく一番若いであろうトリケラトプスを僕は狩ることにした。

若いとは言っても、7mはある。僕より少し小さいくらいだ。

普段ならこんな大きいのは狩らないんだけど、なにしろ三日は食事にありつけていなかったからね。

まず近くの岩場に隠れながらそろそろと移動をしていった。

のこり15mのところで、さすがに気づかれてしまったようで、一頭が叫んで逃げ出し始めた。

少し遅れをとったけど、こちらも全速力で追いかけた。

狙いをつけていたトリケラトプスはもう子供じゃなかったようで、ほかのトリケラトプスにかばわれるような感じはしなかった。

追いついていって、ついに若いトリケラトプスの足にガブリと噛みついた。

足の筋肉が潰され、血がにじみ出てきた。

僕が顎を離した瞬間、血が今度はどぱっと吹き出た。

痛みに耐えかねた若いトリケラトプスは、痛々しい悲鳴をあげ、ほかのトリケラトプスはパニックで逃げてゆく。

若いトリケラトプスは僕から逃げられないことを悟り、こちらに角をむけた。

角をむけられちゃ、迂闊に攻撃はできない。

しばらく睨みあいが続いたあと、若いトリケラトプスはこちらに突進してきた。

突進をぼくはギリギリでかわし、僕の腹に角が擦れた程度で済んだ。

そのままぼくは首筋に向かって思いっきり噛みつき、そして噛みついた部分はバキッという鈍い音を立てた。

勝った—そう思ったけど、相手もなかなかやる奴で、噛みついたのは首ではなく、周飾頭類特有の大きなフリルだった。ぼくが一瞬怯んだ隙に若いトリケラトプスは頭を横側、つまり僕の方へと力強くふった。

さすがの攻撃に僕は倒れこんでしまったけれど、相手も自分の足にある大きな噛み傷からの大量出血で倒れてしまった。

ぼくはすぐさま起き上がり、残った少ない力で懸命にもがいていた若いトリケラトプスの首元に僕は歯を突き立て、力強く、ありったけの力でその勇敢なトリケラトプスの命を絶った。若いトリケラトプスの目が黒くなっていることが、その死を証明していた。


 雨がざあざあと降る、午後のことだった。




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