名前が決まりました!
蝋燭の光だけがゆらゆらと暗闇の中にいる者の影を作る。
そこにいる者がクルクルと回り、作り出した風が光を揺らして現実味を無くしていく
だからこそ、ここにいる者を狂気が包んでいくのだろう
その男の鈍く光る瞳はまるで意識が無いような虚ろで、薄い唇は弧をえがいてた。
「ああ、この世界は美しくない。すべてを呑み込む炎こそが美しいのだ。そう、だから炎を操る僕こそがこの世界で一番の美なのだ。あの方もそう言っていた。だからこそこの世界は全て炎を纏わなければいけない」
その声は誰にも聴かれることなく闇に吸い込まれる。
ふと、コンコン、コンコン。玄関の戸についているドア・ノッカーの音が鳴り響いた。
「ちっ、誰だ。こんな時間にくる常識知らずな奴は‥‥‥ 」
男は悪態をつきながら光が煌めく廊下へと続く扉を開けて、訪ねてきた者を見に行くために出て行った。
その目にはもう狂気の色は無く、ただの気の弱い優しいヒトという印象を抱く男になっていた。
その誰もいなくなった部屋で闇の中からもっと暗い闇が姿を現した。
『それ』は愉しげに嗤い、ヒト型に変化した。そして、狂気の余韻に酔ったようにクルクルと踊るようにステップを踏む。
「はは。ええ、貴方こそが唯一の美です。炎を操っている貴方は私が視られないぐらいに輝いております。私は貴方の望みのままに動いてあげましょう。何人たりとも障害にはなりません。貴方はとても良い闇を持っている。ふふ、楽しみだな~ 」
『それ』の深いフードを被っていても分かる楽しそうな雰囲気は、すべての闇に伝わって館を包む。
その事を知らないのは、『それ』を造ったあの男だけだった。
歯車が狂う。クルクルと廻り、カタカタと外れる。闇はすべてを嘲笑い、光を呑み込む。これから始まるコトはまだ誰も知らない。
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現在俺、葉山 龍太は蜥蜴に追われていた。もちろんただの蜥蜴ではない。元の俺の身長と同じぐらいの体長で、今の蛙の姿ならば簡単に丸呑み出来ることは火を見るより明らかだった。
こうなったのは、今から大体五分前のこと。
まず、暗くなり周りの森や深い闇に包まれかけた空には得体の知れない者達がざわめきはじめて
、怖くなった俺はここで留まるという選択肢を捨てて寝床を探すことにしました。しかし寝床を探すにも先ずは眼下に見えた街に行こうということで、目の前の池は手短にあった木の枝を浸けてみて安全が確保されたため、必死に泳いで息も絶え絶えにわたりきりました。
しかし、わたってからが問題でしたね。なにせ道にはドラゴンっぽいのや、ウネウネしている方々が進んでらっしゃいますから、入るタイミングが掴めないこと‥‥‥
まあ、頑張って入っていったんだけどすぐに弾き出されてというか、弾き飛ばされて大きな蜥蜴様の背中に結構な威力で頭突きをしてしまいまして、しかもタイミング悪くもう眠ろうとしていた時だったため怒りも一入でらっしゃったみたいです。
ご覧のように凄い形相というか、凄い目線で追いかけてきます。
すんごく怖いー もうそろそろ諦めていただきたい。大体ここ何処ですか?
土地勘無いのに、めちゃくちゃに走った、こほん、跳んだために完全に迷子になってしまったみたいだ。もう、街に続いていた道を見つけるなんて不可能だろう。
しばらくすると、やっと蜥蜴様が諦めてくれました。
「はあ、はあ‥‥‥ もう一跳びもできない」
俺は辺りを見渡した。周りを囲んでいるのは静かすぎる森。葉がざわめく音もなく、鳥の声すら聞こえない静寂の世界。どうやら、蜥蜴様が諦めた理由は疲れたからではなくここに入ってしまったからなのだろうか。
早く出よう。よし、それが良い。しかし、出口が分らーん。誰か地図を下さいませ~
っと、忘れかけていた視界の右下についてくる[メニュー]の文字が点滅した。
これは、地図が現れるパターンか?
意気揚々と視線を向けると、お馴染みの薄い半透明のボードが出てきた。
しかし予想に反して、空白の名前の所が不吉な赤色に点滅した。
どうやら名前を早く入れなくてはいけないらしい。
えーと、この状況でじっくり考えるのは難しい。よし、昔の渾名の中から選ぶ事にしよう。
『ハーサン』、『リュウ』、『ヤマサン』、あとは渾名じゃないけどゲームの名前によく使ってた『コトハ』だな~
うん、この世界であまり元の名前の名前に深く関わる名前にはしないほうが良いかもしれないな?
しかし、呼ばれて分からなくても困るしな~ うん、『コトハ』にしよう。
これだったらあまり元の名前にも関係ないし、よく使ってたから違和感もあまりない。
ということで、偽名は『コトハ』にしよう。
入力をし終わると同時に別のタグが現れた。
そこには[神の忠告]と書かれていた。
キリがいいのでこの辺で‥‥‥(o_ _)o