焼肉とキシリトールガム -2-
「僕と、付き合ってください」
「嫌です」
僕が勇気を振り絞った、2回目の告白も、あっけなく散った。
しかし、こんなことでは、へこたれていられない。
「どうして、駄目なんですか?僕は沢山お金も持ってますし、社会的な地位も高いです」
そう食い下がると、彼女は長い黒髪の先を弄りながら、応えた。
「なんか、そういうのじゃないんだよね」
「そういうのじゃない……と、言いますと?」
僕が疑問を口にすると、彼女は生あくびを一つする。
そして、びっくりするくらい、細長くて綺麗な指で、僕の全身をゆっくりと撫でるように指差した。
「まず、服装がダサいよね。そこを、ちゃんとしてみたら?」
「分かりました!……そしたら、僕のこと好きになってくれますかね?」
「分かんないけど、今よりはマシになるんじゃない?」
僕は俄然やる気が漲ってきた。
さて、どこへ向かおう? ユニ〇ロか? G〇か? シマ〇ラか?
「その今のアンタが着てる、ユニ〇ロとかG〇かとかシマ〇ラみたいな、
安っぽい大学生コーディネートだけはやめてよね」
おぉっと、すべての選択肢が封じられたぞ!
さぁ、どうする、僕!
僕は一生懸命、頭を悩ませた。
僕の脳細胞よ、この先一切頑張らなくていいから、今だけ頑張って。
そうすると、素晴らしいアイデアが雷が落ちるが如く、僕の脳裏に強烈に降ってきた。
よし、これだ。
これしかない。
僕は咳払いをコホンと一度すると、彼女の目を真っすぐと見つめた。
「では、僕の着るべき服を、僕と一緒に選びに行くというのはどうでしょうか?」
「いや、無理でしょ。だって、ダサい男の横で歩きたくないもん」
そうして、彼女は去っていった。
恐らく、ラコ〇テが正解だったんだろうなぁと、僕は後悔した。
焼肉とキシリトールガム -2- -終-