表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

第7話 突撃! 幼馴染の晩御飯

 

 目を開けると、知らない天井があった。ここはどこだ! まさか謎の組織に誘拐でもされたのかっ!


 ……しかしすぐに思い出す。ここは俺の部屋だ。引っ越してきてから3日目、まだ慣れない。


 俺はベッドから身を起こす。制服を着たままだった。学校から帰宅して疲れていた俺ふは、ちょっと横になるつもりがそのまま寝てしまったらしい。

 窓に視線を向けると、外はすっかり暗くなっていた。結構寝てしまったようだな。


 そういえば腹が空いたな。夕食にするか。しかし料理なんてできないし、コンビニに行くのも億劫だ。


 俺は部屋の片隅にあるダンボールを漁り始めた。たしかこの中にーーおっ、あった!


 取り出したるはカップラーメン! お湯を入れて3分待つだけで食べられるなんて、なんて便利なんだろう。


 チャイムが鳴ったのは、ヤカンを火にかけた時だった。


 こんな時間に、しかも引っ越してきたばかりの俺の家を訪ねてくる人物は、この世界に1人だけーー。俺はドアスコープを覗くこともせずにドアを開ける。立っていたのはやはり予想通りの相手だった。


 日焼け肌の超絶美少女、亀山スバルだ。服装は白の長袖シャツに、ジーパン。地味な格好なのだが、かえってスタイルの良さを引き立てる。


「おじゃましまーす」


「あっ、おい!」


 止める間もなく、部屋へ上がるスバル。そしてちゃぶ台に置かれたカップ麺を見ると、


「あーっ、もしかして夕飯カップラーメンなの?」


「そうだけど、何か問題でもあるか?」


「おおありだよ! 栄養が偏っちゃう。そんなことだろうと思って、ほら!」


 突き出されたスバルの手には、大きな風呂敷包が握られていた。


「まさかこれって……お弁当?」


「当たり〜!一緒に食べよ」


 これはラブコメでありがちな、ヒロインの手料理イベントか! かなり嬉しいんですけど。


 スバルはちゃぶ台にお弁当を広げ始めた。唐揚げに卵焼きに煮物……などなど。大きなお弁当箱に詰め込まれたおかずたちはどれも美味しそうで、思わず唾を飲み込んだ。


「食べていいか?」


「どーぞ! 召し上がれ〜」


「じゃあ遠慮なくいただきまーす」


 まずは唐揚げに箸を伸ばす。


「うん、美味い。外はカリカリ、中はジューシー!」


「よかった〜。口に合ったみたいだね。さ、どんどん食べて」


 次は煮物を食べてみよう。

 煮物といえば料理の中でも難しいことで有名だ。煮崩れたり、焦げてしまったり、味が染みてなかったり。

 しかしこのダイコン、形も美しく、煮汁で綺麗に茶色く染まっている。見た目は完璧だが、果たして味はーー。


「うま〜い! ダシがよく染みていて、味の宝箱や!」


「おおげさだなぁ。普通の家庭料理じゃん」


「いやいやいや! 女子高生でここまで美味しい料理が作れるなんて、なかなか凄いぞ! いや〜、スバルが料理上手なんて知らなかったよ」


「あのー、非常に言いにくいんだけど……。このお弁当作ったのは、ボクのお母さんだよ。料理なんて女の子らしいこと、ボクができるわけないじゃん」


「そ、そっか。そうだよな、はは……」


 スバルの手料理だと思ったのに……残念!!

 しかしせっかくお母さんが作ってくれた料理だ。残りも美味しく頂こう。

 しかしこうもおかずばかりだと、ごはんが欲しくなる。見たところご飯は入ってないようだがーー。

 と、ちゃぶ台の隅に未開封のタッパーがあるのを発見する。


「おっ、もう一個あるじゃん。その中にご飯が入っているんじゃないのか?」


「そうだけど……。やめた方がいいよ」


「えっ、何でだよ? 俺ご飯食べたいんだけど」


「……そこまで言うなら仕方ないな。文句は言わないでよ」


 なぜか暗い表情のスバル。

 なんだ? この反応は。

 その理由は、タッパーの蓋を開けた瞬間に分かった。


「これは……おにぎりか?」


 俺の問いに、スバルは力なく頷く。


 タッパーの中に入っていたのは、到底おにぎりとは言えない、ご飯の塊だった。

 上手く三角に握れなかったのだろう、歪な球状をしており、表面全体に海苔がベタベタと貼り付けられていた。


「おにぎりくらいは作ろうと思ったんだけど……上手くできなくて。ごめんね、ご飯はコンビニで買ってくるよ」


「待った!」


 立ち上がろうとするスバルを、俺は大声で制止する。


「そんなことしなくていいよ。せっかくスバルが作ってくれたんだ。俺はこのおにぎりを食べる!」


「で、でも」


「俺たち親友だろ! 親友が一生懸命作ったおにぎりを無駄にできるか!」


 と、カッコよく言ったもののこれを食べるのは少し抵抗があるな……。いや、これもスバルのためだ!

 俺は目を閉じると、おにぎりにかぶりついた!


「うまい……」


 自然とそう呟いていた。

 口の中に広がるのは、ほんのり塩味に米の甘み、海苔の香ばしさ。俺の知ってるおにぎりの味に間違いない。


 しかしスバルは疑いの眼差しで、


「……本当?」


「本当、本当! おいしいよ!」


 その証拠におにぎりはあっという間に胃の中へ消えていく。

 スバルは微笑むと、


「本当に美味しいんだね」


「だからさっきから言ってるだろ。あー、美味しかった。まだ食い足りないなぁ」


「おにぎり……まだあるよ。食べる?」


「もちろん!」


 俺は2個目のおにぎりにかぶりつく。うん、やっぱり美味い!


「……ボクも料理作れるようになろうかな」


 何かスバルが呟いた。


「ん? 何か言ったか?」


「ううん、何でもない。ほら、まだまだあるからたくさん食べて」


 こうして楽しく、スバルとの夜は更けていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ