■最終話 ケイタとマリの大学ノート
メール出来なくてごめん。ケータイ持ってなくて。
返事が面倒だったら読むだけでいいから。
12月4日 マリ
わかった。このノートに色々これから書いていくから。
12月5日 ケイタ
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ジンマシン、まだ治らないね。
このままじゃファンが減っちゃうんじゃない?
モテモテ優等生、ピーーンチ!!
2月17日 マリ
別に減ってもいい。一人いるから。
2月18日 ケイタ
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2年になった途端、中間テストだな。
数学と理科、苦手だよね?
優等生くんが、マリさん専属スーパー家庭教師になりましょうか?
5月13日 ケイタ
嫌なこと思い出させないでー!!
楽しかったゴールデンウィークはもう遠いキオク・・・
遊園地たのしかったね!!
またゼッタイ行こうね。
次こそはジェットコースター乗ろうね(笑)
ってゆうか、なんかシャクだから家庭教師はケッコーです。
試験にゼッタイ出るトコだけ教えて。
5月14日 マリ
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中間の結果、サイアクだった。
ちょっと優等生くん!
地理100点満点って、どーゆーこと?
ワイロとか、そでのした(←あってる?)とか
そうゆう系はよくないと思います。
5月28日 マリ
地理は一番好きだからね。
一日中でも世界地図見ていられるし。
色んな国に行ってみたい。
色んな文化とか言葉とか人とか見たい。
マリさんは何点だったんですか~?
やっぱりスーパー家庭教師が必要だったろ?
5月29日 ケイタ
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体育祭のリレー。
ゴール手前でコケたのはマリのせいだからな。
あれがなければリレー優勝確実だったのに。
しゃべってないで、ちゃんと応援しとけよ。
10月8日 ケイタ
タカハシ君としゃべってた私に気を取られてコケたのね?
それはヤキモチですか?(笑)
優勝してこれ以上カッコいいトコふりまく必要なしです。
カンベンして下さい。
10月9日 マリ
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卒業式だね。
高校生もおわりだね。
高1の12月からはじめたノートも今日でおしまいです。
ぜんぶで9冊になったよ。何回も読み返しちゃった。
ありがとう。
ケイタがいたから、サイコーの高校生活でした。
これからも、よろしくごべんたつのほど。
この後、いつものファミレスに3時ね。遅れないで。
3月1日 マリ
好きだ。
大学卒業したら、結婚してください。
ナナミ ケイタ
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成田空港の一角。
まるで最初からひとつだったかのように、ケイタとマリが抱き合っている。
マリが持つバッグの持ち手には、七色に輝くストラップがやさしく揺れる。
そんな二人の間にヤキモチを妬くように割って入ったタクヤが、片手に持っ
ていたその包みを満面の笑みでケイタへと差し出した。
『ん?』 小首を傾げて袋の中を覗く。
そして不思議そうに取り出したその包みを開けると、そこには毎年必ず食べ
ていたマリ特製のクッキーがあった。
”じゃぁ・・・
・・・来年は、クッキーにするね・・・。”
セーラー服姿のあの頃のマリの姿が甦る。
チョコで蕁麻疹が出ることを知らないマリから貰った、初めてのバレンタイ
ンを思い出すケイタ。
そっと指先でひとかけら摘んで、どこか緊張しながら口に入れる。
それはやっぱり、甘くて、苦くて、切なくて、鼻の奥がツンとした。
それを嬉しそうに目をキラキラ輝かせて見ているタクヤの口に、ひとかけら
お裾分けする。すると、満面の笑みで『美味しいね!』と顔を緩めた。
ふとマリへと視線を向けると、また顔をクシャクシャにして肩を震わせて泣
いている。ケイタは目を細め、マリとタクヤとぎゅっと抱きしめた。
誰にも取られないよう、
ほんのわずかな隙間も出来ないよう、
強く強く、力の限り抱きしめた。
心の隙間が全て埋まるほど、三人の鼓動はひとつになって打ち付けていた。
【おわり】
引き続き、【眠れぬ夜は君のせい】スピンオフ(タケ編、キタジマ編、アカリ編)・番外編(コースケ&リコ)をUPしていきます。暇つぶしにでもどうぞ。併せて【本編 眠れぬ夜は君のせい】も宜しくお願いします。




