太陽
自分が自分自身のために生きることは叶わない夢となった。あの人が生きるために自分の全てを捧げることが自分の使命となった。
今は空虚なこの空間にも、見せかけの愛や夢があった。騙し騙し自分は幸せだと思い込もうとしていた。
いくら時計の針が進んでも、自分自身が変貌してしまっても君のことが頭をよぎった。あの曲を耳にしたとき、あの場所を通る度、眠りにつく前。
少しでも隙間をあけると君との思い出で今が雲ってしまいそうだった。
君のことを忘れようと必死にもがき続けた。
君の連絡先や、手書きの小さなメモ紙、気まぐれでくれたプレゼント。
自分の思いに無理矢理蓋をしめるように、二度と蘇らないよう消し去った。
そんな努力も虚しく、消し去ろうとすればする程に、君との思い出に寄りかかっている未練がましい自分を憎たらしく思った。
風の知らせで、君が光の当たる場所で活躍していることを知った。これまで自分が虚栄心のために血生臭い努力をして地位を得た時とは、全く別の、少しの濁りもない喜びを感じた。
こんなにどうしようもない岐路に立たされているのに、他人の幸せを喜べる自分に驚いたが、君だから喜べるのだろう。
もう君と交わり合うことはないだろうけど、君はずっと離れた場所から温かい日差しを送ってくれる。
こんな自分のことは、記憶の中から消し去って欲しい。
でも君のことを思い出して温かい日差しを浴びることだけは許して欲しい。