撮影現場で…
僕には夢があった。
芸能人になりたかった。
役者に憧れを持っていたのだ。
どの役者も役になりきり、生き生きとしている気がしたのだ。気のせいなのかもしれないが…。
そんな中、僕にも運が向いてきたのかオーディションの話が持ち上がり応募してみることに…。
一次審査をとおり、二次審査へと進んでいくことができた僕はあと少しとドキドキしていた。
それから数日後、二次審査も合格し、晴れて役者の道が拓けた。
嬉しかった…。この日をどれだけ待ったことか。
仕事はアルバイトにしなければならなくなったが、それでも気持ちは変わらなかった。
本格的なレッスンが始まり、緊張や恥ずかしさがあってなかなかうまく演じきれなかった。わかってはいるんだよ。もっと役に入り込まないといけないってことは。
そんな練習が続いてひと月経った頃からか僕は何故か不意にこの部屋で何かを感じるようになった。たまたまなのか偶然なのか僕は霊感があるようだ。過去にもなんだか不思議な体験をした事もある。
そんなある日、僕にもちょい役が回ってきた。出て見ないかと。
早速OKしたよ。通行人でもなんでもいいから出たかったし。
で、撮影場所へ向かった僕は近くまで来てから突然悪寒に襲われた。
風邪でも引いたか?と思ったが、初めての仕事、ちゃんとしたかったので気合を入れて参加した。
緊張しながらも失敗もせずに撮影が終わったことが嬉しかった。しかしその時誰かに見られている感じがしてその場で固まってしまった。他の人達は誰も僕のことに気づいている様子はなかった。そんな時たまたまそばにいたエキストラの1人から声がかけられてハッとした。
「どうかしたの?なんかさっきからなんか気にしてるみたいだから…。」「いや、なに、なんでもないよ。」「ならいいんだけどさ〜。真っ青な顔して立ってるから具合でも悪いのかと思っちゃってさ。」「あ、ありがとう。すみません。心配かけちゃって…。」「いいって、別に。みんな同じ仲間みたいなもんだし。無理だけはしないで。」
それだけ言って去っていった。
僕はやる事も終わり帰り支度を始めた。
服を着替え、撮影場を後にしようとしたが、スタッフとか関係者が多くいる現場で僕に関心を持っている人などいるはずもないのに誰かの視線を感じる。そう思っていたのは僕だけなのか?エキストラのただ1人なのに何故?
不安が僕を支配した。
その時遠くからこちらを見ている女性の姿が見て取れた。ただこちらをじっと見ているだけで動く事もしない。
関係者じゃないのか?
僕はまさかなと思いながらも近寄っていった。
するとは人混みをかき分けている時にふと消えた。
どれだけ探しても見つからない。
まさか…とは思うけど、霊か?
怖い思いはしなかったが、なんとも言い難い感じだ。何かを訴えようとしていたのか?
僕は周りの目も気にせずただ両手を合わせて祈った。僕に何かできることがあったら言ってください。どうか安らかに。
そう祈って目を開けるとすぐ目の前にさっきの女性が下からこちらの顔を見上げている。
その目は真っ白でなにも見えていないのだろう。僕はびっくりして「わっ!」と思わず叫んでしまった。
シーンとする撮影現場。
みんなに見られていることよりも目の前にいる霊のことの方が気になって再度さっき見た場所を見てみると誰もいなかった。
なんだったのだろう?
それ以降僕は頻繁に霊を見るようになってしまった。今ではもう慣れっこだ。そう思っていたのに怖い目にあうとは思わなかった。
作られたセットの中に置かれた女の子の人形。年代も古く昭和初期のものと思った。
その人形を手渡しする大事なシーン。
僕はその人形が怖くて仕方がなかった。
何故って?
その人形の目が動いた気がしたからだ。
作られたものだから動くわけないってみんな言うに決まってる。でも確かに僕は見たんだ。その人形、他の共演者にもたれても何も変わらない。僕だけだ。何故?
怖い。でも仕事だからやらなきゃって…。
僕は怖さを押し殺して人形を渡すシーンを撮ることになった。撮影は一発で終わることができ、僕は嬉しくて有頂天になった。
だけどこれだけで終わりじゃなかったんだ。別の視点からも撮りたいと監督が言うもんだからスタッフは皆緊張して再度撮りなおすことに。この監督怖いことで有名だから誰も何もいえない。その代わりに出来は素晴らしかった。
撮影後はすぐに人形は片付けられたのでホッとしている自分がいた。
そんな時監督から声がかかった。
「お前、筋がいいから次のも準備しとけ。」
なんのことだかわからなかったので周りの方に聞いて見るとまた使ってくれると言うことらしい。エキストラでも嬉しかった。
給料は微々たるものだが、それでもやりがいを感じていた。
今日みたいに怖い間に合わなければ問題ない。
それなのに今度は出たのはホラー映画のエキストラだった。つくづく運がないのかもと思い始めていたのだが、今度はアップで撮ってもらえた。恐怖のシーン。
その時僕は実際に怖かったので迫真の映像が撮れたと思う。
そんなこんなで怖いものばかりに出演依頼が舞い込んで来た。
出来ればもっと違うのに出たいと切に願う僕だった。




