シーン5
夕日の差し込む公園で、僕はテントを広げていた。
高校生になって公園に行くことも少なくなったが、本当に公園なのかと疑問に思うほど何もない場所だった。これなら、公園より、広場って呼んだ方が違和感がない気がする。
そんな何もない場所だからこそ、テントを広げるにも楽だったんだけど、どこか寂しい感じがする。
テントも広げ終わると、やることがなくなった。
ふと、思い立ってベンチに座ると、ちょうど夕日を真正面から見ることができた。
綺麗な夕日だった。
こんな夕日を、彼女も見ているのだろうか。
そういえば、彼女と初めてデートしたときも、最後に公園に寄ったな。
デートを申し込むときは、本当に誘っていいのか、そもそも僕らは付き合っているわけじゃなくて、告白してOKもらったのは僕の幻覚だったんじゃないかってところまで考えてしまったけれど、彼女の笑顔を見てほっとしたんだ。
普段あまり見ない映画なんか見て、その感想を近くのファミレスで語り合って、現実的なことしか考えられない僕は、彼女に怒られたっけ。
そして最後に公園で……。
「キス、か」
懐かしいな。
会いたいよ。
寂寥感に胸が痛くなる。
どうしようもならないこの気持ちが、それでも大切に思えて、僕は笑った。
今日は、彼女の夢が見れそうだ。
明日も早い。そろそろ寝よう。
その前に、腹ごしらえとして、公園の真ん中辺りにある塩をつまんだ。
「表現しづらいな」
今日の塩は複雑な味だった。甘いような苦いような。ちょっと迷いがありながらもそれでも一本の芯があるような味。
「それでも美味しい」
一口で満足感を得ると、僕はテントの中に入って横になる。
イヤホンをつけて、テープを再生した。
「待ってるね……」
彼女の声を聴きながら、僕は眠りに落ちた。