際限
私の『血から』は人を癒す。
穢れたものを洗い流す、そんなちから。
けれどもね、それは本来沢山の時間が必要な事。
一つの傷をつけるのは一瞬。
治るのは一週間。
手をかざすだけで、痛みが消える。
苦痛から解放する、そんなちから。
けれどもね、それは本来沢山の時間が必要な事。
一本の骨を折るのは一瞬。
治るのは一か月。
溢れる血を止めて、皮膚を治す。
何もなかった事のようにする、そんなちから。
けれどもね、それは本来沢山の時間が必要な事。
内臓を抉るのは一瞬。
治るのは一年。
召いた瞳に、光を宿す。
全てを見えるようにする、そんなちから。
けれどもね、それは本来沢山の時間をかけても治らない。
視界を奪うのは一瞬。
本来は治らない。
動脈を掻き切るのは一瞬。
本来は治らない。
皮膚を焼くのは一瞬。
本来は治らない。
心臓を止めるのは一瞬。
本来は治らない。
精神を破壊するのは一瞬。
本来は治らない。
でも人は際限なく求める。
それを奇跡と言って治らない物までを人間は要求するようになる。
だけど心優しき『白き巫女』は自分の命を削り、私のちからを受け入れ、くたびれ果てる。
命も心も削って、それでも恨まれて、穢されて。
尚も体まで滝に捨て、何も求めずその命を愛しき者へと捧げた。
貴女にとって命より大切な者だから、貴女の命を賭した所で、
贖えないと言っても聞く事は無く、奇跡よ起これと塵と帰す。
白き巫女は恨む事、妬む事をしない。
私利私欲がなく、自分より他人を愛せる者。
だからこそ彼女達は『神』に選ばれた。
起こった奇跡が更に次の巫女や子孫を追い詰めていくとは思いもせずに。
ああ、雪姫よ。
貴女はとても運がいい。
皆、その事を話すと理解してくれる。
貴女に無理は求めない。
きっと貴女に癒されし者は、その身を大切にし、長くを有意義に生きてくれるでしょう。
悪魔で、天使ですから。inうろな町(朝陽 真夜様)
8月28日Part 09 水炎対話
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その『意や死 (いやし)』について。